大企業の新規事業に取り組む従業員のモチベーションについての論文
原題:Employees’ decision to participate in corporate venturing: A conjoint experiment of financial and non-financial motivations
より、大企業が取り組む新規事業に参加する従業員のモチベーションについて解説していきたいと思います。
あらまし
今までの研究では、金銭的インセンティブによる参加動機については関係するという結果が出ていますが、それのみではないのではないかというのが、今回の研究の発端となっています。
今までの研究で、金銭的要因と非金銭的要因を同時に考慮し、新規事業への従業員の参加は金銭的報酬、雇用の安全、新規事業の成功の可能性によって影響を受けることがわかっています。
今回の研究では、起業家的な自己肯定感も合わせて研究します。
結果
統計分析をした結果、新規事業において利益の分配と参加することに関しては正比例の関係にあり、「従業員の利益分配インセンティブが大きいほど、従業員が新規事業に参加する可能性が高くなります。」という仮説を支持しています。
また、「利益分配と従業員が新規事業に参加する可能性との肯定的な関係は、賃金リスクが低い(低賃金)場合よりも賃金リスクが高い(高賃金)場合の方が弱いです。」=>年収が高い場合、利益配分は新規事業への参加動機になりにくい。
「仕事のリスクが高い場合の方が、仕事のリスクが低い場合よりも、利益分配と従業員が新規事業に参加する可能性との正の関係は弱くなります。」=>新規事業の成功失敗によってクビになるかどうかにつながる場合は参加しにくい。
「利益の分配と従業員が新規事業に参加する可能性との正の関係は、成功の期待が低い場合よりも成功の期待が高い場合の方が強くなります。」
上記の仮説は確からしいことがわかりました。
他にも、「利益共有と従業員が新しい企業ベンチャーに参加する可能性との間の肯定的な関係は、余分な労力が少ない場合よりも余分な労力が高い場合の方が弱くなります。」=>利益共有と新規事業への参加は労力が少ない方が参加しやすい。
「利益の分配と従業員が新規事業に参加する可能性との正の関係は、予想される独立性が低い場合よりも予想される独立性が高い場合のほうが強くなります。」=>利益分配と新規事業への参加は個人の裁量が大きい方が関係が強くなる。
「起業家的な自己肯定感が低い場合よりも高い場合の方が、利益分配と従業員が新規事業に参加する可能性との関係に対する雇用リスクの影響は弱くなります。」 =>起業家的な自己肯定感によって、利益分配が前提であれば、クビになるリスクがあっても、新規事業に参加しやすい。
「利益分配と従業員が新規事業に参加する可能性との関係に対する期待される成功の影響は、起業家的な自己肯定感が低い場合よりも高い場合のほうが弱いです。」=>起業家的な自己肯定感が低くとも、成功が期待されるのであれば、利益の分配と新規事業の傘下の関係性は高くなる。
という仮説も確からしいようです。
私感
思ったよりも当然な結果に着地した感がある。
利益分配はマストで雇用リスクがあっても参加するような人は起業家の資質があるがわかるので、社内人材のふるい分けなどで使えるかもしれませんね。
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