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僕とハローマック

「ハローマック」は僕らおじさんにとって特別な場所だ。
もう出会えない、でもそこにあった面影を色濃く残す建物がある不思議な場所であり、90年代に子どもだった僕たちを、恐竜や怪談、ノストラダムスと共にノスタルジックな気持ちにさせてくれる。

僕も何かと話題に出すものの、実は僕にとって「ハローマック」は「我慢」の象徴だった。

というのも両親は年に4回ほどしかおもちゃを買ってくれなかった。誕生日、クリスマス、そしてよっぽど機嫌のいい特別な日が1、2日。
なので誕生日はうんうん唸りながら何が欲しいかをチラシから決めていたのを思い出す。
クリスマスはリクエスト通りに買ってくれないことがあるから、作戦を練りに練って確実に買ってくれそうなものや覚えやすいものをサンタさんにお願いしていた。

父がやけに機嫌のいい日は、とにかく「おもちゃのバンバン」ではなく「ハローマック」に寄ってもらえるよう必死だった。
「おもちゃのバンバン」は「ハローマック」と車で3分ほどの距離にあったせいか「ハローマック」と差別化を図っていたのかもしれない。水鉄砲や浮き輪、カイトに野球道具といったスポーツ系をやけに取り揃えていた。
父はアウトドア派なので「おもちゃのバンバン」に行きたがる。それを如何に「ハローマック」に誘導するか必死に作戦だてていた。作戦とはいっても同じ通りにあるゴルフショップか釣具屋に寄らせるだけだが。

そんなあまりおもちゃに恵まれないなか、僕の頼みの綱は隣の家に住んでいる祖父母だった。
だがバカスカ買ってくれるわけじゃない、とにかく良い子を演じてガチャポンより元祖SD、元祖SDよりバーコードバトラーとよりデカい「一発」を狙うためにとにかく耐え忍んだ。

耐え忍んでいる僕に数日おきに試練が起きる。

祖父との犬の散歩だ。
犬の散歩は祖父と行くときは「裏山」と呼んでいる山の頂上まで登り戻るコースを休み休み歩いていた。
おじいちゃん子だったので散歩自体はとても楽しみにしていたのだが、問題はその裏山の入り口が困ったことに「ハローマック」の前の通りなのだ。

入り口に並ぶガチャポンの誘惑、祖父とふたりっきり(犬もいるが)のおねだりチャンスタイム。
でもここで安易に買って買ってコールをしても”小物”しか手に入らない。
生殺しにもほどがあった。

それが僕と「ハローマック」の関係性。
小4で引っ越してからはおもちゃを買うのはヨーカドーばかりでまるで縁がなかったし、気付いたら地元のその「ハローマック」は閉店していた。

ちなみにちゃんと我慢できたかというとそうでもなく、おもちゃ箱の中は元祖SDやBB戦士ばかりだった。
そのおもちゃ箱がまるごと捨てられて呆然とした話はまたどこかでしたいと思う。

そんな「ハローマック」が明日、ついに復活する。

よく読んでみると靴屋と化しているチヨダが子ども靴を売るために利用しているだけだが、公式の限定グッズがもらえることには変わりがない。
「雨が降ろうが槍が降ろうが始発で確実にゲットしてやる」と意気込んでいたものの、本当に大雨が来るとは思ってなくて、いま少し尻込みしている。
槍が降らないのを祈るばかりだ。

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