【HPAC 2006⇒2020 ④】
14年前のことも、5か月前のことも、
「いま」に立って、振り返る…
当然、記憶の濃い、薄いがあり、
しかしそれは、時間が経ったから薄まっているかというと、
そうでもなくて。
もうひとつ、14年の中では、
音楽の聴きかたも変わってきているはず。
そんなことをひっくるめて、
私の、私による、私のための記録。
だれかの役に立つことは、ほとんどないでしょう。
それでも、この記事をそっと、世の片隅に置いておきたいのです。
ゆたかな時間の記憶として。
◎第69回定期演奏会
グリンカ : 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
ラフマニノフ : ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 op. 18
チャイコフスキー : 交響曲 第6番 ロ短調 op. 74 「悲愴」
2014年4月13日(日)
兵庫に帰ってきた!
淡路・播磨・丹波・但馬・摂津の五国からなる「兵庫県」
私に、摂津でも、そのなかの小単位である阪神とかでもなく、
「兵庫」というアイデンティティを植えつけたのは、
まちがいなく、佐渡裕×兵庫芸術文化センター管弦楽団の存在である。
もしそれがなかったら…、そんな人生は想像がつかないと言っていい。
2020年の今はむしろ、
県が「五国」にフォーカスしているフシもあるのだが、
とりあえず五国平和に暮らしたいものだ。
前置きだけがいたずらに長くなったが、
2014年、5年ぶりに聴く、定期演奏会。
上京前に「第23回」だったのが、
このとき「第69回」へと、着実に歩を進めてくれていた。
そしてなにより、曲目。
上京前最後に聴いたのも「悲愴」
帰ってきて最初に聴いたのも「悲愴」
そんなに、悲愴な人生だったかどうかは、
なんともいえないが、
故郷に戻ってくる意味がちゃんとあったのだ、
と教えてくれるようなめぐりあわせ。
春の穏やかな、それでいて、凛とした空気が、
印象に残っている。
◎第72回定期演奏会
シューベルト : 交響曲 第8番 ロ短調D.759 「未完成」
ブルックナー : 交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンティック」
2014年9月14日(日)
シューベルトの「未完成」
苦味、酸味、甘味。
じっくりと、積み重ねていく演奏。
たった3分で元気モリモリ、になる音楽でもないが、
悩める新入社員にとって、
どれほど支えになったことか。
ブルックナーの「ロマンティック」
東京時代に何度も聴いた曲だが、
聴いている途中で、
オーケストラの向こう側に
六甲の山並みが思い浮かんだのは初めてだった。
この頃から、
週末、午後3時開演の演奏会が終わったあと、
駅に向かいながら見る山並みがとても好きになった。
演奏会の終わる午後5時とか6時という時間帯は、
初夏には、まだまだ日が高く、
秋には夕暮れ、
冬はとっぷりと日が暮れて。
いま思い出すだけで、
その温度や湿度までも、
そっと頬をなでるような。
そして、
演奏会の余韻に浸りながら、
少しずつ日常に戻っていく。
丁寧な暮らしをしたい、
とあらためて思わせてくれるような、
その手ざわり。
この街に戻ってきてよかった、
という実感。
ふるさとで過ごす、ゆたかな時間。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?