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アンダーマイン・チルドレン


 皆さん、こんにちは。地下アイドルに興味はないけど、地下アイドルって言葉の響きが好き。木賃ふくよし(芸名)です。

 昨日と一昨日、妙な夢を見た。


 どうにもSFじみた世界に生きている模様。
 今現在の世界と地続きなのか、全く違う世界なのか。どちらかと言うと、今のこの世界が、近未来、何らかの理由で崩壊した後のようだ。
 人の住んでいる街は現代とそう変わらず、ただし、街を出ると、海と岩だらけの世界が広がっている。主要都市を繋ぐ道以外は岩だらけで、荒野と言うよりは、死の世界だ。
 地表を覆うのは海と岩ばかりで、他の土地は知らないが、少なくとも自分の住むエリアは岩しかない。土や砂や植物はなく、それが拝めるのは都市の中だけである。
 「僕」はまだ少年で、ワタクシはその少年の視点で世界を眺めている状態だ。
 少年は、その街に住んでいる。ただし、地下だ。
 地下と言っても、地階に住んでいると言う意味ではない。
 地下階層民なのである。
 地下階層と言っても、単に地下に住んでいると言う意味ではないのだ。
 どうやら、地上の都市は地下の資源、あるいは動力を糧に生きている。
 SFにありがちな設定だが、地上はその地下の恩恵に預かり、のうのうと暮らしているのだが、地下の住民は安い労働力として、危険な採掘に従事している模様。
 そして僕らは、そのどちらでもない。
 と言うのも、地上も地下もバースコントロールがされており、限られた貴重な食料が底をつかぬよう、出産は完全に認可制なのである。
 限られた食料と言いながらも飽食の地上。その廃棄物(と言っても賞味期限切れが回ってくるだけで、消費期限切れではない)にありつく地下階層労働者。僕らは、そのどちらでもない。
 バースコントロールされていると言っても、やはり管理しきれない、望まれぬ子が生まれぬ訳ではないのだ。やはりそれは地下が大半だが、地上にも存在する。
 そして、否認可の子供達は、いずれにせよ地下に逃げるか、捨てられるしかない。
 僕らはそうしてどちらにも疎まれる、望まれぬ地下階層民として、地下に住み、地上の物をかっぱらって生きている。
 政府に見つかれば、捕まって、最も危険な採掘場所に送られると聞く。真相はわからない。誰も生きて帰って来ていないのだから。単に殺処分にされるのか、それとも、死ぬまで奴隷労働させられるのか。あるいは、別の何かなのか。
 僕たちは、遺棄された採掘坑を住処にして、人目に触れぬよう、息を潜め、採掘民に紛れて物資をくすねたり、タイミングを見計らっては地上に出て、地上民から食い物を盗む。
 ある日、地上民の落とした財布を拾った僕らは、見た事もない大金を手に入れる。足が付かないように、財布自身と現金以外は処分した。
 財布を拾った僕たち同世代の数人は、これでしばらく安全に暮らせる方法を考えついたのだ。
 まずは人数分、地下住民の中で最もマシな部類の服を盗み出し、それを地上への足掛かりにした。
 地上民や地下民と言えども、人種や見た目が違う訳ではない。身なりさえ整えてしまえば、誰にも区別なんて付かないのだ。
 そうして僕らは地上に上がり、地上で、より小綺麗な服や靴を盗み出した。
 なるべくさっぱりと散髪し、地下にある貯水槽で全身の匂いがなくなるまで身体を洗いまくった。服のサイズが合わなかったり、コーディネートがちぐはぐだったりするが、とにかく身なりさえ整えてしまえば、今ある現金が尽きても、地上での仕事が楽になる。
 僕たちは地上に繰り出した。
 初日ぐらいは遊ぼう。僕たちはそう言って、地上の人間に紛れる。
 ファストフード店で食う出来立てのハンバーガーは恐ろしく美味かった。遊ぼうと言いながらも、次からの仕事のことを考えて、シャンプーやボディソープ、若者が着てる服を購入した。ファッション誌、すきバサミなんかも手に入れたし、おもちゃを買ってくる馬鹿もいた。
 僕は僕自身の為に、雑貨店で帽子を購入した。
 一目惚れした可愛らしい帽子。淡いピンクでふわふわの、安物で、たぶん女の子用。何となく、それが女の子用だってわかっていたけど、可愛くて、どうしようもない衝動があって、とても恥ずかしく、下手したら地上に抜け出る時よりもドキドキしながら、それを買った。
 僕たちはねぐらに戻り、自分たちの戦果を自慢しあう。
 まぬけの地上民から、新たに財布を盗み出した奴もいた。
 買ってきたおもちゃに夢中の奴もいた。僕はたぶん皆に笑われる事がわかっていたから、帽子は鞄にしまったまま。
 僕たちはそうして眠りにつき、


 (´°Д°)」ハッ


 ワタクシは目を覚ました。



 うむ。まあ、ワタクシは夢が夢だと気付くタイプなので、夢と知りながらも、完全にSF映画を見ている感じで、割とハラハラしつつ少年たちの冒険を楽しんでいた。
 夢なので、全く整合性が取れない事や話がブツ切りだったりする事も多々あるが、今回の夢は割とシームレスだった。
 いや、流石に夢なので、記憶が消えていたり、どうしても話に食い違いがあったりする部分はあったので、文章に起こす際、ある程度の修正・補完はしているが。
 で。まあ、それなりに面白い夢ではあったが、正直言ってこの時は、特に気にも留めていなかったのである。


 そして、翌日、目を覚ました僕は驚いた。いや、僕の中のワタクシが驚いた。
 まんま、見事に、昨日の夢の続きだったのである。

 夢の中のワタクシは驚いたが、そんな事は僕には関係ない。
 確保した美味い食料を食い尽くした僕らは、「仕事着」に着替えて、再び地上に出た。前回買った仕事用の下げ鞄の中に、あの「帽子」も入ってる。そう思っただけで、少し心がウキウキした。
 今回はなるべく、地上の生活に馴染む事が急務だ。
 自然に話し、自然に食い、自然に買い物する。それがスムースな程、地上での仕事は楽になる。ハッキリ言って地上の連中は平和ボケしてるから、仕事はやりやすい。店での盗みは危険だ。店はそれなりに警戒している。だから、個人を狙う。
 奪ったりするんじゃなく、盗まれた事に気付かせない事が肝要だ。盗まれたか、落としたか、気付いてさえいなければ発覚はしない。それ程にリスクが減る。
 今までは、見つからないように息を潜めて地上に上がった。コソコソと隠れて盗みをした。だけど、もう違う。地上に馴染んで、警戒させず、気付かれずに盗まなければならないのだ。
 例えば食料品にしても、店で直接盗んじゃダメだ。買った奴から盗む。買い物袋を全部奪ったりせず、目を離した隙に1つ2つかっぱらっていく。
 だが、せっかく地上まで来た以上、ケチな商売よりは、なるべく財布を狙いたい。リスクは大きくなるが、リターンは相当だ。リターンが大きいほどにリスクも軽減できるのだ。
 僕たちは街を歩いて、適当に散開した。それぞれが仕事をして、夜には合流しつつ地下に戻る。
 僕は1人で街を歩いていると、見覚えのある雑貨屋を見つけた。
 先日の、あの帽子を売っていた店だ。
 僕は引き寄せられるみたいに、店に入った。
 あの帽子はまだいくつか売ってる。他にも可愛らしい商品がたくさん並んでる。あれもこれも可愛らしくて目移りしてしまう。
 大金を手にすれば、片っ端から買ってもいいのだろうか。仲間には笑われるだろうか。前回は気付けなかったが、実際、店の中にいる客層はほとんどが女だ。どうやら、僕は場違いらしい。それに、今は何の役にも立たない「可愛さ」に金をかけている余裕はない。
 未練を断ち切るように、店を出る。
 その時だった。
 「ちょっといいかい?」
 制服を着た大男に、僕は呼び止められていた。
 この瞬間に出来る事は二択。素直に応じるか。それとも逃げ出すか。
 事は荒立てたくない。何かを盗んだ訳でもない。僕は素直に、制服の男の指示に従った。
 だがその直後、僕はそれを後悔した。
 そう。「帽子」だ。
 僕はこの鞄の中に、まだあの「帽子」を入れっぱなしにしている。
 動揺して頭が回らないが、今さら態度を変えて逃げるのは失策だろう。とにかく無事にやり過ごす方法を考えなければ。
 男の指示に従って、鞄の中を見せる。今日はまだ盗品が入っていないし、露骨な仕事用の道具もない。その点は問題なかった。だが、あの「帽子」は誤魔化しようがない。
 僕が持つには不似合いな可愛らしい帽子を見とめた男は、商品棚にある帽子と交互に視線を動かす。まずい。盗んだと思われている。
 僕は確実に冷静さを欠いていった。盗んではいない。買った商品なのだ。もっと堂々とすればいい。だが、地下階層民であるという負い目が、もはや思考が働かなくなるまでに僕自身を追い詰めていった。
 その中で幸いだったのは、この制服の男がどうやら警官ではなく、単なるガードマンだという事。これは幸運だった。
 混乱して身体が硬直しているうちに、雑貨屋のオーナーと思われる婆さんが、僕の前にいた。宗教的な「シスタア」みたいな黒と白の服を着た婆さんは、完全に蔑んだ目で僕を見下ろしている。
 「盗人のガキが。人の目を騙せると思ったのか」
 婆さんはそう言った。地下階層民なのがバレたのか。それとも、偏見でそう言っただけか。
 僕は混乱する頭の中で、たったひとつの打開策を思い付いた。
 レシートだ。この帽子を買った時に受け取ったレシートがあるはずなのだ。
 他の服を持っていなかったのが幸いした。服はあの時と一緒だ。何処かのポケットに入っているはず。僕は慌ててポケットを探る。ガードマンがポケットから武器を出すことを警戒したのか、その腰の銃に手を掛けた。
 「違う! この間、この店で買ったんだ! レシートならある!」
 ガードマンに目で武器じゃないと合図しながら反論する僕に、婆さんは懐から「きせる」を取り出し、その先端で、僕の額を殴った。一瞬だが、想像よりも遥かに鋭い激痛が走った気がした。
 婆さんが持っているのは、採掘民がよく喫煙している「きせる」のような道具は、「きせる」ではない様子だった。見た事もない機械。
 何だ? サインを送り続けてくる痛覚に続き、顔の触覚が、妙な感触を伝えた。
 僕はポケットをまさぐっていた両手のうち、左手を抜き、鼻筋を伝う感触を確かめた。
 ぬるり、とした指先。指先を目で確認する。指の先が濃厚に赤い。血だ。
 瞳が婆さんの「きせる」に焦点を合わせる。その先端には、僕の額の肉がこびりついていた。
 「あんたが白か黒かはすぐにわかるよ」
 婆さんはそう言って、キャッシャーにいた娘に「きせる」を渡す。
 まずい。アレだ。血液だか遺伝子だかで登録されている情報に照会する気だ。そうなったら、もう誤魔化せない。いや、犯罪歴との照合なら前科はないから助かるのか? だが、戸籍との照会ならもう終わりだ。
 僕はポケットの中にあった紙切れを全部引っこ抜いて、すぐにこの店のレシートを見つけ出した。たったひとつだけ、明らかに装飾されたロゴがプリントされたレシート。僕はそれを婆さんの眼前に突き付けた。
 「買ったんだ! 証拠はある!」
 婆さんが、そのレシートと商品名を確認し、忌々しそうに、
 「買ったんなら文句はないよ」
 と背を向けた。
 謝れよ! 畜生!という言葉が喉まで出かかったけれど、僕はそれを飲み込んだ。揉め事を起こして何ひとつ得はない。リスクは避けなければ。
 ガードマンの大男が、バツの悪そうな表情でハンカチと絆創膏を差し出した。
 僕は額に受け取ったハンカチを当て、深呼吸する。
 何とか無事に終わった。
 助かったのだ。
 そう思った時、僕と同じ安堵の表情を浮かべていたレジの娘が、ふと機械の方を見て、顔色を変える。
 まずい! 間に合わなかった! 額の皮膚の情報は、もう照会されてしまっていたのだ。
 「あの、これ、その、、、」
 レジの女が、消え入りそうな声で、何かを訴えようとする。
 いや、だが、何だ? 情報が照会されたのはともかく、僕が地上民でも採掘民でもないとバレたってそんな驚愕の表情を浮かべる必要があるのか?
 この場所から、照会情報は見えるはずもない。
 「そんな、、、これって、、、」
 口をパクパクさせ、この世の終わりみたいな顔をする女。背を向け、去ろうとしていた婆さんが足を止める。
 ガードマンが、レジの女の様子に気付いた。
 いったい、何が表示されたんだーーー!?



 って所で目が覚めたんですけどね。(´・Д・)」ええ。
 色々チープではあるけど、夢の中の「僕」視点で体験してると、かなりスリリングだったわ。

 二度寝したけど、関連性ゼロの夢しか見なかった。いつか続きが見られるんだろうか。

 え? (´・Д・)」 ワタクシだけ「引き」で終わるのって、何か悔しいじゃないですか。だから皆さんにも、このもにょもにょ感をお裾分けしようと。ええ。




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 ¥1,000ぐらい来たら、夢で続きを見なくても、脳味噌を絞って続編を考えるわ。
 なお、この先には特に何も書かれていません。


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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。