さらば、西角さん
皆さん、こんにちは。そして、さようなら。木賃ふくよし(芸名)です。
さよなら、さらば、あばよ。別れにも色んな言葉がある。
今時、サヨナラなんて言葉を、口語で使う人も珍しいぐらいだ。
もはや、さようなら、なんて酔い痴れた恋の終わりにぐらいにしか使わないのではないか。
ふざけて、さらば、あばよ、なんて言う事はあっても、本気で別れの言葉を口にする事は、そうそうあるまい。
じゃあね。またいつか。
昨今の我々日本人の別れ言葉は、再会に向けられている気がする。
我々現代人はもう、次に会えない事を頭の片隅に置いた別れの方法を、もはや忘れてしまっているのではないか。
ほんの50年前までは、まだまだ「死」は日常の一部だった。
今、ちゃんと別れを告げておかねば、もう2度と会う事はないかも知れない。
事件、事故、病魔など、永遠の別れになる出来事が、我々の日常の一部だったのだ。
無論、それらがなくなった訳ではない。
なくなった訳ではないが、「日常に潜む不安」から、「非日常」に切り替わった気がする。
病気で死ぬにしても、明日に死ぬなんて例は極端に減った。幾らかの猶予は残されている気がする。
大怪我で死ぬにしても、どうにか死に目には会えるのではないか。
かつてなら「手の施しようがなかった」状態にも、今ならとりあえず、延命措置はできる。
いや、過信している訳ではない。
単にいつの頃からか、「死」が日常から「非日常」に変わっているような気がする。それだけの事だ。
だから、別れの言葉から、重たさが消えたのではないだろうか。
じゃあ。またね。近いうちに。
そんな言葉が「当たり前」になってしまったのだと思う。そして、それはたぶん良い事なのだ。
さて。少し書き出しが重くなってしまったが、そろそろ本題に入ろう。
ワタクシはスマートフォンを契約している。
正直言って、スマホ代が高くて契約したくないのだが、何かする上において、スマホを持っていないと言うのは、現代社会では信用に値しないらしい。
かつて自営業をやってた頃は、店にWi-Fiさえあれば特に困らなかったが、今はそうもいかない。
ほんの20年前までは、履歴書に携帯電話の番号を書いたら、
(´・Д・)」 フツーは固定電話の番号書くよな。
とか言われてたのに、今じゃ固定電話の番号を書いたら、
(´°Д°)」 スマホ持ってないの、、、?
ってな顔をされる時代になってしまったのだ。
単なる運転免許証が、この日本においては絶大な信用をもたらす身分証明書となるように、今現在の日本では、
スマホは最低限の身元証明
という不思議な事態になってしまった。まぁ、それに対して猛烈な異を唱えるとか、そーゆー事はなく、単に、特に必要だと思ってないワタクシにとっては、
(´・A・)」 スマホ代、高いな。
と言いたいだけである。
さて。この話が冒頭の話と、どう繋がるのかと言うとココからだ。
ワタクシは現在、TwitterのDMがメインの通信手段となっており、都合上、LINEなどの通信アプリを使用する事もあるが、基本的には、いわゆる電子メールを使用しない。
電子メールを使用するのは、「自分から自分へ」のデータの遣り取り、登録にEメールアドレスが必要、Eメールしか通信手段がない相手などに限られている。
なので、スマホに電子メールが届くと、少々気を揉む。
ご存知の方もいるとは思うが、ワタクシの母親が交通事故に遭い、意識不明のまま、もう半年である。
なので、滅多に来ない電話や電子メールに受信歴があると、何かあったのでは、と思ってしまうのだ。
実際に確認すると、そのほとんどは、スマホのキャリア会社からの宣伝と報告である。
ε-(´∀`; ) ホッ
ちなみに、もう1箇所から、メールが来る。スマホのキャリア会社ではなく、契約をしたスマホショップからのDMなのである。
仮に「DUバンク」としておこう。ワタクシが契約した、このDUバンクの営業さんが、結構な頻度でキャンペーンだの新機種への乗り換えしませんかだのとメッセージを送ってくる。
ぶっちゃけスマホ自体に興味がないので、ロクに読んだ事はないのだが、結構熱心に送って来ていて、内容はいかにも宣伝DMって感じだ。
送信者はいつも「西角さん」である。
【こんにちは。京都DUバンク ショップ〇〇西角です。今日はお得な情報のお知らせです。】
いつもこんな感じのヘッダが見えるが、その先は読んでいない。
送信者の読み方はニシズミさんだろうか。ニシカドさんかも知れないし、ニシヅノさんと言う可能性もある。重箱読みになるからニシカクさんの可能性は低いが、セイガクさんと言う可能性もあるだろうか。
ワタクシがスマホを契約したのは、自分の店を廃業した2年前。その時からずっと、この西角さんからメールが来ている。
2年前、ワタクシが契約した時、スマホショップにいたのは男性社員2名。たぶん、どちらからも名刺を貰った気はするが、どちらが西角さんかは覚えていない。部屋中をひっくり返して探せば名刺は見つかるかも知れないが、どっちがどっちだかはわからないだろう。
いや、あの場にいなかった別の社員がDMの担当なのかも知れない。
まあ、どうせメーリングリストを作って、文章を作成して一斉送信してるだけなのだろうが、営業さんとしては「名前を売る」という行為には成功している気がする。
ただ、気になったのは、西角さんからのメールが、2年間、ずっと来ているという事だ。
いや、何が気になるかと言うと、営業職で2年は、割と離職しててもおかしくない期間だと言う事である。
そりゃ、大手スマホキャリア会社のDUバンク社員なら離職率は低いかも知れない。
しかし、スマホショップの営業さんは割と派遣社員で補われていると聞いた事があるからだ。
この西角さんが、正社員さんなのか契約社員さんなのかは知らない。
2年ずっと同じ場所で、役職(ナシ?)も動いていないっぽいし、なんだかちょっと気になるのである。
新人の社員だとしたら、営業所ではなく、そろそろ社の事務職に行かせてもらえる頃合ではないのか? そうでないとしたら、営業所の所長とかになってる時期だろうが、メールの名前に肩書きがつく様子はない。
正社員なのに、営業所のまま島流し状態だったりするのか?
いや、営業所なら契約社員の可能性が高いと聞いた。だとしたら、2年は続いてる方だろう。しかし、昇進する気配は感じられない。いや、昇進の前に、まずは正社員になるとか? いや、DUバンクに契約社員から正社員は難しい気がする。
だとすると、このまま契約社員で終わるのだろうか?
おそらく、たった一度しか会った事のない西角さんに、妙な親近感を覚える。
下手したら、一度も会っていないのに、味気ないDMを一方的に送ってくるだけなのに、メールの内容もロクに読んでないのに、何だか奇妙な親しみを感じるよ。
そんなある日、ワタクシと西角さんの別れは突然訪れたのだ。
それを知ったのは、西角さんからのメールではない。
とある店の位置情報をネットで調べていた時の事だ。
大体の位置はわかっていたが、どの建物なのかわからず、Googleマップで調べたのである。
ちなみに、ワタクシが契約したDUバンクショップの営業所に近い。
(´・Д・)」 そう言えば、ここが西角さんの勤務地である営業所だな。ワタクシが契約したのは2年前か。
そう思って、ふと地図を見る。
ビルの位置が、通りの、
西の角にある。
(´°Д°)」 !?
ちなみに京都は、碁盤の目のようになった東西と南北の通りの名前で位置を示す風習があり、更には東西を東入ル・西入ルとか、南北を下ル・上ルと記される。
京都DUバンク ショップ〇〇西角です。←
〇〇が通りの名前である。
(´°Д°)」 まさか、、、!?
西角さんは、、、
最初から、、、
非実在かった、、、?
なお、別の方法で確認したが、やはり西角は店の位置情報だった。
会った事もなかったけど、もう、あなたには会う事がないのだね。
さようなら、西角さん。
見も知らぬキミとの別れに、何か大きな喪失感を覚えるよ。
(´;ω;`) 西角さん、、、
。゚(゚´ω`゚)゚。 西角さん、、、
。・゜・(ノД`)・゜・。 西角さぁ〜ん!!
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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。