東京都「書は100人展示で後援」

東京で芸術は育たない

はじめまして、わよう書道会代表 うどよしです。
突然ですが「後援名義」って知っていますか?
東京都や省庁レベルの後援があると、美術業界の活動等で差別されず、結果的に金銭面含めた色々な優遇を受けられます。
私も「和様の書展」で取得を目指しますが大変厳しいです。

100人展示可能な展示施設ってどんなの?

東京都の後援名義を取得しようとすると「書は100人の展示」と言う条件があります。
これが可能な施設って、どれくらいスペースが必要なのかと言う視点から考えてみます。
通常、書道は1点1mは壁面スペースが必要です(掛け軸の場合)。

受付など無視して、壁面で100m確保しようとしたら、正方形だと625㎡の施設が必要となります。
パーテーションを中に入れるなど、壁面の面積を増やす方法はありますが、作品(約2m)は同等の距離から見ないと全体が見えにくく、双方の壁面を使うと考えると通路幅は3m必要です。
そうなるとこんな施設が該当します。

これは、受付など必要なスペースを無視した計算なので、おそらく200㎡は必要だと思います。
また、わよう書道会で使う東京芸術劇場ギャラリー2は141㎡なのですが、真ん中にパーテーションを入れたら圧迫感が半端ないため、美術を見るというより展示してるだけになっちゃいそうです。

100人展示可能な展示施設が少ない

設定で書作品の1点の展示に必要な幅を1mとしましたが、実際には、作品幅が3-5mの作品が普通に存在します。
そうなると、東京都内で100人分の書を展示できる施設は、
・東京芸術劇場(ギャラリー1)
・東京都美術館
・国立新美術館
くらいしかありません(あれば教えてほしい…)。
区の施設も大きいところはあるのですが、募集期間が会期の半年前などと短いため、100人の公募書展には準備期間が短すぎるので適さないのです。

東京芸術劇場でシミュレーション 1点9100円

東京都美術館や国立新美術館は、東京都や新聞社系の後援名義がないと1次抽選会に参加できないので継続的に借りることができません。
そのため、現実的に借りられる東京芸術劇場 ギャラリー1で実施した場合のコストを計算してみます。
 ギャラリー1賃料 130,000円/日 7日間(1単位1週間) 910,000円
 (仮)1人1点展示=100点展示
 1点あたりの展示コスト 9,100円/点
展示コストの原価だけで9100円必要になるので、この公募展の「出品料」は1万円を大きく超えます。
もう一つの方法として
 (仮)1人2点展示=200点応募 100点展示 50%落選
にすれば、応募2点で1点の展示なのでコストが半分の4550円になります。
これだと出品料1万円で公募展が開催できます。
ただし、ポスター、ハガキのデザイン、発送はすべて自前で、作品募集のための広告費などは捻出できません。

東京都は「100人展示」が新規参入の障壁に

ここまで100人分の作品が集まる前提でしたが、実際には、相当困難です。
東京都の後援すらない無名の公募展に、1万円超えの出品料を出そうと言う人は書道業界以外にはいません。
(実は、出品料の他に表装代金が+1万円~かかるので合計2万円)
展示会名が違えど、出品者は皆同じという書展が乱立している実態は、美術館として目的を果たせているのでしょうか?
この「100人展示」のルールも「公平性の観点からの仕分け」という理屈で運用されていますが、新規が参入できず、結果的に既存団体保護=公平性のない結果を生んでいないでしょうか?

来場者のことを誰も考えない文化施策

私は、実際に企画運営をして、この後援名義の取得や美術館の貸出などで都や国の文化事業の関係者とのやり取りをしますが、”美術館に来た来場者”の視点は全くありません。
私は、来場者が楽しめる美術館運営の視点も少し盛ってもらえると、新しい切り口が生まれるきっかけとなるのでいいなと思います。

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