『ワイン知らず、マンガ知らず』筋トレ的読書日記
本が読めないとノートに書いた矢先に、アマゾンからエティエンヌ・ダヴォドー著『ワイン知らず、マンガ知らず』が届いた。
読みやすく、届いた日に読んでしまった。
原題は『Les Ignorants: Récit d'une initiation croisée』直訳すると、「無知者たち:交差する仲間入りの物語り」かな?
“バンド・デシネ=フレンチ・グラフィックノベル作家”のエティエンヌ・ダヴォドーが、“ヴィニュロン=ブドウから作るワイン生産者”のリシャール・ルロワに密着取材を申し出る。
そして、エティエンヌがワインを、リシャールが出版の旅をする。
都市生活者が農場をフィールドワーク=参与観察し、マンガでエスノグラフィ=民俗誌を描く、その構成が気になったのだ。
語り口調として、差異を確認し、大げさに描写する態度は戒められている。
人と人、アーティストとアーティストの絡まり合いと認め合いの物語りだ。
有名なバンド・デシネとワインがいくつも紹介されてる。
正直、僕はいくつかのバンド・デシネと作家しかわからず、ワインに関してはまったく知らなかった。
エティエンヌが超有名ワインを不味いといい流しに捨てる。
リシャールが超有名作家をつまらないと他の作家に聞き回る。
その対比は、ちょっと知っている人なら多分、絶対に面白くみえるに違いない。
知らなかった世界も教えてくれる。
リシャールは、ヴィニュロンとしてブドウ剪定から醸造、瓶詰め、販売、宣伝まで気を配る。
特にブドウは、シュタイナーのバイオディナミ農法=バイオダイナミック農法を用いて育てている。
ワインにはうるさく、一緒に入ったレストランでワインメニューを一瞥し、水でいいという。
エティエンヌは、作家として印刷所におもむき、本の印刷の色をチェックする。
バンド・デシネ作家は美大のキャリアを持つ人が多く、専業でない人も多い。
バンド・デシネのフェスティバルには、作家の画家としての作品やサイン入りが売られている。
やっぱり僕は、こういう文化人類学的な作品が好きだな。
価値観の差から戦いが生まれる正義とは何だ系ヒーローものは好きだけれど、やっぱり闘うという合意に落とし込んで決まったという時点で、なにか文化差を丸めてしまった気がする。
差は差のままで語り尽くすという意味で、「ワイン知らず、マンガ知らず」の静かな語りが面白い。
また、どっとはらい
ビアレッティを卸して、初めてカフェオレを淹れながら。
2023/01/09 13:21