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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2022年10月の記事一覧

レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(1) 空海の曼荼羅-「心」と『神話論理』を並べて深層意味論として読む

はじめに。空海の「心」と、「野生の思考」空海著『秘密曼荼羅十住心論』は、その名の通り「心」の十のあり方についての論として読むことができる。 『十住心論』を読む以前、私自身も現代人の素朴な常識に従って、”「心」のあり方は一つで、それは身体の脳神経か何かに還元して説明し尽くせるのではないか?”などというふうに考えていた。 しかし空海によれば、”心”の世界はもっと広大無辺である。 しかも、”心”は一個の身体を超えている。 * 『秘密曼荼羅十住心論』の第十住心「秘密荘厳住心

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(3) 二即一一即二の論理が"構造"化する意味分節の体系

今回はレヴィ=ストロース氏の代名詞ともいえる「構造」が登場します。 1回目↓ 2回目↓ 生のもの、と、火を通したもの 蜜 と 灰これらの「明確に定義できる経験的区別」を、何かと何かの間の「と」を、二即一にして一即二の関係にある二項の関係を”分節する動き”として読んでみようと言うのが、ここでの目論見である。すなわち、合理的な意味のある言葉という、互いにはっきりと切り分けられ輪郭を固定された語たちが一直線に並ぶ体系の中に、この体系自体を発生させ可能にしている”無分節の自己

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レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(2) 経験的区別を概念の道具とする

クロード・レヴィ=ストロース著『神話論理I 生のものと火を通したもの』(原題:Mythologiques - Le Cru et le cuit)は、「序曲」と銘打たれた文章から始まる。 この本については以前にも他の記事で取り上げたことがあるが、今回は細かく精読してみようということで、何年かかるかわからないが最初から順番に読んでみよう。 序曲の冒頭、私が個人的にも非常に気に入っており、ほとんど暗唱できるまでに繰り返し読んでいる一節がある。 気軽に読み飛ばそうと思えば読み

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