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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2021年10月の記事一覧

分別をつけ-きった-と思うことが無いように -意味分節を実践するには(1)

noteで懇意にさせていただいている愚唱@井ノ上裕之さんの記事で、下記の「言葉の本質とは」という話を取り上げていただきました。 言葉の本質は分けつつつなぐこと。しかし、それがどういうことかを深く理解し、実際に思考の方法として使いこなすのは特殊技能の域である、と書いてくださっています。 * そこで今回は、この「分けつつつなぐ」を自在にする特殊な技能について、少しだけご紹介します。 特殊な言語と、特殊でない言語言葉には特殊ではない使い方と、特殊な使い方を分けることができま

意味分節理論とは(3) 「始まり」への問いに答える思考と意味分節理論  -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

「人間」はどこから来て、どこへ行くのか。 「私」はどこから来て、どこへ行くのか。 「宇宙」はどこから来て、どこへ行くのか。 このような、俗に「深い」と言われるような問いは、しばしば起源をたずねようとするものである。起源、すなわち、始まりである。 こうした疑問に答えようとすれば、現代の私たちなら科学的な知見と手法を総動員することになる。人間が人間ではない猿の仲間から区別できるようになるまでの経緯を太古の化石や遺伝情報から推定したり、「私」の始まりを卵細胞の分化に求めたり