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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2020年3月の記事一覧

「分かる」は「分ける」こと  −レヴィ・ストロース『悲しき熱帯』から思うこと

宙ぶらりん?もったいない?私は、いわゆる理工系の大学に入学しながら、途中から人文社会科学の本ばかり読むという、いわゆる「文転」と呼ばれるパターンである。 それでいて最後まで(博士号取得まで)理工系の大学にぶら下がり続けるという点では、華麗に文学部や哲学科などに転じた方々に比べれば、私はなんとも宙ぶらりんである。 ここで宙ぶらりんというのは言うまでもなく私自身のわたし自身に対する評価であって、他に同じような経歴を辿った方々を貶める意図はない。 私は「宙ぶらりん」を非常に良

区別することがすべての始まり A.J.グレマス『構造意味論』p.30を読む 

意味とは、区別をすることで何かと何かの対立関係を作り出し、そうしてできた複数の対立関係を重ね合わせて、第一の対立関係の片方の項と第二の対立関係の片方の項を「置き換え可能なものとして」置くということである。 意味ということを仮にこのように規定するとして、実際の言葉の大胆かつ精密な意味作用の動きを記述したりできるのだろうか? この疑問に答えてくれそうなのが、Algirdas Julien Greimas(アルジルダス・ジュリアン・グレマス)の『構造意味論』である。 今回は、