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会社を守る「ホワイト企業」、社員を守る「ブラック企業」。

僕はもうすぐ30歳になるのですが、社会人としては8年目になり、学生時代には仲の良かった友人たちであっても最近どうしているかはあまりよく知らないということも多いです。そんななかで先日、たまたま中学時代の同級生4人で会う機会がありました。おそらく成人式で会って以来です。

ホワイトな大企業で働く京大卒業生

集まった同級生たちの中の一人は「京都大学」を卒業していて、中小企業で働く僕からすればテレビの中の世界でしかないレベルの超大企業で働いていました。彼の勤める会社は一般的に優良企業と言われているところだったのですが、本当にホワイトでビックリしました。

僕なんかは毎日忙しく仕事しながら「22時くらいに帰れたら嬉しい」っていうくらいの環境ですから、2時間くらいの残業なら「残業が無かった」って言ってもいいくらいの意識の低さなんですが、京大出身の彼の勤める会社は「定時になったらみんな帰る」んだそうです。そんな世界があるんだなぁという感じで色々聞いていくと、ある後輩社員の話になりました。

仕事のできない後輩社員「Aくん」

京大出身の彼の後輩社員に、仕事のできない「Aくん」がいました。彼も京大出身で僕からするとエリートって感じの子ですが、仕事については全然できないらしいです。Aくんの同期で同じチームの「Bくん」という子もいて、彼は学歴は親しみやすい感じですが仕事はしっかりできる子なんだそうです。

AくんはBくん含めほかの社員たちの6割くらいの仕事しかできないんだけど給料は同じらしく、仕事ができるやつがたくさん給料をもらえて、できないやつはもらえないというシビアな環境でもなく、ほんと「ホワイト」って感じです。

Aくんはサボってるわけではなく仕事の能力が低いだけなのですが、その会社は「残業禁止」なので残って仕事をすることもできないし、早く出社してきて勉強することも禁止されているらしいです。家での仕事も禁止されていてパソコンや資料を持ち帰ったりできないし、スマホから仕事のメールを送ったりもできないので、会社の外に出たら本当に仕事は一切できないのだそうです。

つまり、巻き返す方法が分からず、常に「やるべき仕事の半分程度」しか仕事ができないAくんと、要領よく仕事をこなしてどんどん新しい仕事を任せてもらえるBくんとの差は埋まらないどころかひらくばかりです。

「Aくん」地元に帰る。

そしてAくんはほとんど仕事の能力は変わらないまま6年目の先輩社員になりました。ちなみにBくんは3年目から別のチームで役職にもついて別の仕事にチャレンジして、その翌年には楽天に転職したのだそうです。

Aくんの社会人6年目のある日、親御さんの体調悪化が関係して実家のある東北に帰らなければならない事になったそうです。Aくんは「5年と少しお世話になりました。仕事のできない僕のカバーをいつも皆さんがしてくださったおかげで、なんとか今日まで僕みたいなやつでも仕事を続けさせていただけました。東北で新しい会社で頑張ろうと思います。本当にありがとうございました。」と涙を流しながら感謝の気持ちを語ったそうです。

そしてAくんは地元の東北に帰ってから再就職活動を始めたのですが、これがなかなかうまくいかず、3か月くらい再就職先が決まらなかったそうです。自分の地元は人手不足だろうから再就職先はすぐ決まるとAくんは思っていたようですが、彼の地元が「人手不足」であると同時に「仕事不足」でもあったため、彼が思っていたほど再就職は甘くなかったのだそうです。

6割程度しか仕事ができない27歳の「Aくん」の悲劇。

再就職で苦労した理由はもちろん「27歳」という年齢にもかかわらず、社会人一年目のような仕事も満足にできない「能力の低さ」です。せめて彼が社会人2年目くらいだったら何とかなったかもしれません。多少能力が低くても上司や先輩が年上だから「できない後輩くん」ということならまだかわがってもらいやすかったかもしれません。でも27歳となると上司や先輩が年下であることも少なくありませんから、仕事ができなさすぎる年上の後輩や部下というのは、正直周りもキツイんだと思います。気持ちはすごく分かります。

そして結局のところAくんはいま、地元の飲食店でアルバイトをしながら親と一緒に暮らしているのだそうです。Aくんがまだ結婚していなかったのは不幸中の幸いにも思えますが、彼が今後の人生で結婚できるのかどうかを考えると、難しそうですね。

会社を守る「ホワイト企業」

Aくんの人生を思うと「残業禁止」っていうのは本当に社員のためになっているのだろうかと思わざるを得ません。「自分で勉強して成長せえよ!」というのは正論ですが、やはり自分の能力が他の人の半分程度なのであれば、まずは2倍の時間をかけてでもみんなに追いつくという道を選ばせてあげられた方が良いのではないかと思います。(でもそれで「2倍働いたから、残業代を含め2倍の報酬をくれ」となるとおかしな話になりますから、そこは働いた時間の長さに応じて報酬を与えるという仕組はやめたほうがいいですね。)

「働かせすぎ!」と社会から批判されて会社にダメージが与えられるのを回避するために、いっそのこと残業を禁止するというのは「会社の身」は守れるのだと思います。再就職先が決まらない退職者を出したからって批判されないですから。

社員を守る「ブラック企業」

でも逆に、Aくんのような社員を会社の意思でクビにはせず放置もせず「周りの皆がAくんの分まで仕事をしてあげることは、会社のためにはなってもAくんのためにはならないから。A君自身がこのレベルまでやれるように、毎日2時間早く出て来て勉強会するぞ!」と言えちゃうような、言ってあげられるような会社は、本当の意味で「社員の人生」を守ってあげられるのかもしれない。でもきっとそんな会社は「ブラック企業」と批判されるんですよね。

もちろん、世の中で「ブラック企業」と呼ばれる会社の中にはかなり深刻な問題を抱えているものもあるだろうから、そこに対する批判が間違っているかどうかは僕には分からないんですけれども。

ただ社会人はもう大人なんだから、自分の時間をどう使うかなんて自分で決めたらいいのにと思いますね。残業は強制しちゃいけないけど、禁止もしちゃいけないんじゃないだろうか。自分の時間くらい自分の好きなように使わせてあげた方が良い。中小企業であくせく働く僕がこんなことを言っても、負け惜しみにしか聞こえないかもしれないけれども、、。


Main Photo by Ben White on Unsplash

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