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自己満足を突破する力
自己満足と向上心という矛盾するものについて考えている。それはある知り合いの人生があまりに大逆転で面白かったからである。
彼はまったく違う分野で働いていたのだが、いくつかの仕事はどれも上手くいかずリストラされ、恋も上手くいかず、趣味の仲間内でもどこかバカにされるような雰囲気があったのは、地道な努力に目もくれず夢見がちなところがあったからだと思う。本当に何も持っていない人だった。
それが今では大逆転、転じた分野はあまり人と被らないこともあり、早い段階から第一人者的な立ち位置になり営業範囲を海外にまで伸ばして活躍している。私生活でも良いご縁があったようで家庭を持ち、私のFacebookは呆れるほど幸せいっぱいな彼の写真で埋め尽くされている。他の人の何倍もの頻度で更新されるのである。
そんなふうに勝ち組人生アピールがすごいからか周りの反応はちょっと冷ややかで、共通の知り合いに彼の話を振ってもあまり良い反応は返ってこない。簡単に言ってしまえば自慢が過ぎるのである。いくら稼いだとか、いくらお金を掛けたとか、金銭にまつわる話題も多い。ここまで自分の成功をアピールする人は中々いないのではないだろうか。これまでの人生で余程の挫折感を味わったのだろう。
こうして書くと、彼がラッキーで成功を得てすっかり傲慢になっているかのように感じられるかもしれない。しかし実際のところ、彼の人生における幸運度は何も変わっていないし彼自身の性格も変わっていない。彼の性格は少し繊細なところもあるけれど、大まかに言えば暢気で人懐こく、悪く言えば浅はかでお調子者だが人に不快感を与えるような強烈なものはない。前職が上手く行かなかった理由は知らないが、そそっかしく目先の事に全力を注ぎ込み過ぎるきらいがあるので、その辺りに起因しているのではないかと推測している。そして面白いことに彼の成功の理由も恐らくはこの「目先の事に全力を注ぎ込み過ぎる」ことにあったのだと思う。
とにかく思い込んだらまっしぐら。
失敗したらとか、恥ずかしいとか、そういう感覚がないのか、或いはそこに構っていられないという思いがあるのかは分からない。
とにかく彼のしたことと言えば、好きが高じて見つけた自分の秀でた部分を、圧倒的なパワーでアピールしたことである。それこそお呼びではないような大企業にも資料を送りアピールをしたらしい。とは言え損得は気にしてないようで、求められれば本当にどこへでもあっという間に出かけて行ってしまう。その笑ってしまうほどのパワーとスピード感。何も持っていないどころか誰も真似できないような資質があったのだなと私もようやく気づく。たとえ同じような技量があったとしても同じ行動はなかなかできるものではない。
彼は今とても満足していると思う。たぶん現状にも感謝している。そういう素直なところがある。けれどその満足感はこれでいいと蓋を閉めるような自己満足ではないのだろう。自己満足と向上心はなかなか共存できないものなのだ。自己満足は文字通り自分自身がラインを定めるものなので、ラインを下げればその分些細なことでも幸せを感じることができる。けれどそれでは向上心の芽を摘むことにもなりかねない。大抵の人は好きなことで生計を立てられるならそこで満足する。その範囲を広げようとすると、余計な摩擦も生じるしストレスにもなる。身体的な疲れにも繋がるので、ここで充分というライン引きをする。需要がなければライン引きせざるを得ないとも言える。
しかし彼はまだまだ突っ走るに違いない。
需要がなければ作り出す。実際に周りが引くほどアピールをしても、そこからまた何か突破口が開けてしまう好巡回期に入っているようだ。そしてその突破口は彼の怯まないハッキリとした意思表示によるものだと思う。彼は単にいつも目の前のことに一生懸命なだけなのだが、その方向性がブレない一極集中型のエネルギーは、とても眩しく、力強い。