絵物語 『ひねくれお餅 とらもち』
いっつも ちょっとスネてる男の子、
とらもち。
ひねくれモノだから、
みんなと群れるのが大嫌い。
頭と ほっぺについた黒いスジが
トレードマーク。
焦げ目だとか、
しょうゆの跡だとか、
海苔のかけらだとか、
いろんなウワサがあるけど、
とらもちは、どれもあんまり気に入らないみたい。
「そんな失敗の残骸じゃあない。
これは、もっとカッコいい、
選ばれし戦士のあかしなのさ」
なんて言ってる。
「つるつるスベスベな
他の おもちたちとは違う。
オイラは孤独な
一匹狼なのさ」
なんて言ってる。
ある日、
とらもちは、みんなの群れから離れて、
一人、荒野へ向かった。
乾いた砂埃が舞う、
未開の土地へ・・・
でも、あくる朝、
さっさと帰ってきちゃった。
「水をくれ! 水を!
はやく! はやく!
はやくーーっ」
なんだか大慌て。
それもそのはず、
トレードマークの黒いスジは、
おもちに入ったヒビだったんだ。
乾いた風にあてられて、
ヒビは広がり、
危うく真っ二つになっちゃうところだった。
それからというもの、
みんなの群れにいることが増えたんだって。
蒸れることも大事だって気づいたからさ。
おしまい
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