デザイン界のオスカー「iF Design Award」の審査会に参加しました
1953年から続くドイツの国際デザイン賞 iF Design Awardはデザイン界のオスカーとも呼ばれる。2018年は世界54カ国から6400点を超える応募があった。ハンブルグ市に63名の審査員が集い3日間審査をする。日本からの審査員はSONY Interactive Entertainment のシニアアートディレクター森澤さんとTakramから私の2名。
会場であるハンブルグはドイツ第二の都市で、大阪と姉妹都市、横浜港と姉妹港(姉妹港という言葉をはじめて知りました)。川沿いの、かつてコショウの倉庫だった会場はとにかく広い。そこに所狭しと並ぶ6400点のプロダクトは、大きいものはSUVの自動車やキッチン、バス。小さいものではブルートゥース・イヤホンやポケットチャージャー。壮観。
本稿の全画像はiF公式ウェブサイト/映像より
審査員は三人一組で300点ほどを担当。丸一日かけてひとつずつに触れ、操作しながら議論。審査項目はイノベーション/エラボレーション(改善)、機能性、審美性、社会責任、ポジショニング。ドイツ人デザイナーは概して、材料についての知識はもちろんのこと、加工や処理の与える環境負荷についても非常に解像度の高い理解を持っている。
僕と同グループの審査員は二人ともドイツ人男性。フィリップはドイツテレコムにて6000人のマネージャーにデザイン思考やデザイン戦略を教えたサービスデザイナー。欧米では大企業の核にデザインを据えることが何年も前からトレンドになっている。みな、デザインをデザイナーのものにしておくのは勿体無いと気づいている。
左から筆者、フィリップ、ニクラス
もう一人はニクラス。ベルリンで10人ほどのデザイン事務所を経営している。ボーダフォンのスマホをデザインし深センで製造するなど経験豊富で、ここ数年の各社のスマホの傾向を熟知している。「これはiPhone6の製造技術で、去年のZTEの表面処理と同じ」などと新規性の有無をすぐに見分けてしまう。この目線の高さは日本では希少だ。
iFデザイン審査会のハイライトは最終日のVeto Round、異議申し立て。他の審査員が下した受賞・非受賞の評価に異議がある場合、それを意思表示する。数十個の異議申し立てについて、裁判さながらの弁論大会が行われる。まず審査主担当が当初の評価の理由を説明。次に異議申し立てをした別の審査員が異説を唱える。最後にその他全審査員の挙手。これで多くの評価がひっくり返る!
ひとまず以上。ドイツの国際デザイン賞は他にRedDotなどがある。日本にもGマークがあるが、一つひとつの賞の背景、舞台裏を知るのもまた新たな喜びだ。受賞者の皆様、おめでとうございます。全応募者の皆様、また来年のチャンスも逃さぬよう、よいものづくりに励みましょう。