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大人の読書感想文:野生の経営

熱い!熱いです!
経営学の本なのにものすごく熱くなりました!
いや、もしかしたら経営って、本来はこんな風に熱い何かがあるんじゃないかな?ともかんじはじめています。

実は積読していて、野中郁次郎先生の本だからゆっくり読もうかな、、、と思っていましたが、昼前に読み始め、のめりこみ始め、誰にも邪魔されないところで読みたい!と思って、隅田川のほとりで読んでました。
(おかげで日焼けが、、、)

普通の経営学の本とは全く異なるテイストです。とはいえ、ある程度の基礎知識がないと読み進めないので、この本は「経営」+「情熱」を探し求めている人にはうってつけの本だと思います。

最近の野中先生の記事で、内容的に近いのはこれかな?


本の1/3くらいが、アカデミックなお話、残り2/3くらいがタイでの実際にあったプロジェクトについて記載されています。

私もタイに駐在していた時期もあるし、この本で話題になっている「ゴールデン・トライアングル」と言われていた麻薬の一大生産地ににも行きました。それだけに感動一入って感じです。

ちなみに舞台となっているドイトゥンとはこんな感じの場所です。


この本の中で、しきりに言われている言葉に「ウォーク・ザ・ウォーク」があります。つまり、何かの事を起こしたければ、その場所に行きなさい。という事です。

ちょっと前の世代風に言うと「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」ですね。(これも最近の人には伝わらない言葉でしょうけど、、、)

この現地を行き、現物を見て、現実を感じる。よく言われる日本の三現主義ですが、それを地でいっているようなお話です。

ちょこっとだけ話の概要を話すと、事の始まりはタイのシーナカリン王太后が、かの地ドイトゥンに邸宅を作ろうといい始めたこと。でも、単純に王族のわがままで始まったのではなく、その土地が麻薬の一大生産地になっていて、住民自体も中毒患者が多いという現状を憂いての決断でした。
(ちなみにタイの王族は国民に非常に愛されていました。そして、それだけの事を王族も行動してました。過去形だけど、、、)

そのプロジェクトに手を挙げたのが、この物語の主人公クンチャイさん。クンチャイさん自身は王族に親しい家柄なので、まずは汚れ仕事なんてやらないような階級なのに、このプロジェクトに先頭に立って臨み、そして、色んな人を仲間にひきつけながらドイトゥンを麻薬の生産地から、見事な農業生産地&手工業生産地&観光地に変えていったんです。

クンチャイさんは惜しまれつつも昨年10月にお亡くなりになりましたが、なにより彼がすごいのは、クンチャイさんが居なくなっても自立できる世界観を構築したという所。

しかも、このドイトゥンのプロジェクトだけが自立しているわけではなく、ドイトゥンの人たちが、他の地域にも影響にも及ぼし、徐々にではあるが、自立のスパイラルが始まっているという事。

こういったプロジェクトは、スーパーエース級が引っ張って、その人の力だけで成しえてしまうことが多いけど、そうではなく、関与する人全員が、その物語の主人公である形になっている。これこそがSECIモデルのスパイラルアップなのだろう、と思いました。

では、このプロジェクトを前に進ませる要因は何なのか?それは数字ではなく、「情熱」と「勘」だという事も書籍には書いてありました。(そりゃそうですよね、数字だけ見ていたら、絶対成功なんてしないプロジェクトですから、、、)

MBA式の経営が全く意味がない、とは言いませんが、やはり経営でもプロジェクトでも最終的な決断に欠かせないのは「情熱と勘」でしょう。

もうちょっと自分なりに因数分解すると、情熱=運+仲間、勘=経験+時流と置き換えてもいいかもしれません。

外的要因の運はどうやってもコントロールできませんが、内的要因の運はコントロールしようがあります。「なんとしても成功させたい」という想いさえあれば、心持は如何様にもコントロールできるでしょう。これはもう、運を味方にしたといっても過言ではないと思います。

そして、その成功させるという心意気が他者にまで伝播させることができれば仲間が広がります。もし、その心意気が伝わらず、お金の関係だけでつながっている場合、カネの切れ目が縁の切れ目になっちゃいますからね。金は切れても知恵はつながる。そんな関係性が保てる仲間は必要でしょうね。

あとは勘、こちらは時流に乗ることも大事だし、一番は経験。経験を積み重ねない事には勘所は養われないんじゃないかな?と私は思ってます。

つまり、因数分解したところで、そこには経営の数字も、リーダーシップ論も、イノベーション理論も何も出て来やしません。そこにあるのは「人の情熱」だけ。

その情熱を実現するためにファイナンスやテクノロジーやマネジメント論は出てくるのでしょうけど、あくまでそれはツールでしかない。(もちろん重要なツールではあるのですが、、、)

自分自身が経営者でもないのに偉そうなことは言えませんが、結局組織って、「何がしたいか?」を熱く語れるのか?その思いを伝播できるのか?にかかっているような気がしました。

この本は手元に置いて、数か月後に読み返してみたいと思います。
まさか、この本を4時間程度で読み終えるとは思えないくらい、そして、その4時間が本当に「あっ」という間に過ぎ去りました。それほど、読む人によっては引き込まれるストーリーです。

「経営+情熱」を読みたい方、必読です!


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