ハリー・スタイルズの「Music For a Sushi Restaurant」が世界一似合うお寿司屋さんはどこか?
お寿司屋さんのための音楽 / Harry Styles
細野晴臣の『HOSONO HOUSE』にインスパイアされた、というハリー・スタイルズの最新アルバム『Harry's House』。
なんと一曲目は『Music For a Sushi Restaurant』、
つまり "お寿司屋さんのための音楽" というタイトル。
多くの日本人リスナーは三味線とか尺八とかを頭に浮かべながら、
「いったいどんな音楽が聴けるんだろう?」と楽しみにしたはず。
……ところが実際に聞くと、コンマ1秒目からシンセのループが流れて
ヽ(・ω・)/ズコー
と椅子から転げ落ちた方は多いのでは?
和風の「わ」の字がどこにも見当たらず、
『Music For Airports(空港のための音楽)』を作った
ブライアン・イーノもパンク歌っちゃうレベルの違和感。
公式のリリックビデオも寿司どころか、コーヒーとゆで卵が背景というありさま。
ワンダイレクション時代やソロライブで来日したのにも関わらず、寿司に対する理解がこの程度って
これ、文化の盗用ってやつじゃ……(ゲフンゲフン)
いや。ハリー・スタイルズの曲が世界一似合うお寿司屋さんはどこかにあるはず。
というわけで、僕は世界中の寿司レストランをめぐることにした。
すきやばし次郎@東京
まずは日本が誇る「すきやばし次郎」。
オバマ元大統領も来日の際、訪れたことで有名な鮨の名店である。
……ダメだダメだ。
ハリースタイルズなんか流しちゃ雰囲気がぶち壊しである。
鮨は日本料理だから日本で、というのはあまりに短絡的だったか。
……ということで、地球の裏側南米にひとっとび。
ブラジルのリオデジャネイロへ。
日系移民も多いブラジルなら、なにかあるかも。
ストリート寿司@リオデジャネイロ
……ということで見つけたのが、
リオの街中にあるストリート寿司。
サルサとか流れてほしいリオの街の雰囲気。
やっぱりHarryとは違うぞこれは。
Kyoto Garden@ケープタウン
ならばアフリカ大陸はどうか?
南アフリカの都市・ケープタウンのお寿司屋さん「Kyoto Garden」。
ポールマッカートニー似のオーナーが、山崎のウィスキーを出すというので驚き。
確かに和風にかなり近いが……
うーむ、ここもハリースタイルズは似合わなさそうである。
SUSHI SAMBA@ロンドン
・・・そもそも、ハリースタイルズは英国人。
なのでロンドンど真ん中にある「SUSHI SAMBA」へ。
「鮨サンバ」というネーミングからして違和感あったが、
ハウスミュージックとかクラブ系の音楽が似合いそうな
寿司バーである。
ちょーっとはあの曲に近づいてきたぞ。
うん!?ん?
「Music For a Sushi Restaurant」を繰り返し聞いて
なんか聴いたことある……って思ってたら今気づいた。
このシンセサイザーは紛れもなく
ピーター・ガブリエルの「スレッジハンマー」だ!
パー!
という途中のシャウトも、
ホーンも、シンセサイザーも、
よく聴くとまんまスレッジハンマー。
探してみると、わざわざカバーもしていたりも!
めちゃ歌ウマで愛が伝わってくるカバー映像。
ピーター・ガブリエルに寄せた声もなかなかに素敵。
(……ここまでスレッジハンマーをオマージュするなら、
せめてイントロの尺八ぐらいは真似して和風にしようよ……)
と思う心を抑え、そろそろ次のお寿司屋さんへ。
Nami Nori NYC@ニューヨーク
……やはりアメリカか、米だけにアメリカなのか。
ということでやってきたのが「ナミノリ・ニューヨークシティ」。
ナミノリ寿司、悪くない。
近い、近いぞ。
手巻き寿司は日本スタイルから程遠いものの、
かなりハリー・スタイルズの鳴りに近いのでは??
……と今更ながらこの辺で
ハリーがこの曲を作ったきっかけが語られている
海外のインタビューを目にする僕。
彼曰く、
ロサンゼルスの寿司屋で自分の曲が流れているのを耳にし、
店の雰囲気とあってないと感じ、
その寿司屋に合うような音楽として作ったのがこの曲だそう。
(ウソでしょ?)
……ということで、
世界一似ハリー・スタイルズの曲が似合うSushi Restaurantは?というと、
曲が生まれたロサンゼルスにあるわけなんですね。
"Los Angels" "Sushi Restaurant"で調べると、出てきました、ハリー・スタイルズが似合いそうな場所が。
Sugarfish@ロサンゼルス
ロサンゼルスのパサデナ群にある「Sugarfish」
あー、オシャですわこれは。オシャ。
日本の寿司職人はタジタジとなってしまうであろう、
THE オシャ。
ここならハリー・スタイルズのあの曲も気持ちよく響くはず。
……ようやく旅を終えられそうだ。
とはいっても、海外でも日本的な寿司屋さんがないわけではない。
たとえば、
ブラジリアン柔術家、クロン・グレイシーご贔屓の寿司レストランである
LA・サンタモニカの「スシ・キング」。
「カブトムシが戦うゲームみたいな名前してるよね~」
というしょうもないツッコミは止めておいて、
どうよ、これ。
パッと見なら日本のお寿司屋さんといわれても気づかないのではないか。
特に日系人が多いロサンゼルスともなれば、
ハリー・スタイルズの音楽が"似合わない"
トラディショナル・スタイルな寿司レストランもあるにはあるので、
いちおうその点には触れておきたい。
最後にライブ動画を見て頂こう。
盛り上がりが冒頭から絶頂で楽しそうではあるのだが
ライブを見ても寿司の映像はいっさい出ず、
ヤカンが蒸気を吐いてるような謎映像が流れている。
お寿司の「す」の字すら出ず……
……これはやっぱり文化の盗用なんじゃな(ry (ゲフンゲフン)
あと一点気になるところとして、
この曲を海外の一般人はどう捉えているのか。
実際のところYoutubeのコメントを見ると、
・・・とこのように、
この曲が寿司で流れる曲として違和感を持つものは誰もいないようである。
いまさらだが
「Music For a 寿司屋」ではなく、
「Music For a Sushi Restaurant」 なので日本人の認識と違うのは当然のこと。
さらにこの曲、
白イヤホンで話題になったU2のVertigoをオマージュしている通り、
3Dオーディオのマーケティングも含め、
アップルも激推しの一曲なのである。
80's世代も、
アップルファンも、
アイドルファンも
クィアなリスナーも
これでもか!と取り込む一曲で、
マーケティング的にもすげー洗練されており、
まるですきやばし次郎のツナのよう。
寿司屋のための音楽、
つまりはそれだけ洗練された曲だということなのではないだろうか。
ちなみに日本でのセールスは他国と比べるといまいち。
狙いすぎな戦略を見破った日本人の耳を誇るべきか、
世界の潮流とずれている音楽シーンを嘆くべきなのか。
いろいろ勝手なことを書きましたが、
オープニングトラックはこれしかない!っていうぐらい
80'sリスペクトな名曲の紹介でした。
日本の寿司職人にひとりでも多く聞いてもらうべく、
この記事を書いた次第。
……ひさびさのネタ記事でした、寿司だけにね。
Text by : ねじまき / Twitter