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やっとあえたね

子供の頃から魔法使いに憧れていて、見えない世界のものを調べまくっていたのだけれど、その中でもつよくつよく憧れたのが、フェアリーリングを見つけることだった。

妖精が輪になって踊った場所に、輪っか状にキノコが生えると言う言い伝え。

空想の世界のものが実在する証拠のようで、想像の世界が地上にも降りてくるように感じられて、あまりにも素敵だったから、山に行く時や自然のそばを歩く時、いつもぼんやりとフェアリーリングを探していた。ような気がする。でも見つけられたことはなかった。ちいさな私の、ちいさくて、おおきな夢だった。

フェアリーリングって、きのこの菌による現象だっていう説が強くて、見えない世界の話にはこう言う科学的否定がつきものだから、事実はどちらでもいいけれど、それでも私は信じる、と考えていた。見える世界も見えない世界も、どちらも事実でいい、と思っていた。

ただ今日、人生で初めてフェアリーリングらしきものをみつけた。しかも、きのこじゃなくて、お花でできたやつ。道端の芝生にぽっかり浮かんでいた。

ほうら、やっぱり、しってたよ。妖精はいるんだよ。静かに写真を撮る大きな私の横で、小さな私がにんまり笑っていた。

今日はとても暖かくて、この街の寒い春に時々訪れる夏の日だったから、きっときのうの夜、早い夏を祝うおまつりがあったんだね。きっときのうの夜、手をとって小さく踊っていたんだね。やっと会えたね。

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