いちじくのブリュレ
吹く風に冷たさを感じ、金木犀の香りが鼻の奥を燻る。
足元には茶色い落ち葉。散歩に出かけるとどこからか大きな竹箒がテンポよく地面をこする音が響いてくる。
何だか急に秋めいてきたと思う、今日この頃。
八百屋さんの店先にはスイカが堂々と居座っていたのに、気がつけばブドウやみかんが顔を並べ始めた。
秋の果実の色どりに見惚れる中、小さなスペースで大事そうに並べられているイチジクに目が留まった。
摘んでまだ浅い、野菜感残るイチジク。
ブリュレにして、食べようと思った。
熟して甘くなるのを待つ方がデザートには向いているけれど、今回はまだあっさり風味のイチジクを使って後味が残りにくくすることで、複数ある中のおやつの一品として、かつ紅茶に合う様に仕上げたいと思った。
(多分、最近スコーンをよく焼いているせい)
買ったばかりは尚更、生のまま使うと皮が口に残って食べ辛いので、冷凍してかじりやすくする。
でも冷たすぎて砂糖を焦がしにくくなるので、薄付きを何度も繰り返して理想の焦げ付きを追いかける。
イチジクのあっさりした甘味と香りに、焦がした砂糖のほろ苦さが加わって、さらにクリームチーズをのせたら秋口らしさ漂うスイーツが出来上がった。
一口かじっては感覚を鼻と舌に集中させて、これに合う紅茶は何かな、一緒に食べる焼き菓子は何がいいかなと想像が止まらなくて楽しくなって、窓の向こうで踊る風と一緒に、心を躍らせる昼下がりとなった。