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週刊私自身

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サウダーヂなアーカイブ。
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2019年10月の記事一覧

さざなみダイアリー③

子供の頃、春になると生活のいたるところで発見される真っ黒でチクチクした毛虫が嫌いだった。アザミを摘もうとしたら茎の部分にヨチヨチ登っているし、物干し竿や玄関なんかにも気づけばくっついていた。げんなりするほど大発生して道路の上をたくさんの毛虫が横断するようになる。足元で見かけたと思ったら、目線を30センチそらした先でもヨチヨチやっているほどなので、車にぺちゃんこにされるかわいそうなヤツも少なくない。夏には毛虫に負けないくらいのカエルが道路にあふれ出す。これまたぺちゃんこになって

さざなみダイアリー②

お店を作る時、自治会の石田さんから「昔はさざなみ食堂っていうのがあった」と聞いて、それにあやかって『さざなみハウス』という名前をつけた。 お店がオープンして少しずつ馴染みの顔が増えてきて、私は衝撃の事実を知る。さざなみ食堂は職員専用で、患者だった人たちは立ち入ることができない場所だったということ。今の時代では信じがたいけど、療養所の中は区切られていてハンセン病の患者は、自分たちのエリアを無断で越えることが許されなかった。今、80代や90代の人が若くて元気だった頃の話。(元気

さざなみダイアリー①

長島のさざなみハウスで仕込み中のできごと。 「整理してたら亡くなったカミさんの指輪が出てきたからあげる。」と90を超える紳士が唐突に、携えたセカンドバッグの中から立派なパールの指輪を出してきた。 いやあ、私なんて指もゴツいし、カサカサのしわしわだし。ってコンプレックスを並べながら、その指輪をはめてみるとピッタリだったので、そのまま譲っていただくことに。 いいんですか、奥さんの大切なものじゃないんですか?って聞くと「カミさんは洒落ててアクセサリーようけ持ってたんよ。だけど