雨に唄えば
前髪の仕上がりで1日の気分を左右する思春期。
雨の日はアホ毛がやりたい放題。
何とも憂鬱に思っていた私も、大人になった。
社会人になっても、
雨に降られる通勤は好きな時間ではなかった。
時間の流れる中で、いつからだろう・・・
雨の日も悪くないって思い始めたのは
娘が3歳になる頃、雨を怖がることに気付いた。
雨が降るとパニックになって、
傘もささずに雨粒から逃げるように走り出す。
どこまで行っても雨は娘を追いかけてきて、
「こわいこわい」と泣いていた。
大人の私には何がそんなに怖いのかわからない。
空から水が降ってくることか、
傘に当たる音なのか、
ニオイか何なのか・・・
理解しようとしたけど、
子供にしかわからない感覚なのか。
雨が続くある梅雨の日。
TVから聴こえてきたのは、
窓の外のどんよりとした空とは対照的な
何とも軽やかな歌だった。
♪ピピポ ラララ タプタラターン♪
♪ピピポ ラララ ながぐっちゃん♪
それは雨の日を待ちわびる長靴の歌。
雨が嬉しくて楽しくて仕方ない歌。
何だかウキウキしてくる素敵な歌詞。
雨が待ち遠しくなるようなメロディ。
幼稚園に通う娘は、雨の日毎に休んでもいられない。
娘の手をしっかり握り、
元気にながぐっちゃんを歌いながら、
水たまりの中をそろそろ歩き、
私は優しく「大丈夫、大丈夫」と繰り返す。
1年はかかったか、
紫陽花を見つけて駆け寄り、
カタツムリを飽きるまで観察する。
娘は自分で傘を差して登園するようになった。
一見普通のことに見えるけど、
娘にとってはすごい成長なのだ。
雨の日を楽しめる娘はすごいのだ‼︎
今でも雨が降ると、時々そんな2人の時間を思い出す。
雨の日は、周りの人に聴こえないくらいの小さな声で
ながぐっちゃんを歌う。
雨降りだって楽しい時間になる。
そう、雨の日も悪くない。と思えるのだ。
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