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推しのディナーショーに行った

私には推しがいる。
今年70歳の女優。

いや、70歳の女優にハマったわけじゃなくて、ハマった時は30代でいらっしゃった。

推しは元宝塚トップスター。

今年は芸能生活50周年の記念の年。

ファンもかなり高齢化してきたりして共に歩いてきた感が強い。
なので50周年だもの、コンサートなどしてくださるのではないか!と、かなり期待していたかたも多かった。

発表になった記念イベントはディナーショー。いや厳密に言えばランチショーだった。

ファンは正直、がっかりしたのでした。
ディナーショーだとコンサートより曲数が断然減る。
そしてお値段が高い。

そうかぁ…そうだよなぁ…仕方ないかぁ…。

でもね、冷静に考えたらさ、70歳の人に何をそんなに望んであげるのよってなるよね。

でもどこかで認められないのよ、ファンは。
うちの推しは歳を重ねたってまだまだやれる!
うちの推しは普通じゃないんだよ!

その反面、50年走ってこられたんだから少しゆっくりさせて差し上げたい、などとも思う。

複雑な思いで迎えた9月14日。

宝塚ホテル。

相変わらず外観も内装も素敵の2文字である。


ディナーショーなんて本当に贅沢の極みだと思う。
でも推しがやると言うなら行かねばなるまいと思ってしまう。
それがオタクというもの。

このお金があれば、お米何ヶ月分買えるか…などと思ってしまってはもう負けなのだ。

オタクもオタクなりに自分と闘っている。


さて、受付を済ませて会場に入る。
お腹空いた。
はよ食べたい。

推しの名は剣幸(つるぎみゆき)


指定されたテーブルの座席に着く。
今回は真正面なので舞台がとても見やすくて嬉しい。

なんだかんだ言って上がるよね。
これからご飯食べて、その後推しのショー観るんだーって、それで上がらん人間がいたらお会いしたい。

前菜どれも美味しかった
舌平目食べかけ。ガツガツしてた
お肉美味しかったけど結構お腹いっぱい
デザートはショータイトルをイメージして


お食事終わってトイレタイム。
あちこちで推し友のご挨拶大会。

あー、私も随分長いことこういう世界に身を置いてるなぁなどとしみじみ思う。


客電が落ちてバンドが演奏を始める。
客席後方の扉が開き、推しがライトを浴びて入ってくる。

わ。

もう何百回も会っている人なのに毎回一瞬フリーズする。

客席を歌いながらまわってこちらに近づいて来られる。

わ。来た。

姿勢を正す。

近くを通って過ぎて行かれた。

わわ。
好き。

もう何千回思っただろう。
いわゆる「あほの一つ覚え」のように唱えてみる。

好き。

この感情が湧かなくなったら、もう追っかけは終わろうと思っている。

この2文字に背中を押されるように日本全国駆け回ってきたのだ。

今回少し不安だった。
素直に純粋にこの感情が私に湧くのか。

湧いたで。

草津のお湯くらい湧いて出たし。


だってね、ライトを浴びてキラキラ輝きながら最高にいい声で歌って微笑む推しがそこにいるんだもの。

こんな気持ちを味わえて、私は本当にオタクで良かったと胸を張って言える。

ショーを見ている最中も、私はほんとにこの人が好きなんだなぁと他人事のように何度か思った。

ぶっちゃけ、ここ10年間は全てをこの人に捧げたと言っても過言ではない。

心満たされ、友に恵まれ、人生潤い、貯金枯渇した10年だった。
何ひとつ悔いはない。
こんな楽しい期間が過ごせたことを自慢したいほどだ。

もう推し活を辞めるような書きようだが、それはない。

が、推しもこのお年なので今後は今までとは少し変わってくると思われる。
それはそれでいい。
私は最後の最後までこの人を見続けていくだけだ。

その覚悟を決めたディナーショーとなった。
私は膝の上で静かに拳を握りしめた。



50周年の記念のショーなので、推しの芸能生活を歌で振り返るという趣向。

どの歌もいろいろ思い入れがあって、時には涙が出そうになり、時には一緒に口ずさみそうになり。

推しはあまりトークが得意なタイプではない。
いい事を言おうとしてしまう傾向にあって真面目さが裏目に出る事が多々ある。

今回はトークが少なめだったのが良かった。
「初めてソロで歌った曲です」とか「退団後、初めて歌った曲です」とか、「初めての◯◯」というテーマが決められている中での曲の紹介トークはわかりやすくて、その曲を聞く気持ちを作りやすく、入り込めた。


濃いファンであればあるほど衣装にまでいろいろダメ出ししてしまうと思うんだけど、今回はあんまりダメが出なかったのよね、終演後の感想大会。

概ね素敵だったよねー、みたいな。
これって、ファンが50周年を経て寛容になったのか?
このところ目立った活動のない推しなので、そこに居てくれるだけでいいのだという緩い目で見られるようになったからなのか?

いや、そこは素直に「本当に素敵で非の打ちどころが無かった」のだと思いたい。
私は本当に全部いいわ〜って思ったんだもの。

いつもはひねくれた目で見て辛口を垂れ流す私なのに。
推し無条件絶賛タイプを冷ややかに横目で見ている私なのに。

そのくらい推しは美しくてカッコよくて素敵だった。

全てが終了した時、私は思わず隣の友人に呟いた。

「どうしよ。めちゃくちゃ楽しかってんけど」

「私もやねん。ほんまどうしよやわ」

別にどうもしないけど。

ロビーに出たら、推し友たちの笑顔で溢れていた。

楽しかったねー。
良かったねー。
綺麗だったねー。
素敵だったよねー。


推しー!来て良かったと思わせてくれてありがとうございます。

どの方角に推しがいるのかわからないけど、とりあえず推しに向けて私は合掌した。


そして私は私を褒めてやりたい。
来週の東京での推しのディナーショーチケットを買ってあることを。

実は少し迷った。
ショー代と遠征費合わせるとお米が何ヶ月分買え……

でも60周年はあるのか!と思うとね。
今ここで頑張らないで、真のオタクを名乗れるのか!

いやぁ、グッジョブだったわ、私。

もう一度あれを観られる。
今からもうワクワクしている


盛大に無駄遣いしてくるのだ。
いや、これだけ心を潤わせてくれるのだから無駄ではないのかもしれないな。
言い訳かもだけど。

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