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実朝暗殺_04 千葉純胤の時空移動

純胤は重ねて話を続けた。

「ではこの凶行にはいくつかの可能性がありますので列挙してみましょう」

「ひとつは北条義時が黒幕の可能性。理由は当日急遽の参詣欠席です」

「ひとつは三浦義村が黒幕の可能性。理由は公暁が犯行後に三浦義村邸へ向かっている事と、公暁の乳母が三浦義村の奥方であることです」

他にはありそうですかと純胤は振り、相馬義胤が単独での凶行と答えた。

「そうですね。公暁の苦悶が重なり続けて及んだ可能性もあります」

「あとは朝廷、云ってしまえば後鳥羽上皇が黒幕という可能性もあります」

純胤はざっとこれくらいですかねと添えた。

「ひとつずつ可能性を消していきますけど」

「後鳥羽上皇が黒幕はないかと」

それは何故と相馬義胤が問うた。

「後鳥羽上皇は大事な皇子を鎌倉へ下向させようとしていました」

「下向後で幾年かしたら実朝が邪魔とかありえますが、さあこれからという時にわざわざ朝廷に従順な実朝を排除するとは思えません」

「次になさそうなのは北条義時が黒幕の可能性です」

「北条義時が純粋な実力だけで今の勢力を持った訳ではありません」

「実朝の義兄である影響力は大きいです」

「北条義時からすれば出来るだけ永く実朝が将軍である事が安寧となる中、わざわざ殺して平穏な時間を短くする理由がありません」

「とはいえ、当日の参詣欠席は気がかりです」

千葉胤綱はなるほどと頷いた。

「残るは『三浦義村が黒幕』と『公暁の単独』の可能性です」

「偶然の可能性が成せる技で公暁の単独の可能性はちらつきましたが、厳しいと思い直しました」

それは何故だと千葉胤綱が問い直した。

「公暁単独だと北条義時の参詣欠席に納得がいかないのです」

「公暁は明らかに2名を狙っていました。2名の重要性は異なるかもしれませんが、2名のうち1名は当日に難を逃れようとしたのです」

「わざわざ討ち取る相手に事前に伝えるとは到底思えません」

では北条義時が張本人なのではと相馬義胤は尋ねた。

「そうなんですが、それでは先ほどの解釈に戻ってしまう」

ではどうせいと千葉胤綱は質した。

「北条義時はなにかしらの形で曖昧だが不穏ななにかは知りえた。しかし全貌は知らない為、自身の参詣の欠席という判断をしたのはないでしょうか」

相馬義胤が残るは...と呟いた。

「そう、この度の黒幕は三浦義村と僕は踏んでます」


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