実朝暗殺_01 千葉純胤の時空移動
下総にある千葉一族の館。奥部屋には当主の千葉胤綱と叔父である相馬義胤がいた。千葉胤綱が相馬義胤に語り掛ける。
「義胤、こんな感じで合ってる?」
「合ってると言われても私は一度しか見てなく。妙見様の位置もそんな感じでした」
「父上が呼び出したとき義胤はいたんでしょう。なんかもっと手掛欲しいなぁ」
千葉胤綱はぼやきながらもそそくさと準備をし続けた。まあこれでいいかときりをつけ、胤綱は妙見像の前に座った。
「それで。なんて言って呼び出すんだっけ」
「確かですね『一族総出で困難に立ち向かってまいりますので何卒お力をお貸しくださいませ』と妙見様にお願いをしてました」
なるほどねと千葉胤綱は返し妙見像をみつめた。
「それじゃあいくよ」
「妙見様、一族総出で困難に立ち向かってまいりますので何卒お力をお貸しくださいませ!」
その刹那、襖の奥でガタンガタンと大きな音が響いた。
そして襖が勢いよくバッと開き、一人の男が立っていた。
「久々だなぁ」
男は頭を撫でながら呟いた。
「お会いできましたね。ご先祖様。おひさしゅう。おひとりは確か相馬義胤。もう一人はもしや」
「千葉胤綱じゃ!お主は未来人の千葉純胤か?」
そうですと純胤は答えた。
純胤は今はいつと伺い、相馬義胤が建保七年の二月と返した。
純胤は続けて語り続けた。
「建保七年の二月。すると源実朝はもう」
話を遮るように千葉胤綱が続けた。
「左様。実朝様は殺された。先日な。それも相手は頼家様の遺児である公暁に」
「なるほど。いつかと何があったかは判りました。僕を呼んだのは何故でしょう」
「こんな深刻な事態でこれからなにが起こるのかもわからぬ。義胤に打ち明けたら我が一族は当主が未来人を呼び寄せれるというではないか。じゃあ呼んでみるかとなって今よ」
純胤はずいぶんと直球ですねと呟いた。千葉胤綱は話を続けた。
「世が騒がしくなっている。実朝様がお亡くなりになった翌日には分家の東重胤含め百名以上の御家人が出家した」
「実朝様には子がいない。京より上皇様のご子息の親王を次期将軍にとの話はちらっと聞いていたがまだ鎌倉にはきてないし、そもそもこんな様子で来ていただけるかも不明よ」
「ほうぼうで不穏な話はでてる。我が一族も上総にいる常秀の叔父がどう来るかは用心せねばならぬ」
「という事態でな。純胤、我が一族の進むべき道を示してくれぬか」
純胤はやれやれとため息をついて話し始めた。
「もろもろ判りました。道は道で大事ですが、僕にとっては謎も重要です」
「さて、この実朝暗殺。謎が多い。ちゃんと解き明かしましょう。道はそれからです」