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BtoB SaaSでオンボーディング後の成果を作るために大切な3原則「GPO」と私が経験した失敗談

こんにちは!礒野亘(@wataridori89102)です。(本記事はカスタマーサクセス Advent Calendar 2019の12/2の回として書かせていただきました。)

私のカスタマーサクセスとしての2019年の大きなミッションの1つに、オンボーディングの後のフェーズでのサクセスを作るというものがあり、様々な試行錯誤と失敗を繰り返してきました。なんとか最終的にはクライアントの成功を作る仕組みの端緒にはたどり着きつつあるので、本記事ではその過程とそこから見えてきた「オンボーディング後の成果」において大切だと私が考える3つの原則をご紹介できればと思います。

本記事のサマリ

思ったより長文になりそうなので先に結論を!

・BtoBでかつ業務創造系SaaSのカスタマーサクセス は「成果」が超重要
・オンボーディングプログラムがどれだけ良くても過信するべからず
・オンボーディング後の成果を創出するためには3つの原則GPOを守るべし
1. 目標共有(Goal)
2. 個別伴走(Pair support)

3. 機会提供(Opportunity)

・よくある失敗として「状況のお伺いに終始」「定型&集団FBばかりで伝わってない」「実行がクライアント任せになる」などがあるので要注意

こちらのツイートで呟いたことでもあります。

では上記結論に至った過程を以下にどうぞ!

前提:業務創造SaaSは難しい

私がbeBitで携わっているのはUSERGRAMというサービスで、主にデジタルマーケティング・顧客体験設計・OMO型ビジネス実践などにおける、顧客理解・UX企画の基盤となるクラウドサービスです。…と言ってもわかりづらいですよね…。

平たくいうと:デジタルやリアルでの1人1人のお客さんの行動やその状況が見えるようになるツール
導入すると何が良いか?:お客さんをちゃんと理解して、より良い体験を企画できるようになるため、売上向上・ロイヤルファン獲得などが可能になる

具体的な効果が知りたい方は下記のエイチーム様の活用事例記事がめちゃくちゃ素敵なのでどうぞ。

さてこのUSERGRAMですが、SaaSとしては下記のような種別に該当すると認識しています。

2019-12-01 13_20_52-PowerPoint スライド ショー - [Advent Calendar記事画像]

特徴から分かる通り、ハイタッチが中心のカスタマーサクセスなのですが、ポイントは一番下の「業務創造」の部分。この「業務効率か、業務創造か」というのは以前、HiCustomerの高橋さん(@ayumut)にお伺いしたお話を元に私もよく使っているものです。

もちろんMECEな分類というわけではないのですが、カスタマーサクセスの活動に大きく影響を与えるので認識しておくべきだなと。改めて書いてみると

■業務効率:今ある業務を効率化するSaaS
例)営業管理系、バックオフィス事務系、採用管理系
→マス向け、価値伝わりやすい、チャーンレート低め

■業務創造:今ない業務を創り出すSaaS(USERGRAMはこっち寄り)
例)AI・VR活用系、MA・Web接客系、データ分析系
→ニッチ向け、価値伝わりづらい、チャーンレート高め

という感じです。単純にマーケットの成熟度の議論をしているに過ぎない気もしますが、ここでのメインメッセージは「今ない業務を創り出すSaaSであるが故にクライアント社内での理解が得づらく、導入段階にあたっては世界観の啓蒙が重要、継続においては目に見える成果が厳しく問われる」ということです。

こういう記事を書く時も、サービスの紹介の仕方が難しいなといつも模索するのですが、実業務の中ではもっと迷いますし社内でも繰り返し議論が行われています。そういう背景もあり、カスタマーサクセスの難易度もかなり高いと感じています。

サクセスの3ステップと成果に焦点を当てた背景

そんなサービスのカスタマーサクセスですが、顧客視点で考え大きく3つのステップに分類して考えています。

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実は2と3は入れ替わるケースもあるのですが、大きな要素としてはこの3つ。ステップが後ろになればなるほど、カスタマーサクセスが関与できる度合いは減っていくのですが、当然ながらこのステップはそれぞれ解約原因とも直結しています。

【フェーズに応じた解約原因】
型の習得
:使いみちがわからない、何に役立つか分からない
成果創出:費用対効果に合わない、大事だけど無くても成り立つ
業務定着:使っている人が少ない、リソースが足りない

2018年はオンボーディングプログラムの立ち上げや磨き込みに力を注いでいたので、ステップ1の「型の習得」についてはほとんどの導入企業様で突破いただけるようになっていました。一方でその次のフェーズである成果創出の部分については企業様によってまだばらつきがある状態でした。

また前段でお話した業務創造SaaSとしての難しさも相まって、カスタマーサクセス活動の中でもこの「成果が出るかどうか」というのが導入企業様の社内目線でも非常に重要な観点になっていました。そういう背景が重なり合い「成果創出」にカスタマーサクセスとして取り組む必要があるよね、という話になっていたのが2019年の年初時点のチームの状況であり、この課題に取り組もうとなった背景です。

意外に無い「オンボーディング後の支援」の知見

さてこのオンボーディング後の活用支援ですが、まず取りかかったのは先人の経験へのアクセスで、青本を読み返したりカスタマーサクセスのブログやnoteなどを読んでみました。ただ始めてすぐ、意外にもこの「オンボーディング後の活用支援」についての資料や知見はあまり揃っていないことに気づきました。

私の探し方が甘かっただけなのかもしれませんが、青本だと「メールの頻度や書き方」「四半期に1回のBusiness Review」、ブログだとコミュニティタッチやテックタッチ系の話は結構出てくるのですが、求めている情報とはちょっと違うなと。もちろんそれらも大事なのですが、当時私が求めていたのは「クライアントが自分で成果を出すためにどういう支援をすればよいか」という話でした。

そこで、過去知見の掘り返しはそこそこで切り上げ、自分で仮説を立て検証するスタイルへと移行することにしました。

最初の取組み「定期検診シート」

1.考えたこと
まず私が考えたのは「オンボーディングを通過していればいずれ普通に成果が出るのでは?」ということでした。

・オンボーディングプログラムは期待値立ち上げから活用イメージ作成までをかなりの練度で磨き込み実際ワークしているので、これ以上の支援をするのは難しいのではないか
・成果が出ている企業とそうでない企業を見比べみても、UX企画という期待値をちゃんと持って活用しているかどうかが大きな差分になっていそうだが、これはオンボーディングでかなりカバー済み
・オンボーディングプログラムは社内でも立ち上がったばかりなので、この後の企業の活動を見守れば成果はいずれ出るのではないか

一方で成果が出ないリスクがあるとしたらそれは、「クライアントの中で業務目標が変わりそこにSaaSの使い方をアジャストさせられないことではないか」と考えました。

・オンボーディングプログラムは3ヶ月程度の期間で行われるので、導入時と卒業後で状況が変わっていることはよくある
・例えばリニューアルが走ることになった、来期からMAツールの導入が決まった、SEOが大きく下がってしまい新規獲得の優先順位が上がった、など
・その変化に対応できず、使われなくなって放置されてしまうというリスクは有り得そう

2.やったこと
そこで上記のような思考から「業務内で成果が出たかどうかと、直近の組織内の業務目標は何か(=以前と変わっていないか)の2つを定期的にウォッチする仕組み」があればよいのではないかと考え「定期検診シート」という支援を考えました。

こちらがトライアルで作成した「問診票」です(トライアルなのでExcelですが笑)。

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こちらを月に1回オンボーディング後の企業のご担当者様に送付しご返信頂く。もちろんただ書いて頂くだけだと難しいだろうと思い、記入返信いただければSaaS活用状況のスコアシートと最新の活用事例をご送付という立て付けで実施しました。

3.何が起こったか
残念ながらこの取組はうまくいきませんでした。具体的には…

・まず返信率が超低い。約20%程度。
・帰ってきたとしても「そもそも時間がなくてあまり使えていません」「特に進捗はありません」みたいな返信が目立つ
・送付したスコアシートにも特に反応なし

というような状況で見直しが必要でした。

4.何がダメだったか
いくつかあるとか思いますが、最大の原因は「オンボーディングプログラム通過後のクライアントの状況を見誤っていた」ことだと振り返っています。最初の思考で「オンボーディングを通過していればいずれ普通に成果が出るのでは?」と書きましたが、そこに誤算があったなと。

誤解の無いように補足すると、チームで作ったオンボーディングプログラムの品質は今見ても当時の段階でもかなり高かったと考えています。ただプログラムの品質が高いことと、それを通過したあとクライアントの状態については分けて考えるべきだった。

具体的なオンボーディング後の状態しては、確かに型については習得しているものの、じゃあ業務のどこに活用するの?というトピック選定や、いつどれくらい見てどんなアウトプットを作る?といったレベルには落ちていなかったんですね。つまりまだ普通にやっていても成果が出るとは言えない状況に達していない、カスタマーサクセス側で何らかの支援や仕掛けが必要な状態だということを強く認識しました。

・補足ですが、それ以外の当初仮説の「業務目標が変わってSaaSをアジャストさせられない問題」は課題の捉え方としては正しかったなと思っています。が、それが課題になるのはもっと先の話で、時期スパンと取り組みの優先順位が間違っていたと考えています。
・活用スコアを送る取り組み自体もやり方をもっと工夫すれば良いものになると考えています。ただ、まだクライアントがそういうことに反応できる状況じゃなかったというのはあるだろうなと。ここは2020年以降に再度トライしたい領域です。

次なる画策「選べるアフタープログラム」

1.次に考えたこと
定期検診シートでの反省から「成果を創出するための何らかの支援が必要」との学びを得たので、次は「そもそも成果を創出するにはどのようなステップが必要なのか」ということを考えました。

この思考から生まれたのが下記のチャートです。

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本稿においては、このステップの内容そのものはあまり重要ではないので深くご理解頂く必要はないのですが、簡単に言うと、SaaSのメイン利用領域であるデジマケ・UX企画で成果を出している企業がどのようなステップで取り組んでいるかを可視化したものです。

成功企業の実例と弊社の支援実績とを紐解いて作っていたので、このステップ通りにやれば成果は上がるはずという確信はありました。なので「この中のどのステップに企業が課題を持っているかを把握し、そこを順次解消すれば自ずと成果が創出されるのでは?」という仮説を持ちました。

■2.やったこと
そこでまず上記の各ステップの課題を解消するための支援プログラムを作成。そしてオンボーディング後の企業に先ほどの6ステップの図を見てもらい、どこに自社の課題があるかを考えながら企業側が支援プログラムを選べるという、名付けて「選べるアフタープログラム」という支援へと切り替えました。

・もちろん青天井に支援はできないので、各プログラムにどの程度の時間がかかるかは明記し、月にMAX5時間・3ヶ月以内という制限は設けました
・さすがにオンボーディングよりは手厚く出来ない(=徐々に人的工数は薄くなりクライアントが自走するのが理想)、また導入から6ヶ月以内には具体的な成果が出ているべきとの思想から上記数値は設定されています
・ちなみに「選べる」という形にしたのは「企業によって状況は異なり、どこに課題があるかは多種多様なのではないか」「自ら選んだほうがコミットメントが高まるのではないか」という発想からでした。

3.起こったこと
個別企業様に何度かご提案し私も同席しました。確かに最初の取り組みの「定期検診シート」よりは手応えを感じたのは事実ですが、この支援形態も成果創出からはまだ遠かったというのが結果でした。何が起こっていたかというと

・成功ステップを元に課題をヒアリングするも、まず自社のどこにボトルネックがあるかご担当者様自身も分かっていなかった
・そのため「うーんどれが必要かちょっとわからないです」という反応に
・結果的に「一旦この支援が弊社に合うかどうかもわからないので、自分たちでやってみますね」という回答が続出

というような状況でした。

■4.何がダメだったか
この辺りで、業務創造型SaaSの難しさを感じたのですが、まず第1にそもそも今までにない業務なので、「クライアント自身で成果創出のボトルネックを理解している」という発想が間違えていたと感じました。

そして第2に成果創出のプロセスをフォローすればできる、というのも全体的に誤算だったなと感じています。どういうことかと言うと、プロセスをフォローすればできるという発想の裏側には「オンボーディング後にはWhy(何故活用するのか)やWhat(何に活用するか)は理解されていてHow(どう活用するか)がボトルネックになっているはず」という前提があったなと。しかしこれが捉え違いだったと思っています。

もちろんWhyやWhatはオンボーディングプログラムの中で何度も繰り返し伝えています。ただし、新しい業務であるが故にその理解が進むと、何のために活用するか、何に使うべきかという認識も、クライアントの中で同時にアップデートされていたのでした。また担当者それぞれや職位によっても捉え方に差が出やすいので、本当はWhyやWhatの認識の摺合せから立ち戻って行うべきだったと痛感したのです。

なのでこういう状況のところに「選んで頂く」という形を取ってしまうと「考えるのも面倒だし一旦断っておこう」という思考にクライアントがなってしまうのもやむを得ないことだったと反省しています。本当は「こうしませんか?」と提案含みにすべきだった。正確にいうと「オンボーディングはまだ終わっていない」という感覚でいるべきだったのだと捉えています。



ここまでの2回の取り組みを振り返った時、全体的に自分たちが作ったオンボーディングプログラムに自信を持つあまりに、オンボーディングプログラム終了後のクライアントの状況を取り違えていたことが大きな失敗要因だったと感じました。そしてこれが理解されづらい傾向のある業務創造系SaaSの難しさでもあるのかなと考えました。

3度目の正直:サクセスプログラムへ

これまでの2回の試行錯誤を踏まえると、支援内容に反省は必要なものの枠組みとしてはアフタープログラムの「月5時間×3ヶ月」は良さそうだったので、まずはこれを土台に中身を入れ替えることにしました。

「目標共有」を組み込む(Goal)

まずこれまでの経験から、成果を出すにあたって「そもそも成果って何だっけ?」という認識がすりあってないと上手くいきっこないということ、そしてそれはオンボーディングプログラムを経ると実は導入時と変わってしまうのだということを教訓として踏まえ、「目指す成果は何か」について組織で目線をすり合わせるセッションをオンボーディング後の最初に組み込むことにしました。

方式も選んで頂く形ではなく一律必須で組み込み、目標を決めてそこに自走してもらうスタイルへと移行。まず最初にこれで一定の手応えを感じました。担当者様のコミットメントが生まれやすくなったのです。

この目標シートは様々な試行錯誤を経て、2019年12月時点ではこのような形になっています。

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これもいくつかの細かいPDCAを経てこの形にたどり着いたので、ポイントを箇条書きで記載しておきます。

1.必ず形として残す:口頭だけだと決まったつもりになっても、関係者が後から忘れてしまったり担当者が目標に立ち戻れなくなったりしてPDCAが回らないので、何でも良いので必ず形に残す。
2.自発的に自分の言葉で:他人から与えられた目標は達成しようという気持ちになりません。ディスカッションあっても最後には自分で決め自分の言葉で自分で記入してもらうことが大切。
3.事業目標との繋がりを意識:SaaSの活用目標だけがあっても、それが事業目標と紐付いていなければ担当者の達成モチベーションが下がってしまい、結果的にチャーンにも繋がります。必ず組織が追っているKPIとの繋がりを意識する形式にしましょう。
4.SaaSの活用目標は別途定義:一方で「このSaaSを使って新規ユーザ20%増を達成する」みたいな直接的な事業目標だけにしてしまうと、他要素が絡むことや貢献が間接的であることから達成が難しいケースが増えてしまいます。なので、やればできるSaaSの活用量に関する目標は別途定義するべきです(3と4は両方が重要)。
5.決裁者/評価者を巻き込む:せっかく目標を決めても担当者だけの目標だと形骸化する、コミットメントが下がることがあります。そこを打破するため決裁者や評価者に目標に対してのコメントを入れて頂くようにしています。

この目標シートは事前に記入いただき、対面のお打ち合わせで弊社・担当者・決裁者の3者で合意して作成するというプロセスを経て作成しています(3回あるうちの初回をこの目標設定に当てています)。これがVer1。

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実行をドライブさせるサクセス発表会(機会提供/Opportunity)

さて、目標や成果の定義が決まったら次なる課題は成果を決めた後の実行です。当初は「初回が目標設定、残り2回は目標達成のための相談」という立て付けで進行していたのですが、そうすると2~3回目の相談の場で担当者様から「いやー忙しくて、実はアレ進んでないんですよね…」というケースが目立つようになりました。ここで「実行パートも放置するのではなく強制的な仕組みを作るべきだ」と考えました。

そんな折、全く別の企業の上長様から偶然にもこんな話を聞いたのです。

上長様「そういえばこの前、USERGRAMを活用してこんな成果が上がりましたというのを社内発表したら社員のモチベーションアップやUX的な考え方の浸透にも繋がりましたよ。こういうことが出来るなら、ウチもやりたいっていう部署も出てきたりしてねえ。」

これを聞いてすぐに「強制化の仕組みとして展開できる!」と閃きました。SaaSを使ってどんな成果が出たかを担当者様に社内で発表してもらう会を設ける、司会進行や巻き込みは上長様にやっていただき、社内の他部署や関係者も呼んでもらう。

早速これを「サクセス発表会」と名付けて最終月に開催しないかと、進行中のサクセスプログラムの初月タイミングでクライアントに提案してみました。そうすると意外にも「いいですね。やりましょう!」と良い反応をいただけたのでした。

後から振り返ってですが、この背景には上長の方も他部署のマネジャーなどから「あのツール入れてみてどうだった?」と言われることが多いという状況も追い風になっているなと感じています。しかしなかなか自分からそういう会をやろうと部下に言い出すのも負担をかけるようで難しい。そういう場面でこういうご提案が出来たのが良かったのかなと。進行資料やテンプレアジェンダは用意しているので思考負荷をなるべく低くして進められるように工夫もしました。

この発表会が設定されると、担当者様の実行力が段違いで上がりました(笑)。人前で発表する機会というのはこんなにも人を変えるんだなということを肌に染みて実感。考えてみればそれもそのはずで、普段から自分の業務について何か発表することってそもそも無いですからね。これでサクセスプログラムもVer2に進化します。

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実演ベース×何回も言う「個別伴走」の大切さ(Pair support)

ここまでくればかなり進んでいるのですが最後に立ちはだかる壁が、使いこなせるようになるためのフィードバックでした。実は2ヶ月目の相談パートは最初は関係者全員でお打ち合わせ形式でやっていたのですが、実はこれがあまり上手くいっていませんでした。全体的な事象として「まだうまく使いこなせていないんです」という話が出てきてしまうのです。こういう場では話が抽象的になってしまい、具体的な改善策が浮かび上がりづらくなります。

でも実際に一人ひとりに個別に事情をお伺いし、実際にツールをどう使っているか見せてもらうと問題はすぐに浮き彫りになりました。担当者ご本人でも意識できていないことなのですが、例えばUSERGRAMでいうと個票を見るスピードが早すぎるとか行動の絞り込みがされていないとか、そういう無自覚的な行動に原因があったのです。

これはご本人も言語化できていないので、当然ヒアリングしても出てきません。ツールを使っている様子を実演していただくしかありません。ただ多くの場合、そこに問題が潜んでいるというのが経験則ベースで私の感じていることです(本人の意識の2ステップほど前に本当の課題は存在する、というのが私の持論です)。

なので活用にあたっての問題を浮き彫りにするには、ツールの使い方を実演してもらう、そしてそのためには集団で行うのではなく個別に行うのが理想です。一見手間がかかるように見えますが、集団で1時間ミーティングするよりも、15分ずつ4名の方にツールを使っていただくほうが、はるかにインプットや改善へのつながり度合いは高いので、コストがかかり過ぎるという印象はありません。

そしてもう1つ重要なのが「オンボーディングプログラムから見てアドバンスな内容を伝える」のではなく「オンボーディングで伝えたことと全く同じことを繰り返し伝える」ということです。これは最初の試行錯誤から学んだことで、オンボーディングプログラムで伝えたことが、クライアントに伝わってると過信しない、浸透していない前提を持つという教訓からきています。

オンボーディングプログラムではツールを活用する上で基礎的な内容をお伝えしていますが、この基礎こそが肝心要なのです。基礎を疎かにして応用はありません。最も大切なこの基礎にフォーカスしてしつこいくらい繰り返し同じことをフィードバックすることはとても大切です。

カスタマーサクセス担当者からすると何回も同じことを言っているのですが、3回目くらいにして担当者様から「えーそんなこと出来るんだー!もっと早く言ってくださいよー笑」と言われることは少なくありません。

これは何も担当者様が不真面目という話では全く無く、およそ人間のコミュニケーションとはそういうものであるということなのです。「10伝えたら、3が伝わり1が実行に繋がる」と言われますがまさにその通りでして。伝わるためには聞く側に受け入れる準備が出来ている、ということが大切なのですが、多くの場合これが満たされていないのです。

個別伴走のポイントをまとめると「1. 個別に、2.実演してもらって、3.オンボーディングと同じ内容でもくり返し伝える」がフィードバックの要諦となります。以上でサクセスプログラムの現時点バージョンのものが成り立っています。

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サクセスプログラムの実施結果と効果

このVer3のサクセスプログラムに移行して3ヶ月くらいが経過しているのですが、現時点ですが、発表会まで実施した企業では100%成果が創出されている状態です。オンボーディング後の実施カバー率についても7割程度の状況。(もちろん全ての状況をカバーできていないので、そこは今後の課題と認識しています。)

私も実際このサクセス発表会に参加しているのですが面白いのは参加人数。当初「まあ色々声かけても7~8名くらいですかね」と上長様が言っていても、結果的には大体どの企業でも15〜25名の方が参加されています。それだけSaaSを導入するということへの注目が社内であるのかなと。

そして何より「自企業でこう使われている」という事例が社内浸透に最も有効であるという当たり前の事実を改めて強く認識しました。良く他社事例を紹介して下さいって話はありますが、結局は自社で活用した事例が一番強いし、社内の利用拡大も基本的にはそこからだなと。この発表会だと具体的な成果も共有されるので社内浸透への効果もかなり実感しています。

この取り組みを通じて思ったこと

具体的なHowはさておきなのですがこの

「成長支援のGPO」
①目標共有(Goal

②個別伴走(Pair support)
③機会提供(Opportunity)

の枠組みはカスタマーサクセスに限らず、割と汎用手的な概念じゃないかなと思っています。

2019-12-02 10_45_58-PowerPoint スライド ショー - [Advent Calendar記事画像]

例えば教育業界だとしたら

■教育業界のGPO例
Goal:東大合格
Pair support:授業の後は問題を解いてもらい間違えたところ中心に指導
Opportunity:東大模試に申し込んでもらう

スポーツ業界だとしたら

■マラソンのGPO例
Goal:42.195kmで3時間30分を切る
Pair support:日々のタイムを見てアドバイス
Opportunity:3ヶ月後の筑波マラソンに応募

いわるゆビジネスの人材育成だとしても

■人材育成でのGPO例
Goal:事業長のポジションを任せられる人材になる
Pair support:日々の意思決定へのFB
Opportunity:カスタマーサクセス部でチャーンレート目標達成のミッションを担ってもらう

みたいな感じかなと。もし参考になれば幸いです。

今後の課題

2020年は成果創出のサクセスプログラムの進化とその先にある組織定着をどう支援するかが重要論点になってくると思っています。サクセスプログラムも一旦型化しているとはいえ課題は多く

・サクセスプログラムの型にはまらない企業をどう支援するか
・機会提供は本当に発表会が適切なのか
・目標の変化にどうアジャストしていくか

といった点は継続的に検討が必要です。そしてその先にある定着についても

・成果から定着にどう繋ぐか
・日常業務への組み込みをどのように行うべきか
・どのタイミングでそれを提案すべきか

などなど、課題は多いです。来年もまだ見ぬ先の世界を夢見て挑戦と泥臭い日々の試行錯誤を続けていきたいと思います。

2019/12/29追記

2019/12/17のWELCOME!!2020 LT&PARTY - CS HACK #39 で、本取り組みを踏まえてさらに一歩進んだ内容をお話しました!当日使用したスライドは下記よりどうぞ!

気づいたら1万字超えの大作になっていましたが、ここまでお読みいただきましてありがとうございました!Twitterでも日々カスタマーサクセスの取り組みを発信していますのでフォローくださいませ。


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