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占領下の抵抗(注xxx)[沖山光「占領下における魂の雄たけび」より]
石森延男と共に、戦後最後の国定国語教科書の作成に携わった沖山光は「占領下における魂の雄たけび」の中で
終戦と共に石森先生を残してあと数人の国語の監修官はすべて追放処分。
国語教育は、思想育成につながることは、進駐軍の検討ずみのことである。だからこそヒューマニストの石森先生だけが追放の処置から除かれている。
これからの教科書で育っていく青少年の日本人としての自負は、国語教科書によって培われていく。このことは、何よりも進駐軍当局が知りぬいている。だからこそ、国語の監修官をねこそぎにしたのである。
と当時の状況を述べた後
全知全能を傾けて、日本の子どもたちに、日本のことばを通して、日本人としての心情を培っていかなければならない。何としてもこの焼土から立ち上がってもらわなければならない。
とその意気込みを語っている。
その後も
町行く進駐軍の兵士たちにガムをねだるような子どもたちに、何としても日本人としての自負を芽生えさせてやらなければならない。
焼土の中に芽生えた草のように、咲き出た一輪の花のように、根強く生きるのだ。自分のことばを失ってはいけない。明るいきれいな日本語。これを忘れてはいけない。
と力強い言葉が続く。
その上で後段では占領軍の民間情報局との難しい交渉について触れた後
世人は、占領によって、すべてのものがアメリカの押しつけであると言う人もあるが、ここに私が取りあげた一シーンをもってしても、アメリカは決して押しつけてきたのではない。お互いに良識ある文化人として、誠意をもって接し合ったのである。まことに文化の闘いである。こちらが善戦善処すれば、相手もまた然りである。あとに何のしこりも残さない。
と述べている。
ここにはGHQと対峙した良識ある日本の知識人層の姿勢と心持ちがよく現れている。
引用文献: 石森延男国語教育選集第二巻
昭和53年(1978年)9月10日発行
著者: 石森延男
発行所: 光村図書出版株式会社
引用個所は
【解説】「占領下における魂の雄たけび」沖山光
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この記事は↓の論考に付した注です。本文中の(xxx)より、ここへ繋がるようになっています。