逆説のSales Led Growth
はじめまして。Magic Momentという会社で、インサイドセールスだったり、フィールドセールスだったり、マーケだったりを担当している渡邊と申します。
Magic Momentでは、毎日全社員がその日あった気づきや思ったことをdaily-reportという場でシェアしあっているのですが、たまたま思いついたこのフレーズを投稿したところ、「いいじゃん、noteにしてみよ!」という声をいただけたので、記事にしてみようと思います。
そもそも、Sales Led Growthって何?
今年の10月、Product Led Growthという本が出版されました。この本で述べられている手法は、ものすごく簡単にいうと「プロダクトでプロダクトを売る」という新しい戦略で、zoomやslack、docusignなどたくさんのスタートアップがこの手法を取り入れ成長を実現してきました。SaaSが加熱している日本ですが、これまで日本に入ってきた「TheModel」のような手法は「セールスがプロダクトを売る」ということを前提にしており、その意味でまったく対局にある考え方となります。この2つの手法を「Product Led Growth(以下PLG)」vs 「Sales Led Growth(以下SLG)」として対比的に表現しているわけです。詳しくは弊社メディアAccelにてご紹介しているので興味のある方は一読ください。
そりゃPLGかっけえ、こんな感じでスマートにやりたい!ってなりますよね。実際、めちゃくちゃ素晴らしい手法論だと思います。一方で、SLGはなんだか、古臭いような、泥臭いような、そんなイメージ。僕たちはずっとこのやり方でやってきたのに、いっきに時代遅れにされたような、そんな感覚さえ抱いてしまいますね。うう。。
Product Led Growthの素晴らしいところと、限界
PLGにはたくさんの素晴らしい点があります。まず、CAC(顧客獲得コスト)が低いというのは全てにおいて善ですね。とくにバーンを常に意識しなくてはいけない僕らスタートアップはもちろんですが、大企業においても、新規事業の継続ジャッジにおいて、ユニットエコノミクスは最重要検証項目のひとつだからです。PLGを採用することで、社内の各ロールの関心事は、まず第一にプロダクトとなり、それだけUXは加速度的に進化していきます。また、セールスチームに依存しない販売戦略を組むことができるため、採用・育成のコストと期間をすっ飛ばしてグローバル展開することだって可能です。
ただ、本書にも書かれていますが、市場浸透状況によってPLGでの成長が向いていない場合もあります。
そして、もう一つ重要なポイントは、テックタッチロータッチでカスタマーがプロダクトを使えるようになるまでには、多大な開発コストがかかるということ。
少し古いデータとの比較になり恐縮ですが、VC投資額の1社平均は、米国と日本で約3倍の開きがあります。このデータだけで語るのは少々乱暴ですが、米国スタートアップは日本のスタートアップの3倍の投資をしてPLG志向のプロダクト開発をすることだって可能なわけです。
レッドオーシャンで戦うことが向いているPLG戦略において、投資額はもろに競争力に直結します。故に、投資額を得にくい日本国内のプレイヤーは米国の資金力のあるスタートアップに駆逐されやすい構造となってしまうわけです。
新しい世界を見せ、顧客の習慣を変えるには、人の力が必要である
僕は新卒からの8年間、リクルートという会社に所属しており、そのほとんどを営業畑で過ごしました。退職した今でも強く思うのは、リクルートは世界最高レベルのSales Led Growthカンパニーだと思います。オンラインHR事業(IndeedとGrassdoor)が異常な成長で牽引をしていますが、これは出木場さん(現リクルートHDCEO)がそのエッセンスを注入した結果だと思っています。大量の社員を採用し、エリアにくまなく(今だとTheMODEL型の戦略も含めて)競合には不可能なレベルで張り巡らして営業を行っていく。事業の価値を明確にし、「顧客への提供価値」と「事業成長(売上)」と「社員の成長」を独自のカルチャーで本当に上手く結びつけながら、マーケットを塗り替えていける凄さがこの会社にはありました。ロマンとそろばんとも言ったりしますね。
新卒の入社面接の時に、ある方に言われたこと。
僕の入社年次は2013年で、この話を聞いたときは正直なところ意味不明だと思ったのですが(笑)、しかも社内の人という聞き方をして、自分の話をするのがリクルートらしいですねw でも、今思い返すとこの話にはとても凄みがあります。入社後、僕が所属していたリクルートライフスタイルというカンパニーでは、旅行・美容・飲食を中心とした各メディア事業でネット予約機能を推進していました。そして、飲食事業ではなんとIpadを各店舗に配り、店舗にネット予約機能の使用を習慣化してもらう土台をつくっていったのです。そして、営業とサポートスタッフで、ネット予約が当たり前になった世界について理解をしてもらい、丁寧に、丁寧に、顧客のビジネスオペレーションの中にネット予約を埋め込んでいったのです。ああ、顧客の習慣をつくるってのは、ここまでの泥臭い伴走が必要なんだと思ったわけです。
競合メディアに先駆け、圧倒的な人の力で顧客の習慣をつくっていくこと。習慣になっていくと、ある時点で、おもしろいくらい成果が伸びている状態になっていることに顧客は気づきます。一度気づいてしまえば、あとは顧客は自走してくれ、もうプロダクトを手放せなくなる。
たくさんの人が関わり、オペレーションというものが存在するtoBの領域では、顧客が自分たちの習慣を変えていくのには大きなストレスとなります。顧客と一緒に新しい世界を見て、圧倒的な投資で丁寧に伴走をして、ビジネスゴールを達成してもらう。そしてこれを各事業でお付き合いをしている数万社のSMB顧客に対して実行できてしまう。これこそがリクルートのSales Led Growthの凄みなんじゃないかと思うわけです。世界を変えるって、こういうことだなって。
だけど、人の力だけでは、もうコストが見合わない時代
じゃあ、それを各社ができんのかい、っていう話ですが。営業職の年収は480~560万程度と言われています。ですから、各種保険や、オフィス・通信費などの経費を含めると1人あたり650~700万程度のコストが発生しているわけです。これにコストセンターとなるコーポレートや開発の人件費と、原材料やサーバー代など、原価を賄えるだけの稼ぎでいうと、数倍の売上が必要となるわけですね。
一方、SaaS全盛期の今においては、費用に対する見方もシビアになっています。色々なメトリクスが一般化され、顧客がリーズナブルと感じる金額もどんどん下がっていきます。
だからって、甘美なPLGを成長戦略に据え置き、未成熟なプロダクトでそれを実行しようとすれば、結果的に多大な営業・サポート工数がかかり、新規獲得のピュアセールスタイムは奪われ、単価も取れず、あっという間にバーンアウトしてしまうわけです。だから、本当に慎重に戦略を選ぶ必要があるというわけです。じゃあ、どうすればいいか。
結局、営業成果をあげるには、突き詰めていくと量×質に収斂する
普段、たくさんのお客様とお話をさせていただいていただく中で、一つ明確に思っていることがあります。どんなポジションの、どんな役割の方とお話しさせていただいても、ユニットやモジュールの組み合わせは色々あれど、結局どうなってるの?を繰り返して行った先に、面白いほど量と質の話に収斂していくのです。10インプットして1になるビジネスと、10インプットして5になるビジネスと、転換効率は違えど、インプットが0のビジネスはありえないし、どう10を20にするか、どう転換効率をあげるかでしかないのです。
AorBではなく、AかつBを目指そう
そして、先述の人を増やすというドライバーを簡単にいじれないなかで、営業一人の活動量と質をどう上げていくかという論点になるのですが、かならずここでみなさんに思考に2つのバイアスがかかっています。
「量と質はトレードオフである」「量は簡単には増えない」
という2つです。でもこれ、本当にそうですか?
営業は普段たくさんのツールを使い、さまざまなコミュニケーションを行なっています。日々CRMに(使われないデータも含めて)大量の記録を行います。メール・電話・チャット・TV会議、、、色々なツールを縦横無尽に使いこなしています。そして、このコミュニケーションの密度は人によってバラバラです。
””質の高いコミュニケーションを、テクノロジーの力で大量に、
しかも全員が同じ密度で実行できたら。””
これを実現できるのが、我々のプロダクト「Magic Moment Playbook」であり、顧客とのエンゲージメントを中心に据えた新しい営業のカタチです。顧客との構造化された合意形成のモデルを磨いていきながら、シーケンス機能で大量の付加価値が高い1to1コミュニケーションが可能になる。これまでトレードオフと考えられてきた量と質の両立が可能になるから、非連続な営業成果をあげることができます。
そして、すでにLINEさんとの取り組みでは10倍の成果を創出しています。
余談ですが、弊社同様、DCMベンチャーズからの投資を受けている「10X」さん。僕はこの社名がすごい好きなんですが、とってもいい言葉をblogの中で書かれていました。「10xから逆算する」って、めちゃいいですよね。
一つ一つのドライバを、本当に所与なのか?と疑ってかかる。非連続な成長をはじめから志向していくということは、手なりの未来ではないワクワクした世界をつくっていける、重要な考え方だと思うのです。
逆説的だけど、SLGが世界を変えていく
そんなわけで、PLGがもてはやされている中であっても、いつだって世界をリードして変えてきたのは泥臭くSLGを実行できる会社で、SLGこそがこの国の景色とビジネスを大きく変えていくと僕は信じています。
テクノロジーのおかげで、従来の手法とは全く違うレベルの量と質で、僕らは営業という仕事の可能性をもっともっと広げることができる。
日本のたくさんの素敵なビジネスを、営業の力で広めていって、素敵な未来へいち早く近づくために、一緒に時代のネジを巻けると思い僕はこの会社にジョインしました。
世界を変えたい事業者の方、ぜひご相談ください。
そんなアツいお客様と世界を変えるべく、一緒に時代のネジを巻いてくれる方、ぜひMagic Momentの門戸を叩いてください。