地元へUターンしたWebディレクターが実際に肌で感じた、地方のWeb制作の特徴と魅力
私は今から約2年前に、首都圏から北海道へUターンし、地方のWeb制作会社へ転職したWebディレクターです。
先月で自身のディレクターとしてのキャリアの1つの節目がありましたので、この1年半での地方での制作経験を整理することにしました。
今回は、私自身が肌で感じた地方のWeb制作の特徴と魅力について、自分の記録として執筆していきます。
①地方のWeb制作の特徴
1.自社サイトのリニューアルや新規制作のご依頼が多い
地方の制作会社のクライアントの特徴として、首都圏にある大企業からの依頼というより、地方の中小企業さまからのご依頼が多い印象でした。
キャンペーンやランディングページの制作もありましたが、割合としては「自社サイトをリニューアルしたい、新しく自社サイトを設立したい」といったご依頼が多かった印象です。
ヒアリングを進めていくと、クライアントの要望には明確な数値目標はなく、「採用を強化したい」「自社の情報を社外発信できるようにしたい」など、会社を社外へアピールすることが目的でした。
その結果、制作メンバー側としては、「クライアントの会社の特徴をとらえ、らしさをサイト上で表現し、ブランディングすること」が主な制作の共通認識でした。
2.Webサイト制作の規模は小さめ
地方の中小企業におけるWebサイト制作へ割ける予算は、あまり多くありません。
そのため、サイト自体のコンテンツも少なめに、CMSの機能も必要最低限の機能で制作を進めることが多かったです。
クライアントの要望を的確にとらえ、独自性があり、らしさを表現することが、制作クオリティにも直結しました。
地方では、大規模Webサイト構築を行うようなクライアントは少ないので、制作体制としても「ディレクター・デザイナー・エンジニア」各1人ずつの合計3人で制作することが多かったです。
制作に関わる人数が限られていることで、「デザインをこう工夫できないか」「アニメーションの表現はこんな感じで動かせないか」など、サイトの企画段階やワイヤーフレームを作成する時点で気軽に相談でき、1つ1つのサイトにこだわりを詰め込んだ制作を進めることができました。
サイトの規模が小さいことで、制作の軌道修正や調整もしやすく、小回りのきく制作に携わることができると感じました。
3.ディレクターが企画から公開後のサポートまでを対応する
これは一概に地方だけというより、人材がいるかどうかによるかと思います。
首都圏よりも人材が常に不足している地方では、「エンジニアは実装全般」「デザイナーはページデザイン(+たまに設計も)」といった明確な作業区分けができる職種以外の作業は、すべてディレクターが行うことになります。
ヒアリングから改修内容の提案、プランニング
社内の制作工数管理
プロジェクトの進行とスケジュールの管理
会議の計画、ファシリテーション、合意形成
現行サイトの調査
サイトの要件定義
サイトの各ページのワイヤーフレーム作成
各ページの原稿ライティング
デザインのご説明、実装ページのご説明
(撮影があれば)撮影コンテ、香盤表作成、当日のディレクション
ページの動作検証
公開前のサーバー準備、ドメイン契約
公開時の対応
CMSの操作マニュアルの作成
GAやGoogle Search Consoleなど、外部ツールの選定と導入
公開後の運用サポート、保守対応
細かいタスクを出そうと思えばもっと多くの作業工程がありますが、
1つのコーポレートサイトを制作するだけでも、ディレクターの業務領域は多岐にわたっています。
これに加えて社内の制作品質を担保したり、外注をしている場合は外注先とのコミュニケーションも発生します。
プロジェクトマネージャー、プランナー、テスター、ライター、マーケターなど、その領域における明確なプロと一緒にプロジェクトができる時は安心して特定領域をお任せできますが、このような人材は地方には中々いないことがわかりました。
単に制作の進行管理だけを得意とするディレクターは、地方の制作会社では活躍しきれない状態になっているのが現実です。
②地方のWeb制作における魅力
首都圏の大規模制作と地方の小規模制作、どちらも経験させていただいたことで、それぞれの特徴を捉えつつも、地方のWeb制作特有の魅力も色々と知ることができました。
1.社長や経営層と直接コミュニケーションを取りやすい
地方のWeb制作で1番驚いたのは、クライアントのフロントが社長や経営層であることが多いということです。
コーポレートサイト制作であれば社長や経営層から「自社でこういった課題がある」「こんなことを解決したい」という要望を直接お伺いできます。
こういったお話をいただきながらものづくりを進めることができるので、制作していくWebサイトが「思っていたものと違う」というズレは予防しながら進めることができます。
クライアントの抱える課題を直球で受け止めて制作を進めることで、制作の妥協がなくなる分、求められるハードルは高くなりがちですが、そのハードルをクライアントと一緒に超えた瞬間のやりがいは、地方Web制作における大きな魅力だと思います。
一方、大口の制作案件であれば、クライアントの一部署担当者とのやり取りがメインになり、社内事情も考慮した上で進行する必要があります。
また、担当者の方と順調に進んでいた場合にも、その後、社内からの鶴の一声で、今まで制作していたものがひっくり返ったりもします。
そういった意味でも、地方のWeb制作はクライアント内の社内事情に振り回されず、「二人三脚をしながら制作を進めやすい=最終的なWebサイトのクオリティも向上させやすい」と言えます。
2.クオリティアップに全力で取り組める
コーポレートサイトの構築の場合、「らしさ」の表現を取り入れるために、より詳しくクライアントへヒアリングしたり、制作メンバーとアイディアを出し合ったりするスケジュール調整の余地が多くありました。
首都圏よりも時間の流れが遅いと言われる地方ですが、「先に決めた公開日を守る」よりも「納得するものができあがってから公開したい」という思いを抱えているクライアントが多いと感じました。
クオリティの妥協は一切できないので、制作メンバーで工夫をこらしながら、クライアントが思い描くWebサイトのあるべき姿を模索しつつ、制作を進める難易度の高さは、大規模Webサイトの構築では味わえない体験でした。
まとめ
今回は、地元に帰ってきてから実際に肌で感じた1年半の経験を簡単に執筆しました。
地方のWeb制作で感じた課題については次回、執筆しようと思います。
次の記事はこちらです。
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