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9年の恋にケリをつけた話

2018年の9月、4年付き合った彼女にフラれた。
大学1年生の2012年の秋頃から好きになって、2年生の夏に告ったけどフラれて、諦めきれず3年生の秋にもう一度告ってようやく付き合えた、俺には勿体ない、とても美人で気の利く彼女だった。

俺はとても彼女が好きだった。別れたくなかったが彼女の意思は固く、どうしようもなかった。


当然復縁を目指した。ネットの情報を鵜呑みにして3ヶ月の冷却期間を置いた後、彼女に連絡した。
それから数ヶ月から半年に一回くらいは会って食事に付き合ってくれるが、基本的には仕事が忙しいと断られていた。そもそも別れた理由の一つがそれなのだ。

周りの友人は新しい恋を見つけろと言う。それはそうなのかもしれない。

友達に紹介してもらったり、あまり気乗りはしなかったがマッチングアプリをやったり、たまたま職場に営業に来てた人が同じ大学出身だったのでご飯に誘ったりした。
中には良いなと思える人もいたし、向こうから積極的に誘ってくれる人もいた。
でもなかなか好きになれない。どこかに彼女の面影を求めてしまい、この人ではないとなってしまう。

そんなことを繰り返してる内に2年経った、2020年9月。彼女の家の鍵はまだ俺の家にあった。別れた時に返すのを忘れてしまっていたのだ、当然俺の家の鍵も向こうにある。

返さなければならない。俺はまだ彼女が忘れられないでいた。
色んな女の子と食事行ったり遊び行ったりしてもなかなか切り替え切れなかった要因の一つに、もしかして頑張ればワンチャン復縁できるんじゃないかって思いが根底に有ったからだ。
返す時に想いを告げよう、ドン引かれるかもしれないけど、やれることはやってスッキリしたい。
でもいきなりまた付き合ってくれって言っても勝率は限りなく0に等しい。
そもそもまともに連絡を取ってないのだ。正確にはLINEを送っても1、2往復したところで向こうから返ってこなくなる。

鍵を返したい、ついでに食事でもどうかというと彼女は了承してくれた。
会うのは1年以上振りだったと思う。焼肉に行った。会って話すととても楽しかった、家族の話、部活の友だちの話、仕事の話。
大学時代一番長く一緒にいた人だ、共有してきた時間は誰よりも多い。

その帰りに、俺はまだ君が好きだ、いきなり付き合ってくれとは言わないから、また大学時代みたいに一緒に食事に行ったり遊び行ったりして欲しいと伝えた。

彼女はそれならと言ってくれた。テンションはぶち上がり、マッチングアプリは速攻で消した。

大学時代のまんまとは言わないけど、LINEの頻度も少し増えたし、ライブに行ったりマザー牧場に行ったりした。
でもイマイチぎこちなかった。大学時代、付き合ってた時ってどう話してたんだっけ。食事だけなら普通に楽しく話せたのに。

12月に職場の看護師さんに教えてもらったお洒落なレストランに行き、そこではとても楽しく話せた。
誕生日プレゼントも重いかもしれないけど紅茶のティーバッグをあげた。
もうここで勝負に出たい。年明けの2021年1月にまた食事に誘ったが緊急事態宣言や、彼女の年度末年度始めは忙しいとの理由で全く会えなくなってしまった。
まぁ忙しいのは本当だと思う、でもそもそも会う時間を作ろうと思えない程度の相手なんだろうなって、薄々わかってはいたがそれを改めて実感した。

結局5月になり、大学時代の友人の結婚式で再会した。
とは言えこの時はほとんど話せなかった、席が遠かったのもあるけど、意図的に避けられてるところもあるような。
もうダメっぽいなとは思っていたけど、その数日後に彼女からLINEで結婚式の動画作成お疲れ様!って来た。
たったそれだけのLINEなのに、俺はそれがとても嬉しかった。
こういうところなんだよ、彼女の好きなのは。


しばらくしてまた食事に誘った、7月なら都合が合うとのことだったので、また職場の看護師さんに聞いたオシャレなレストランに行った。
昨年の12月以来、半年以上ぶりの2人での会話。
とても楽しかった、食事の量が思ったより多過ぎて2人で腹パンパンになって苦しいねって笑いながら帰った。

その帰りに、去年も言ったけど俺はまだ君が好きだ。お互いがお互いに居て良かったなと思える関係を作りたい、その為ならなんだって頑張ってやると伝えた。
彼女は困惑していた、どう断ろうか考えていたのだろう。
彼女は自分に自信がないから相手を幸せに出来るかわからない、仕事が忙しくて余裕がないと言った。

僕は食い下がったが、しばらく考えさせてと負けを無理やり引き分けに持ち込んだ形でその日は解散となった。

僕は連絡を待った。
その間に5月に結婚した友人が新築の家を建てたので遊びに行った。
家庭を持つということはとても大変なことなのだろうけど、彼はとても幸せそうだった。
俺は何してるんだろうなって考えてた。


2週間経っても何も連絡が無いので、こちらからちょこちょこ何でもないLINEを送ったりしていたが、一向に返事をくれる様子がない。

もう察しろってことなんだろうと思った。相談していた人は切り替えろと言う。

でも俺はハッキリと言葉で言って欲しかった、ダメならダメと。そうしないと、自分の気持ちにケリがつけられなかった。

しかし7月の食事から1ヶ月半経っても返事はない。僕の心は折れかけていた。
その折に高校の友達の結婚式があり、奥さんとの幸せそうな様子と、いつまでも元カノに固執し、返事すら貰えていない自分とのギャップがとてもキツかった。

もう切り替えた方が良いだろう、いやでも言葉での返事が欲しい…と思考が纏まらないウチにマッチングアプリを再インストールしていた。

そんな時にブドウを大量に貰った。とても1人で食い切れる量ではない。
これも良い機会だ、彼女に連絡して少し貰ってもらおう、その時に返事も聞けないだろうかと。

ゴメン、ブドウは好きじゃないと来た。4年付き合ってて好き嫌いはある程度分かっていたはずだったが、これは知らなかった。
でも会う予定は立てたい、いい加減ケリをつけたい。
9月に食事でもどうとLINEを送るとパタリと返事が途絶えた。

どの道ブドウは誰かに貰って欲しい。
そこで思いついたのが高校の時の部活の同期の女の子が近くにいたので、その子に連絡して会うことになった。

2年ぶりに会ったその子は変わってなかった。高校の時に俺が付き合っていた子でもある。当時から若干不思議キャラだったが今も変わりない。
その子と話すのはとても楽しかった。どうやら少し前に病気で入院していたらしい、その時に君に連絡しようか迷ったと言われて少しドキッとした。
なんかこのままこの子とまた遊んだりとかして、また付き合ったりとかも有りなのかもななんて考えた、烏滸がましいけど。

それから本屋にちょっと寄ったりとかしてぶらついた後、その子と別れて駅の改札を抜けて歩いていると、二度見した。
前から歩いてきたその人は彼女だった。
一気に心拍数が上がり、胸がキュッと締め付けられて、ハッとさせられた。
さっきまで会ってた子も元カノということになるが、こんな胸を締め付けられる感覚にはならなかったし、安心感はあったがドキドキはそんなにしなかった。


お前が好きなのはこの人なんだぞと言われている気がした。

しかし彼女はこちらに気づいている様子も無く、俺もLINEが返ってきてない気まずさから声をかけられなかった。
なんでこのタイミングですれ違うんだ、今まで一度も無かったのに。
何で俺は声をかけることも出来なかったんだ、なんで…

その日の夜に、一軒家を建てた友達に子供が産まれたとLINEが来た。
祝福の気持ちは勿論ある、でもそれが純度100%だったかと言うとそうでもなかったように思えて自分が嫌いになる


その翌日、彼女からLINEが来た。

ごめん、やっぱり付き合えないから2人では会えない。


終わった。
覚悟はしていたので、凹みはするがスッキリした気持ちの方が大きい。

分かった、今までありがとう。またどこかで会おうねと返した。


うん、こちらこそありがとう。迷惑かけてごめんね、君ならもっと素敵な人見つかるよと返ってきた。


そうじゃない、君が良かったんだ。君より素敵な人なんて本当に居るのかななんて思って苦笑いして、ありがとうと返した。

俺は結局彼女のことを理解しきれてなかったのかもしれない、だから悲しませることもあったし、支えきれなくて別れることになったし、復縁も出来なかったのだろう。


片想いの2年間、恋人としての4年間、未練の3年間。
合計9年間。俺の人生の三分の一。
喪失感は大きい。
けどこれからの人生の方が長い。
いつかこの長かった恋を良い思い出として語れるように、前を向いて生きていきたい。

翌朝は久々の秋晴れで、ベランダのハイビスカスが綺麗な花を咲かせていた。

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