精神科医の外来マニュアル
本日は、精神科医は何をしているのか、精神科医や心理士は何をしているのか、それをAIに落とし込むとき、プログラミングに落とし込むときにどういうものが必要なのか、ということをお話しします。
難しい話になるので、プロ向けの要素もあるので、いつもとは少し変わった動画なんですけど、最後まで見ていただけると精神医学のことがよくわかるかなと思います。
僕が外来でどんな感じで患者さんを診ているのか、どういう風な話の展開に持ち込んでいるのかということをお話しします。
◾️困りごと、原因、解決策
まず最初に、オープンクエスチョンで、何に困ってますか?症状はどうですか?今どういうことで困ってますか?と聞くんです。
この時に聞くことは何かというと、今の症状から診断は合っているのか、薬の副作用はあるのか、ないのか、薬の変更は必要か、そういうことを聞きます。
医学的な問題なのか、それとも精神疾患ではなくて内科的な問題なのか、精神科の臨床の問題なのか、薬の副作用なのか、そうなのじゃないのか、そういうことを最初に判断します。
患者さんというのは、基本的には主観的な情報を伝えてくるんです。
これは本人が悲観的に見すぎているな、情報を精査して客観的なデータに移し替えるという作業も必要なんです。
バイアスに支配されてないデータとして処理しなおす必要があるので、そういうことも頭の中でやっています。
結局、この腹痛は何なのか、食中毒の腹痛なのか、いや腹痛ではなくて実は心臓の痛みなんだけど腹痛として感知してるのか、他の感染症なのか、それとも心因的な腹痛なのか、ストレスから来る急性胃腸炎なのか。
こういうものは、色々な時系列やその他の随伴症状、色々なものを加味して決めたりしていますけれども、そういうことをやったりします。 ここの第一段階で薬を使うか使わないかで終わってしまう診療、ここで診療が終わるパターンの精神科医も多いのかなと思います。
じゃああなたはこの薬でいいですね、というお薬外来とは、ここで終わってしまうパターンです。
次の段階で、例えば初診から6ヶ月以上経っいたりすれば、手帳を取るのか、お金がいよいよ無いときは年金を取るのか、生活保護を導入するのか、環境調整はここでも行うかなと思います、福祉導入、福祉・環境調整というのを。
福祉・環境調整まできてたら医者としてはいいのかなと僕は思います。
ただ、もうちょっと踏み込んでいく、精神療法的なことをガッツリやるとなると、次の段階に移るんです。
ではこの症状が起きている時に、内科的な問題や薬の副作用ではなく、精神疾患から来てる場合は、何かしらの問題があって、ストレスや心身の疲労がたまり、今の症状が出ていたりするんです。
今の困り事を解決していかなければいけないので、症状に対しては薬で緩和したり、環境調整をするんですけど、今の困り事の問題がある場合があります。
そもそも今の困り事は何なの?と、あなたは今何で困ってるの?ということを聞きます。
本人がこれとこれとこれですと言える時は次に移るし、言えない場合は、じゃあ何があなたの問題なのかということを要素分解して解明していくということが必要です。
例えば7つのワークという形で、人生における7つの領域、お金の悩み、健康の悩み、家族の悩み、友人恋人の悩み、趣味の悩み、学びについて、仕事の悩み、色々あるんですけど、そういうものに分けて要素分解していきつつ、どこにその人が今悩みを抱えてるのかと判明させたり、24時間の記録をつけてもらう。
それを1週間、2週間分つけてもらって、どこの生活習慣、どういう時間の使い方をしてるから問題なのかを明らかにしていくということをします。
それに合わせて、次はどういう解決策が取れるのかということを考えます。
それは色々なプランがあると思うんですけど、こんなのわかってるよ、自分でできます、と言う人がいるんですけど、実際自分ではやらないですよ。
僕も片付けがわかってるけどできないし、言われないとできない。
僕もわかってるけど、見てくれる人がいないとできなかったりしたんです。
僕、医師国家試験の時に勉強しなかったんですよ。
僕らというか僕は、防衛医大でも成績悪い組で、僕はできることは結構できるんですけど、できないことは本当にできないという凸凹人間なんです、能力的にも。 暗記がめちゃくちゃ苦手で、全然覚えられないんです。
骨の名前とか筋肉の名前とか、薬の名前とか全然覚えられなくて、成績はそんなよくなかったんですけど。
僕だけじゃなくて成績悪いやつは結構いて。
そういう人たちは閉じ込められるんですよ、学習しろ部屋みたいなところに。
最近もあるかどうかわかんないですけど、当時、20年くらい前はそんなのがあって、相互監視なので、何時から何時までそこにいなさいよということで、宣言させられて勉強するんですけど、国試対策の人に。
今日は何ページやります、と言うんだけど、これもまあそういうのと似てますね。
だから別に誰が偉いとか誰が悪いとかではなくて、そういうのと一緒で、一回可視化する、しっかり可視化してやるべきことをやるということが大事だし、プランA、プランB、プランCと立てて、その中でそれぞれメリット、デメリットがありますから、どれをやるかを一緒に考えてみることがあります。
多くの患者さんたちというのは、たった一回の人生だから、デメリットの存在しない、メリットしか存在しないウルトラQみたいな解決策があると考えがちですけど、そんなものはないです。
ここら辺は結局問題を特定できているのであれば、AIの活用がすごく良くて、AIに答えを要素分解してもらう、AIに解決策を提案してもらう。
その中でどれがいいか考えるというのが大事です。
それぞれメリット、デメリットがあると。 AIをよく使えない人、意味がないという人は、このwhyやhowをうまく使ってないんです。
なぜこういう風に考えましたか? それはどのようにやるんですか?ということを繰り返ししつこく聞くということをしてなかったりします。
ストレスなのか問題解決なのか。
どういうストレスも感じてますか?これもAIが使えます、今の時点で。
◾️認知・モデルの歪みは?
そもそもこういうことをやれない、ストレスの原因がはっきりしない、問題解決策が提示できない場合は、認知やモデルの歪みというのがあるんです。
世界とはこういうものである、人間とはこういうものであるということの世界観に歪みがある。
ストレスの原因や問題解決策が特定できたり、第三者が特定できたり提案されても受け入れがたいんです。
精神科というのは基本的に、一番最初は妄想との付き合い方から始まっているんです。
自分たちは正しいと思ってるけれども、どうやら違っている。
その人は正しいと確信してるんだけど、どうやら周りの人が違うと言ってる。
そういうときに、どうやって自分はこれは妄想なんだと気付き、間違いなんだと気付き、周囲の人に合わせられるかというのが精神科の始まりなんです、そもそもが。
それこそその後、色々な病気のことがわかってきたりして、統合失調症であれば、妄想だった、普通のトラウマだったら、それは妄想ではなくて忘れがたい記憶の問題だった、発達障害の人であれば、それは特殊な妄想とかではなくて、この人たちの特殊な認知の仕方なんだ、部分的な知的な障害の問題だったんだ、という形で理解のあり方や解決策は変わってくるんですけど、基本的にはいかに自分が間違ってることに気付けるか、そしてそれをその間違った世界モデル、世界観を修正し、相反する矛盾した条件を組み込んで拡張していけるのか、陰謀論になるのでもなく、世界観をすり替えるのではなく、右から左に平行移動するのではなく、矛盾した世界観の二つを内包した大きい世界観にできるかというのが治療なんです。
このモデルの歪みを特定し、修正していくのがいいです。
じゃあどういう風に修正していくのかというゴールは、基本的には美徳というものを意識した方がいいんです。
日本人であれば、仕方がない、仏教的な世界観、禅、そういう我々の常識というか、カルチャーの中でうっすら残っている美徳というものを追求することが結論としては望ましいです。
それはなぜかというと、美徳というものの中にあらゆるエッセンスが詰まっているし、そして美徳を追求していくということは他人からも評価されやすいし、受け入れられやすいんです。
だから原則はそこを目指すというのが全部いいんです。
結局どんな論文読んだって美徳に近づくんです。
その研究者のバイアスというのもあるのかもしれないけれども、基本的には美徳を目指すという形で問題ないわけですね。
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