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幸福とは何か|精神科医目線で語ります

本日は「幸福とは何か」というテーマでお話しします。

よく臨床では、結局本人が幸せだったらいいよね、自分が幸せだったらいいんですよね、と患者さんが言うことが多いんです。

そういうことを言って、話や議論を切り上げちゃうことが多くて。

それは何も生み出さなかったりするんです。

幸福とは何かという議論は自分の価値観、自分を知る上で大事なんだけど、そこに囚われすぎても仕方ないかなという風に思ってしまうことが多いです。

結局、精神科臨床ではストレスが無くなってうつが良くなればいいので、幸福であることを目指すところではないんです。

つまり、何か問題があってストレスが溜まり症状が出るので、この問題をどうやって解決するのか、ストレスの原因となる問題をどうやって解決するのか、そしてこの問題を生み出してる認知の歪みは何か、その認知の歪みを生み出している元々の背景にある生い立ちの問題とは何か、自分の特性とは何かを理解することが重要であって、幸福な状態を目指そうとしてるものではないんです。

問題解決をしていってストレスがなくなれば、ここの症状がなくなるんですけど、それが幸福かというとそういうわけではなくて、ただ激しい感情や不安には襲われていない状態ということになるんです。

それを幸福と言えばいいのかもしれないですけど。

激しい不安に襲われてなくて、うつじゃなくて、ご飯が食べられていたら幸福なんだと言えば、それを僕らは幸福と言ってますよと言うかもしれないですけど、でもそれだと何となく世間が思う幸福とは意味が違うかなという気もします。

とにかく僕らは幸福についてそんなに多くは語らないし、スマホがあるから幸福でなくなった、こういう価値観だから幸福じゃない、もうあまり言わないんですけれども、よく皆さんが気になる話題だと思うので、精神科医目線で話してみます。


◾️よく言われる幸福を満たす条件

幸福とは何かとは精神医学とはちょっと離れたところで議論をされていて、ウェルビーイングに関する問題として企業内で研究されていることもあれば、大学で研究されてることも多いです。

ウェルビーイングに関して言うと、経済的な問題とも深く関わってきているので、割と研究するのに資金不足ということはないなとは思っています。

だいたいよく言われてる幸福を満たす条件というのがあって、例えばこの5つが挙げられたりします。

つまり
①人間関係が良くて社会的なサポートを得られてる状態であること、そして
②経済的な安定性、雇用の安定性があること、
③本人の心身が健康状態であること、
④文化的など価値観の要素が確立されていること、文化的にも合致したような立場におり文化的社会的な承認が満たされてること、
⑤EQが高い人、感情コントロールがうまくいってる人ほど幸福だよみたいな言い方をしたりします。

よく言われていることとしては、マズローの欲求の5段階説もよく言われます。 生理的な欲求が満たされる(飢餓などの問題がない)、安全の欲求(社会的に安全である、犯罪に巻き込まれない)、所属の欲求(仕事がしっかりしてる、地域の仲間に含まれてる、孤立していない)、そして承認欲求(人が認めてくれている)、で自己実現欲求(自分のやりたいことがやれてる)、この5段階説があって、下から満たされていくと言ってたりしますけど、それもまた一つの幸福の見方ではありますけどね。

◾️社会的立場によっても異なる

結局色々言いますけど、あとは全部大事だし、社会的立場によっても異なるんです。

例えば子どもの時に幸せを感じる時はプレゼント買ってもらったり、ゲームしてる時だったりするけど、大人になってからはちょっと違うし。

若いうちはお金がいっぱいある、人から愛されてる、異性にモテるということが幸せの条件かもしれないけれども、もうちょっと上になってくると、モテるよりも会社で出世してる、社会的立場があるということかもしれないし。

さらに上になって50~60代になってくると、社会的立場があるとかいうよりも、そういうのが好きな人もいますよ、権力が好きな人もいるけれども、どちらかというと家族の仲がいい、自分自身の健康の問題が満たされてる、そういうことだったりします。

70代以降は社会的な成功よりも孤立してないことの方が重要だったりするので、その時々で、立場によって重視する項目や幸福を満たす上でよりポイントが高いものというのは変わったりします。

あとは周囲の人によっても異なるんです。

周りの人が自分よりお金を持ってると、やっぱりもっと欲しいなってなるだろうし、逆に自分だけが飛び抜けてお金を持ってると寂しい、共感してくれない、色々あったりするし、嫉妬と共感というか、どれくらい相手と近いのか、近すぎると嫉妬してしまうし、離れすぎると今度は共感してもらえないし、ここら辺のバランスというのもあるなとは思います。 それらは常に変動性があるので、今幸せな状況であっても次の瞬間にはそうじゃなくなることもあったりするというのが、人間の脳みその構造上そうなってるよという感じはしますけど。

重要なところというか、精神科的に重視される側面として、EQというか感情コントロールの問題というのは大事だなと思って、臨床では、どうやったらこの人が感情をコントロールする力が高まるのかということを重視したりします。 EQが高い、感情コントロール能力が高いというのは、わかりやすく言い換えれば仕方がないなと思えること、ああ、こういう人もいるよな、仕方ないな、こういう仕事だったんだな、今回は仕方なかったな、ツイてなかったな、と思って次に切り返していくということです。

◾️仕方ないことはいっぱいある

仕方ないことっていっぱいあるんです。

この前も色々話して質問されて、家買って失敗しちゃったんですけど、どうしたら良いですか?みたいな、旦那さんが騙されて変な家買っちゃったんですけど、どうしたらいいんでしょう?と言われたこともありますけど、いや仕方ないね、と。

僕に聞かれても、僕、別に不動産屋でもなんでもなくて、ただの町の精神科医なのでわかんないので、仕方がないと思って何かいい感じで高く売れたらいいんじゃないですか、としか言えないです。

でもまあ仕方がないと思うことですよね。

その時にその人に言ったことは、いや、でも医者なんてしょっちゅう騙されてますよ、みたいなことです。 医者はしょっちゅう変な不動産を買わされてるし。

僕も見る目がないので、絶対騙されるという自信があるんで買わないんですけど。

みんな騙されてるから。

みんなじゃないですけど、多くの人が変なもの買ってしまっているるのでアレですけど、あるあると言えばあるあるですね。

お医者さんだからいいじゃないかと言われたら、そうなのかもしれない。

そうと言えばそうなんですけどね。

私たちと一緒にしないでくださいと言われたら、アレかもしれないですけど、ありますね。

仕方がないと思えるようにするための学びだったり、向き合いだったり、身体を動かすなどのトレーニングだったりするかなと思います。

こういう風に自分はと思うかもしれないけど、他の人も騙されてるんだよね、こういうケースで騙されたよね、こういうケースだと他の人が騙されたことあるらしいよみたいな、学びによって世界観を広げてあげる、世界ってこうなんだという解像度を上げてあげる。

他の人がどうやって向き合ったのかを学んで、自分でも向き合ってみて、この問題というのは、結局、家を買うのもそうですけど、前例がないことなので、ある種、自分で臨機応変に試行錯誤しながら解決策に到達しなければいけないので、向き合ってやってみるということです。

結局、人生というのは、ここに来たら、何か解決したらもうアガリみたいな形で、上がってるからもう不安やトラウマもない世界なんだというものではなくて、絶えず不安やトラウマを抱えたり解決しながら問題解決を繰り返していき、寿命が尽きたらサヨナラみたいな世界なので、どうしてもそういうことを思いたくないですけど、あそこまでいったら楽になるんだと思いたいですよ、思いたいけど、あそこまで行ってもまた次の、ちょっと休憩したらまた次のレースが始まるだけなので、あまり無理せずに程々の勢いで頑張るのが一番いいんじゃないかなと思います。

よく言うのはコンフォートゾーンとラーニングゾーンとパニックゾーンという言い方をして、楽すぎず苦しすぎない、ちょうどいい感じの場所を維持しながらやっていくのがいいよと言われてますけど、本当にそうです。

幸福という上がりみたいな状況を目指すのではなくて、どうやって自分がラーニングゾーンを維持できていられるのか、少しでも前進していけるのかということを考えていくというのがいいのかなと思います。

ということで、今回は幸福とは何かというテーマでお話ししました。

◾️本日の宿題

皆さんの幸福についてもちょっと教えていただけたらなと思います。 それが宿題ですね。

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