📚小説感想文「落日」by湊かなえ
久しぶりに小説を読んだので、感想文を書きます!
図書館で何気なく手に取ったのは、
「落日」by 湊かなえ
湊かなえさんの作品はこれまでそこそこ読んでいる。読みやすいし、物語を通じて、何か考えさせられる内容が多い。
落日というなんだか切ないタイトルにも興味惹かれた。
【ストーリー】
新人脚本家の甲斐千尋は、世界の映画祭で受賞した映画監督長谷部香から、新作の相談を受ける。香は『笹塚町一家殺害事件』を題材にしたいという。この事件は、15年前に、引きこもりの男性が自宅で高校生の妹を殺害後、放火して両親も死なせてしまった事件で、判決も確定している。笹塚町は千尋の生まれ故郷である。
香は、なぜこの事件を作品化したいと思ったのか。また、千尋は、この依頼を通じて、自身の問題とも向き合うこととなる。
千尋と香は、正しいかわからぬまま、それぞれの「真実」を求める。行き着いた真実は、探究者に救いを与えるものなのか? また、それを作品とすることはどのような意味を持つのか?「表現」とは何なのか・・・。
【感想】
・エピソード形式で書かれていて、エピソードごとに話者が千尋か香に構成されている。登場人物に慣れていないはじめの方は、話者の入れ替わりにちょっと戸惑ってしまったが、慣れてしまえば、気にならない。
・香の知りたいことと、千尋が対峙すべきことは、関連していた。はじめの方は、そのように結びつけることはできなくて、全く別の事柄と考えていたため、読む速度は遅かった。しかし、物語の点と点が繋がり、線となったのを読み取ったときから読むスピードが一気に上がった。面白くなったのだ。
小説は、特に、この先、どうなるんだろう感の強さが、読むスピードに影響する。
・湊かなえさんの表現力でなるほど、というところがたくさんある。作詞にとても役立つ。例えば「目だけが笑っていない笑顔で言った」、うまい! そして、怖い、この笑顔。
・脚本家としての自覚を向上させるべく、師匠から千尋に向けられたセリフが印象に残ったので引用します。
表現するには、想像しただけでは足りないことがある。自分で確かめて、リアルに追いつく。そこから想像力で追い越す。その工程を踏むことが、「表現すること」に繋がる。
表現の土台として五感で体験したものに勝るものはない、それはそう。ただ、これでは不十分で、想像力をトッピングするイメージ。
確かに、空想に想像力をプラスしても意味がなさそう。
しかし、体験に想像力をプラスできれば理解が得られそう。
最後、ちょっと哲学的になってしまった。
これ、うまく感想として伝わっていますでしょうか。。
「的確に表現すること」は、誠に難しい。。