『秒速5センチメートル』感想雑記
昔見た時は秒速って切ない話だなと思ってたけど改めて見るとそれだけじゃなく解放感のあるエンドだよな
新海の描く男女はいつも織姫と彦星なんだよな。
二つの円環がすれ違う瞬間と離れる瞬間の物語で秒速はその二人の距離(スピード)が小さなズレとなって文字通り秒速5センチメートルで進んでいってまたすれ違う瞬間の時間(スピード)を季節と歳月でもって描かれてる。桜の花びらの落ちるスピードは心が近づいていく速さでもあり離れていく速さでもある。
時間や距離と一緒に描かれるのがロケット。
コスモナウトの二人は実は同じなんだよね。
ただ二人ともロケット同様遠い目的地を目指す孤独な旅人のようなもので見えていても届かない(届くかもしれない)相手をただ焦がれて歩く平行線。
つまり桜の描かれる前後話と違って二人は円ではなく直線なんだ。
星ではなく星を目指すロケットは周回せず真っ直ぐ飛んでいく、劇中のロケット打ち上げが二人の心のメタファーなんだ。星が巡りくる円環、つまり会いたい人と会える物語は心の中に閉じ込められていてそれを外に出したくても出せないストーリー。
ラブストーリーってのは出会った二人が色々あって結ばれる、つまりスタートとゴールが同じ位置にある「円」の物語なんだ。
この作品における二人はそれぞれが少しズレた「星」だから円と円が触れ合う瞬間は点であり始まりであり終わりであり刹那的なんだ。
これが桜のメタファーであり秒速5センチメートルとは劇中における二人と二人の間にあるすべての距離や時間を表してるんだ。