紀州へら竿体験記#0
突然思い立って、和歌山県橋本市に降り立った。人生初の和歌山上陸。
竿職人の仕事を体験するために来た。
ここは紀州へら竿の産地。
私の釣り経験は釣り堀で釣った魚を唐揚げにして食べたことが数年前。その魚が何だったかも知らなかったけど、おいしかったことは今も舌が記憶している。そもそも釣れたっけ?釣りの印象がない。自分が釣りをすることには関心がない。
釣りに興味のない自分が、今回の体験申込みをした自分にとても驚いている。
ただ、釣りが好きな人がなぜ好きなのか不思議には思っていた。
それと、和竿が伝統工芸に指定されていることもずっと気になっていた。
それこそ、釣りを知らないからこそ気になることであった。釣り堀の竹竿しか知らなかったから、伝統工芸に指定されるほどの精巧さが気になる。
そもそも竹という素材に大きな関心がある。
かごや家具だけじゃなく、布や紙の原料にもなり、生活のあらゆるところで重宝されそうな竹は成長も早くサステナブルな素材。昭和に入りプラスチックに代替され、日用品から消えてしまった竹製品は多いけど、これから再び生活の中に取り込んでいきたい。だから何らかの形で竹の産業に携わりたいと思いはじめていた。
そんな時矢先に見つけた和竿作り体験の募集。
考えていた竹産業とは少し違うような気がしたけど、竹製品の中で最極シンプルな道具だからこそ、竹の持ち味を十二分に生かした機能性持っているはず、竹を知るにはうってつけの体験かもしれない。そう思ったのだ。
この体験は、和歌山県のお試し体験移住の企画の1つ。釣りにも和歌山移住にも特別強い関心があるわけではなかったのが申し訳ないくらいだが、すんなり受け入れてくれた。この機会に和歌山を知ろうではないか!
まずは、当日までにできる下調べをと思い、長年渓流釣りを愛する友人に連絡した。案の定、髪の毛坂立ててびっくりされた。釣りの「つ」の字も出したことがないのだもの当然だ。
(そもそも彼女が釣りをしにニュージーランドへ行くほど魅了されているというのも、今回の体験参加の引き金になっている。)
いろいろ教えてくれた。カーボンロッドと竹竿の手応えの違いや、竹竿のパーツ1つ1つの手の込みようはまさに工芸品であること。だから高価なものになってしまうし使って折れると相当悲しいから、釣り好きでもなかなか手が出せない。全国各地にあった産地もずいぶん縮小している。
釣りにまつわる中国の古い諺に
一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。
永遠に、幸せになりたかったら・・・ 釣りを覚えなさい。
とあるのだとか。
「永遠に。。。⁉️」ほんまかい!釣りってどんだけすごいんだ?
釣り文化資料館の存在も教えてくれた。
週刊つりニュースという会社にあるこの資料館では、途絶えてしまったであろう貴重な釣り道具の技がじっくり見ることができた。竿だけではない。網や糸巻き、浮きの数々はアクセサリーのような美しいものばかりだった。釣りの道具っていろんな技術がつまっている気がする。工芸品の美術館にきたように楽しめた。夏には隣接スペースに本屋がオープンするらしい。ここはまた行こうと思う。
橋本に行って確かめたいこと、いろいろ出てきた。
体験に臨む準備はできた。