病気になるって悪いことじゃない。
新型コロナウイルス感染症の変異株が感染力を強めていく中、どんなに対策を徹底しようと防げないこともあります。症状はこれまでより軽いとも聞きますが、高齢者や基礎疾患を抱えている人は重症化する傾向があることも分かっているため、侮れません。だからといって家の中にじっと閉じこもっていては、思考力も低下して鬱になってしまいます。こればっかりは自己判断で対処していくより他ありませんが、病気になるってそんなに悪いことなのでしょうか?半年前から限局性強皮症という自己免疫不全の難病を発症して闘病している6歳の息子を育てる母として、最近起こった出来事から考えたことを振り返ります。
おくすりを飲むということ
「顔がむくむ、他に炎症が起きる、症状が悪化する、発熱、体がだるい、のどが渇く、便が黒い、胃周辺通、気持ちが高ぶる・ふさぐ、けいれん、背中や腰が痛い、手足のしびれ・痛み、目が見えにくい、頭痛、胸が痛い、発疹等の症状が現れたら、医師・薬剤師に相談して下さい。」という副作用の説明があるおくすりを、息子は毎日服用しています。
いわゆるステロイド剤で、副腎皮質ホルモンで炎症やアレルギー症状を改善して症状を抑える効果があります。これだけの注意書きを見ると、本当に大丈夫なのか不安になります。「そんなに体に良くないくすりなんて直ぐにやめて、別の方法をあたった方がいいよ。ちょっと高額だけど、○○というのを摂取するといいらしいよ。」と親身になってアドバイスしてくれる友人もいます。それは有難いことですが、今優先すべきは病気の進行をいち早く止めること、なぜなら今の医学では進んでしまった病変を元に戻すことは出来ないからです。息子が気にしている頭部の脱毛と顔面が少しずつ変形していくことをなんとかして止めてあげたいのです。
幸い、てんかんの発作など脳への影響は出ていないので、とりあえずは即効性のあるステロイド剤を投入して徐々に減らしながら、日本発の生物学的製剤であるアクテムラという免疫抑制剤の点滴静注を続けていくことが今の日本の最前線の治療法と信じて、息子を全力で支えていこうと思っています。
背中に髪の毛生えてるよ
ステロイドを服用すると、あっという間に息子の外見に変化がみられました。そして、ついこの前、6年間通った保育園の卒園間近になって、息子から「おまえ、背中に髪の毛生えてんじゃん!」と、仲良しだったお友達に少し前に言われたことを教えてもらいました。その子には「ハゲ!」とも言われていたらしく、「違うよ、そういう病気なんだよ。」と言い返しても無視されたそうです。とてもショックでした。実際、子供達の間でどんなやり取りがあったのか、息子の言うことだけで判断することはできませんが、こんな時はどうやって守ってあげたらいいのか、しばらく悩みました。
多毛とムーンフェイスは「ハゲ!」を止めるための、おくすりの影響です。でも、そんなことを未就学児に言ってもわかるわけがないし、その子だって悪気はなくて、ちょっとからかう程度に言ったのかもしれません。それでも、その子の口をどうにかして塞ぎたいと思っていたら、その子のお母さんがお迎えに来ているところにタイミングよく遭遇しました。
「〇〇君ママ~、すみません。ちょっと○○君のことでお話したいんですけど、、、うちの子、○○君からハゲ!とか、背中に髪の毛生えてるって言われたみたいなんですが、実は免疫不全の難病を発症して治療中でして・・・○○君とはとても仲良しで慕っていたから、うちの子が気にしていたことを言われてショックだったみたいなんです。でもね、○○君に言われて良かったじゃないって言いました。ずっと仲良く一緒に過ごしてきたから、○○君の良いところもいっぱい知ってるし、他の知らない子に言われるよりも良かったの。○○君に言われたことで、うちの子も病気を受け入れて治療に向き合うきっかけになったので、どうか○○君を叱らないでくださいね。」
フゥゥーッッ。。。言ってしまいました。。。ごめんなさい。。。
それを聞いていた○○君は、ママに悪いことを告げ口されたようで、オドオド、息子もなんとなく気まずそうにしていました。果たしてこれで良かったのか、そうやって親が介入していくことで守ってあげるしかないのか、この問題はこれから待ち受けている小学校生活でもぶち当たることなので、お世話になっている病院の子ども療養支援士さんに相談してみました。
子ども療養支援士さんは、対話や遊びを用いて、療養中の子どもたちの不安やストレスを軽くする支援を行う専門家で、北米ではチャイルド・ライフ・スペシャリスト、英国ではホスピタル・プレイ・スペシャリストと呼ばれ、「小児医療に不可欠な存在」となっています。子どもと家族が本来持つ力を発揮しながら病気や治療に立ち向かえるように、子どもたちと同じ目線に立ってサポートしてくれるお助けマンで、日本では2021年時点で全国20施設の医療機関に僅か23名しかいないという貴重な存在です。
子どもの可能性を奪わないために
「予防線は張りすぎないほうがいいですよ。息子さんの病気のことや薬の副作用のことを事細かに言っても、まだ小1レベルには理解できません。ただ、これから治療があって学校を休むことが出てくるけど、だからといって皆と何ら変わりはなく、同じように出来る子だよってことが伝えられたらいいですね。病気に対して悪いイメージを持ってほしくはないです。」
これまでの治療で幾度となく助けられてきた子ども療養支援士さんからの賢明なアドバイスに、ふっと力抜けました。これから息子が通う小学校と学童保育所の先生からも投げかけられていた、病を持つ子をどう扱えばいいのかという問題に対して、今の時点で最良と思える答えが見つかりました。
私は構えすぎていました。自己免疫疾患の原因は不明と言われても、息子にこんな辛い思いをさせているのは私のせいだから、何としてもこの子を守っていかねばと、病気=ネガティブ思考で守りに入ろうとする己の立場を改めなければいけないと思いました。
子どもの可能性は「無限大」です。あれもダメ、これもダメと前に出て予防線を張りすぎて可能性を奪ってしまう過保護で心配性の母ではなく、我が子が自分の力でなんとか進んでいこうとする姿をじっと見守っていかねばならない、彼が困ったときは直ぐに助けが呼べる距離を保ちながら、躓いた時は一緒に悩んだり、考えたりして、ひとつひとつクリアしていける母になりたい、そう思いながら入学準備に追われています。
補助輪が外れるのはもう少し先になりそうです(笑)
つづく