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どこか懐かしく、温かい街「尾道」の魅力④
「高野豆腐店の春」という映画
急いでチケットを買い、静かにシアターに入るとまだ予告の上映中で何とか間に合った。
真っ暗でどの席が空いているのかわからなかったが、恐る恐る入り口近くの席に腰掛けた。
冒頭、藤竜也さん演じる豆腐店の店主と麻生久美子さん演じる娘の春が豆乳を飲むシーンから始まった。
うん、わかる、この作品わたし好きだわ。
舞台は尾道の豆腐店。"高野豆腐"の店ではなく高野(たかの)さんちの豆腐店である。
この作品の何がよかったかって、私が感じている尾道の良さをぎゅっと凝縮して映像化してくれていたところだ。
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まず、人とのつながり。
職人気質で頑固な父・辰雄であるが、どこか愛らしく人情味があり近所の人からも愛されているようだった。
自身の病気をきっかけに、早くして離婚した一人娘の春を一人にさせまいと急遽お見合い相手を探すことになる。
昔ながらの商店街仲間たちに頼んで選りすぐりの男たちを集めてもらったり、春に自然な出会いを演出するために神社でオジサンたちが演劇部の高校生に演技指導を受けたり…。
とにかく、商店街仲間のつながりが家族みたいに温かくて、助け合っていていいなぁと思った。
実際に尾道商店街でもご近所の店主同士が外で立ち話をしている光景をよく見ていた。
そうしたことから、きっと尾道は人と人とのつながりを大事にする人が多いのではないかと感じていた。
ロケ地はもちろん尾道。
ついさっきまで見ていた商店街や尾道水道が出てきてなんとも贅沢な気分であった。
ハッキリとした起承転結があるわけではないけれど、クスッと笑えるシーンだったり、ゆったりと流れていく時間そのものがこの尾道でみる作品としてまさにふさわしいと思えた。
そして役者陣が全員素晴らしく、とくに藤竜也さんと中村久美さんの演技は何度も泣いてしまった。
戦争についても少し触れるシーンがあって。
尾道に来る前、広島で原爆ドームをみたのだが、当然尾道にも被害に遭われた方がいるのだ。
ついつい自分のなかでそれを忘れてしまっていたのが許せなくて、どうしようもない気持ちになった。
映画の中で「戦争を経験したからこそ、人のつながりを大事にする人が多いのかもしれない」的なニュアンスのセリフがあった(うろ覚えで申し訳ない)
本当にその通りだ。
たとえ夫婦でなくても、家族でなくても、血がつながっていなくても、関係ない。
困っているときはみんなで支え合う。そんな雰囲気があるのが尾道だ。
そんなことを考えながら涙が止まらない。
困った。こんなに映画で泣いたのは幼少期にみた「クイール」以来かもしれない。
そしたら隣から同じく鼻水を啜る音が聞こえてきたので、私も遠慮なく泣いた。
エンドロール。久々にいい映画を観た。ハリーポッターのような誰もが認める大作も素晴らしいけれど、なんだかんだ私はこういう邦画が好きなんだなぁと思った。
シアターが明るくなると、思ったよりたくさんの人がいた。若い人から年配の方まで。平日の昼間だけど、みんな仕事はどうしてんだろう、など余計なことを考えてしまった。
トイレに入って鏡を見るとビックリするくらい目がパンパンの自分の顔が映り、笑った。
トイレから出ると、ロビーには交換日記のようなノートがある。
私も何か記録したいと思い、この作品の感想を残した。
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本当はこの後に海が見えるあの喫茶店に行く予定だったが、時間もギリギリなうえ、海を見たくなり、映画の余韻に浸りながら暫く尾道水道でボーッとしていた。
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あぁ、いい作品に出会えた日というのはいつも以上に風景がドラマチックに見えたりして気分がいい。
そんなことを考えていたら30分以上経っていた。