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short/short(小噺まとめ

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少しほっこりするショートショートをまとめてみました
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記事一覧

暗殺者はフリーサイトの先で待つ

 暗殺者は苦笑いしていた。  決められた給与の中で適当に仕事をするくらいならやめてやる。…

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眠れない夜

 消灯。  ベッドに横たわったまま、ぐでんと腕を伸ばし、それでも届かない電灯のスイッチを…

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至高の瞬間

玄関のドアを開くと、そこは暗闇に包まれていた。  いつもここまで届いてくるテレビの音は無…

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きっと、これはとても不合理的な感情だ。何かを間違えるたびに、何かに苛立つたびに、原因を探してそれを批難する。許せないものに構っている時間など無いというのに、自分の足を引っ張るものを水面の上まで引き上げて怒りをぶつける。切り離していけば楽になるものを人はわざわざ引きずっていく。

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百億の日

 電光板を見上げて、すぐに腕時計に目をやった。  七時十分。既に駅のホームには人の列が出…

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魔法のアイコトバ

「おじさん。アタリ引いたからもう一個ちょーだい」  駄菓子を買うと、ごくごく稀まれに“ア…

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月夜の踊り子

 棒アイスに齧かじり付きたくなるような、蒸し暑い夜だ。というか、齧り付いている真っ最中である。  ポケットから出てきた小銭が丁度アイス一本分だったのは、ついていたというべきか、これだけかと嘆くべきか。それはわからないが、汗ばんだ体に水とお茶しか入れないというのはストレスがたまって仕方がなかったので、アイスが食べられてよかったというのは確かである。  さて。じきに短針が八を示そうというわけだが、残念なことにJCである私はまだ学校から離れることが出来ない。訂正。中学生である私

青天飛び交う蝉の羽根。彼らの声を聞けば、葉月に記録された僕らの記憶が蘇る。毎年こうして思い出が脳裏を過ぎるのは、ここにあの夏の自分が保存されているからなんじゃないかなぁ、なんて。

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突然の豪雨。梅雨も明け、ようやく猛暑がやってくる。疫病に畏れるこんな毎日にあっても、夏はやってくる。

4

少女と犬

 狭い道だった。  ペットのテリーの好奇心に任せて進むこと約五分。帰り道にしてはやけに冒…

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