介護記録⑬ 父の肝内胆管癌
昇任待機期間満了を迎える2022(令和4)年12月、年度末を控え所長との年末ヒアリング。まだまだ介護の終わりは見えず、昇任は見送るつもりでいたところ、昇任すべきとのアドバイスを受けた。やってダメなら降任するもあり、今回断ると今後は主任ですらいられなくなる可能性もあると説明された。実力があるのだから挑戦すべきと持ち上げられた。夫と相談させて欲しいとして時間をもらった。かなりよく考えて自分なりにシミュレーションはしてみた。父と母の2人を同時に介護しながら、残業やら休日出勤やらをこなせるだろうか。所長に「周りがサポートするから大丈夫だよ。」と言われ押されるがまま、なるようになるのか…?「やってみます。」と言ってしまった。しくじったなぁ。
2023(令和5)年になり父は「食欲がない。」と食事を抜く事が増えた。「食べないと死んじゃうよ!」とまた怒ってしまった。栄養ゼリーやスポーツドリンクを少しでも摂取するようにお願いした。
1月26日デイサービス(MリハビリテーションO)の看護士から私の携帯に「黄疸が出ています。最近は元気もありません。」と連絡が入った。本人は特に不調を訴えてはいなかったのだが、28日にH病院消化器内科を受診した。この4年間の定期通院時の採血結果は、良くはないが悪くもならず横這い状態が続いていた。何かあったらいつでも良いからすぐに来院するよう言われていた。受付で体調変化による緊急受診である旨を伝えると、すぐにT主治医の診察と諸々の検査が始まった。画像検査の結果を伝えられた。「癌がかなり大きくなっており、肝臓が半分機能していない。8本ある胆管のうち5本の胆管が詰まっており、残りの3本も圧迫されて狭くなっている。胆汁の流れが悪くなり黄疸が出てしまったと思われる。」とのこと。即入院完全絶食となった。食事を取ることで胆汁が作られる。流れが悪くなっているためどんどんたまって苦しくなる。無理に食べさせてはいけないのに、「食べないと死んじゃうよ!」と叱っていた。無知とは恐ろしい。またもや本当にごめんなさい。
狭くなっている胆管にステントという筒状のものを挿入し、胆汁が流れるようにする腹腔鏡手術を受けることになった。それに伴う危険や説明をガッツリ聞かされ、またたくさんの書類に記入した。
手術は無事に成功した。しばしの絶食の後おもゆから始まり、少しずつ食事を開始。そして退院の目処がついた。父は実家に戻りたかったようだが、孤独死は避けたい。時間の経過とともに進行していく病であり、積極的治療をしないことにした訳だから、いつ何があってもおかしくはない。もう実家に一人で暮らすのは危険と判断し(さぁ大変、父母2人同時の在宅介護が始まる!)、事故物件になる前に私の家で一緒に暮らす決断をし、実家を処分することにした。レンタルベットをを引き上げてもらった。
不動産査定のサイトから数社に査定依頼をかけた。すぐにたくさんの連絡が入った。2社は机上査定のみで、3社は内見依頼だった。時間を作り立ち会った。各社とも「是非とも弊社にやらせてください!」とやる気満々だったが査定額はかなり渋かった。というのも、いわゆる旗竿地(接設道路が2m以下)のため建て替えができない土地だからだ。時を同じくして思いもよらない話が舞い込んで来た。【測量のお願い/株式会社M】という手紙が投函されていた。問い合わせてみると、公道に面した北側と西側数件をまとめて購入したいという買い主がいると言うのだ。この計画で売却が決まれば、他社が提示した査定額の倍で買い取ってくれると言う。この絶妙なタイミングでそんな上手い話あるのか?何で家を売りに出そうとしていること知ってんだ?何かの詐欺か?などとも思ったが、ネット検索ではきちんとした会社のようだった。周りの家々が同時に立ち退くことはまず無いだろうと思いながらも、ひとまずはその話に乗ることにした。そこから3ヵ月間の専任媒介契約を結び、内見した3社の一般媒介契約は5月まで一旦保留としてもらった。株式会社Mは近隣数件に購入の営業をかけたてくれたが、一軒も同意を得ることはできず、この話は敢えなく流れてしまった。超残念。
3月初旬、T主治医からそろそろ退院の日を決めましょう、と連絡が入った。父も母も小柄なため小さいベットに変更し、レイアウトも動線を考慮した配置に変更してもらった。自宅居室にまるで病室のような介護部屋が完成した。
6日、父が退院した。わざと知らん顔しているのかわからないが何となく母はご機嫌斜め。「何で居るんだ」とか「大変な事が起きてる」と怒っていたりした。父の夕食も母と同じ宅配弁当業者Hの柔らか食を頼むことにした。ここの味を父は気に入って「美味しいなぁ」と言ってニコニコ食べてくれた。朝は大好きな温かいカップそうめんやカップラーメン、カレーメシ、パン(甘い味)など歯がなくても食べやすいものを(昼は夫が)用意して食べてもらった。
退院して早々で申し訳なかったのだが、すぐにIS園と父のショートステイ契約をした。週末には父母2人とも預けて私達夫婦は息抜きをさせてもらうことにした。
父のショートステイ報告で、夜間のトイレが10回と記載されていた。以前から「夜中は1時間に1回間隔でトイレに行きたくなっちゃうんだよ、トイレが近くて困っちゃってさ。」と訴えていた。実際に同居が始まり、その異常な回数を体験した。1時間に5回、1晩で10回以上…。その度にガタガタ動き出すもんだからこちらも寝ていられない。私は明日も仕事だぜ。
3月15日H病院泌尿器科を受診した。加齢に伴う頻尿で、前立腺の大きさも年齢相応。「お薬で次第に良くなると思いますよ。」との診断で薬を処方され様子を見ることになった。次回前立腺がん検査の結果と薬の処方を受けるため4月4日に予約を取った。
デイサービスも再開。「良かった、みんな待ってましたよ!」と言ってもらったそうだ。歌が上手くて人気者だったから、スタッフや友人からも心配されていたようだ。
ショートステイとデイサービスであまり家でゆっくりできなかったかな。でも日中はほとんど寝ていたし、父専用に設置したテレビも【相撲】と【笑点】くらいしか見ていなかった。しかし長いこと1人で暮らしていた父にとっては、必ず誰かがいて食事の手配をしてくれて、安心して家族といられる、こんな日常が嬉しかったようだった。はっきりと言葉にはしていなかったけど、ありがとうってよく言ってくれるようになった。寂しい思いしてたのかな。
4月4日H病院泌尿器科受診。前立腺がん検査は陰性。5週間分の頻尿の薬を処方してもらったが、なかなか効果は現れなかった。もっと早く泌尿器科を受診させてあげれば良かった。結構前から「トイレが近くて困るんだよ。寝てもすぐ目が覚めちゃう。」と言ってたのにね。本当にまたもやごめんなさいだ。