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ドラゴンヘッドを読む(1)インドの神話をひもとく

〔筆者ブログで最も読まれたシリーズです。https://astrology.kslabo.work/2017/11/dragonhead1.htmlからの転載となります〕

近年「前世占い」と言えば『ドラゴンヘッド前世占い』が思い浮かぶほど、ドラゴンヘッド&テイルは西洋占星術でポピュラーな感受点となってきました。

しかし、ご存知の通り、ドラゴンヘッド&テイルを読む手法は現代の西洋占星術には伝わっていません。今ではインド占星術のみに伝わる手法です。
※実は西洋にも古代は輪廻転生思想がありました。後述

西洋占星術とインド占星術は源流は同じでも、宗教的な背景が大きく異なります。このため、西洋の人々がドラゴンヘッド&テイルを解釈する際に少し誤りが生じているようです。

ドラゴンヘッド&テイルの実践解釈の前に、このページでは「ドラゴンヘッド&テイルとは何か?」という基本と、西洋の人々の誤解について書きたいと思います。

ドラゴンヘッド・ドラゴンテイルとは何か


まず基本から。
「ドラゴンヘッド」・「ドラゴンテイル」は惑星ではなく、地球から見た太陽の軌道と月の軌道の交点です。
アセンダントなどと同じように、惑星に準じる扱いの「感受点」になります。

wikipediaパブリックドメインより https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lunar_eclipse_diagram-en.svg

この図では下の点(昇交点)が「ドラゴンヘッド」、上の点(降交点)が「ドラゴンテイル」です。後でご紹介するように、月の交点が竜の頭と尾に喩えられる伝説がもとになった呼び名です。

インド占星術ではそれぞれ、「ラーフ」と「ケートゥ」と呼びます。中国語では「羅睺」「計都」と書きますが、これは古代インド語の音をそのまま漢字で表記したもの。中国占星術に馴染みのある人でない限り分かりづらいし、発音しづらいので、日本で漢字表記する時は意訳にて「竜頭」「竜尾」と書くほうが一般的です。

英語圏では、ドラゴンヘッドを「ノースノード」、ドラゴンテイルを「サウスノード」と呼びます。英語から翻訳された占星術のテキストもこう訳していることが多いと思います。
(例外として、ジャン・スピラーの著書の日本語訳では「ドラゴンヘッド」「ドラゴンテイル」と表記されています)

「ノード(node)」は単に「交点」という意味です。実は月の交点以外にも「ノード」はあります。しかし占星術で月の交点以外が使われることはあまりないので、「ノード」と表記されていればそれは月の交点を意味することになります。

二つに分かれたドラゴン。悲劇としての輪廻


月の交点に「ドラゴン」の名が与えられているのは、インドに伝わるこのような神話が由来です。

昔、むかし。
天界へ忍び込んだ悪い竜が、神々だけが口にできる神秘の飲物“ソーマ”を盗み飲んでしまった。
その様子を見ていた太陽神と月神は、最高神ヴィシュヌ(ブラフマン)に竜の退治を頼んだ。
しかし“ソーマ”を飲むと不死になるため死ぬことがない。
ヴィシュヌ神は竜を二つに切り裂いたが、死ねない竜は頭と尾に分かれて生まれ変わった。
輪廻の輪を廻ることになった竜は太陽と月に怨みを持ち、この二つの星を飲み込んでしまおうと今でも追いかけているのだ。

文章は筆者による要約

この神話から分かるのは、ドラゴンヘッドとテイルが悲しみの輪を廻る不運を持つということです。だからインドではどちらも「凶星」と解釈されます。

西洋の人には分かりづらいようですが、東洋において輪廻転生はあくまでも「悲しみ」であり「不幸なこと」なのです。生まれ変わりという永遠の輪を抜けること(解脱)が至福であり、全ての魂の目標とされます。

欧米の占星術家たちの勘違い


冒頭に書いた通り、古代においては西洋でも輪廻転生思想が信じられていました。
と言うよりもむしろ、上の神話は西洋が起源ではないかと考えられます。何故なら輪廻転生を「悲しみ」と説くのは、かつて地中海沿岸で信仰された神秘主義と似ているからです。また、永遠の命を与える“ソーマ”という飲物は、古代ペルシャの宗教で使う飲料と同じ物だとされます。

当然、ドラゴンヘッド&テイルという感受点も古代においては西洋占星術で用いられていたと考えられます。

しかし西洋では約二千年前に誕生した一神教によって、輪廻転生思想は信じることも知識として持つことも禁じられました。
そのため二千年近く輪廻転生思想に関する知識を失っていた西洋人たちは、輪廻が「悲しみ」であることさえ忘れてしまったようです。

インド占星術では、ドラゴンヘッドを「過去世カルマの報い」、テイルは「過去世カルマの借り」と説きます。

この通り言葉にすると、まるでヘッドが吉でテイルが凶であるかのように感じられます。
近代、輪廻の知識を失った西洋人たちが初めてインド占星術に触れたときも、単純にそう理解したのでしょう。

また「罪業」と訳されたテイルは、キリスト教における「罪」と同じだと思ったのではないでしょうか。
それで「テイルは懺悔して贖わなければならない罪。悪いことをした前世」と解釈し、「今の人生でテイルの罪を悔い、幸福を受け取る場所であるヘッドを目指さなければならない」と解釈したのだと想像します。

明らかに西洋人たちの勘違いです。
しかし、この勘違いが今は一人歩きし、
「ドラゴンテイルは悪い前世の因縁。凶」
「ドラゴンヘッドは目指すべき未来。吉」
と解されています。

日本でも、「ドラゴンテイルは離れるべきカルマ。このカルマから解き放たれたなら幸せになれます。テイルを捨て、ヘッドを目指しましょう」と説く占星術師の先生方が増えてきました。
この勘違いは占星術の誤った知識を撒き散らしているだけではなく、実際の過去世を読むときも、今世の方向性を考えるときにも誤りをもたらすのではないかと思います。

>>(2)へ続きます。

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