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ピュリツァー賞作家だろうと、書くことは難しい。

毎年、年始の目標に
「noteを毎週更新する」
を掲げている。
それをもう三度も繰り返してきたのだが、一度も達成できずにいる。

なぜか。

書けないからだ。
どうしても。

書くことがないのではない。
書きたいことはある。
が、「書きたいように書けない」のである。

私がnoteに綴るのは、ほとんど読書感想文だ。
なので、本を読めば自動的に書きたいことは増える。
私は本を読みながらメモをつける習慣があるので、それを見返せば何かしら文章は紡げるはずなのである。

それなのに、一向に書けない。
パソコンを立ち上げ、noteの記事制作画面を開いても、ただカーソルがピコピコしているばかりで、一行も書けない。
書くべきことは、右手横のノートに書かれているはずなのに、それを何度読み返してみても、どう書き出せばいいのか、何を書くべきなのかがわからないのである。

一冊の本から得られる感情は、ひとつではない。複雑だ。
「おもしろかったー」から始まり、「あの男の人のセリフは切なかった」とか「こんな理不尽ってあり?!」とか、時には文学少女気取って「あのメタファーは良かった」だの「構成が素晴らしい」だの。
そういうものを、ひとつの文章にしてまとめ上げるなんて、考えただけで眩暈がしてくる。
出来ない出来ない、そんなん私には絶対無理!!!

そうこうしている間に、一週間はあっと言う間に過ぎてしまう。
果たして年末、今年の投稿数を数えてため息をつくのである。
「あー、今年は20本足りなかったか・・・」と。

そんなわけで、一年で一番最初に読む本は、いわゆる文章読本みたいなものが多い。
今年の私の書初めならぬ読初めは
『ピュリツァー賞作家が明かす ノンフィクションの技法』
(ジョン・マクフィー著 栗原 泉 翻訳 白水社)。
フィクションの書き方は何冊も机に並べているので、今年は真逆を行く作家の創作法を盗もうと試みたのだ。
きっと、これまでに読んだ文章術とは全然違った方法が書かれているはず。ひひひ、その技、盗ませていただきやすぜ!

ところが。
ノンフィクションだろうとなんだろうと、文章を書くことに大きな違いはなかった。
そこに綴られていたのは、
「文章を書くことは、つらく苦しい」ということ。
文章を無限に生み出す魔法のペンみたいなものは存在しないらしい。

何度書いても、迷う。惑う。竦む。
テーマが異なれば、構成も毎回変わる。
こうすれば絶対正解、というものはない。
ただ、自分の身に沸き上がる感情だけはホンモノだ。
これを書きたい。
でも、どうすれば? どうすれば伝わる???

そうやって、逡巡しているのだ。ピュリツァー賞作家が。
これではまるで、私じゃないか。

いやはやなんとも信じがたい。
天下のピュリツァー賞作家さまと、へっぽこnote書きの私とが、同じ悩みを抱えているだなんて。

さらに信じがたいのが、次の言葉である。

最初の原稿を書きながら、不安を感じるのは不思議でも何でもない。言葉と言葉を連ねていく自信がない、どうしても抜け出せないところにはまり込んでしまった、と感じるなら、また、絶対に切り抜けられない、こんな仕事は自分に向いていないと思い、書いてきたものがまったくの失敗作のように見えて完全な自信喪失に陥るなら、あなたは作家に違いない。

『ピュリツァー賞作家が明かす ノンフィクションの技法』

えええええ????
誤植ではないのでしょうか???
自信がないなら、作家に違いない、ですと???

ほんなら私、作家なんですか?
作家って名乗って構わないんですか?
作家って言うのは、この世のあらゆることを文章に落とし込むことのできる一部の天才のことを言うのではないのですか???

でもでも、先生。
私、書くことに自信がないどころか、書くことが怖いんです。
こんなことしていても無駄なんじゃないか、そもそも才能がないんじゃないかって、毎日思うのです。
そんで、書き続けられないんです。逃げてしまうんです。
どうしたらいいのでしょうか?

と、子曰く

執筆は、厳密にいえば自分磨きである。
競争相手は自分だ。執筆を通して自分を磨くのだ。

『ピュリツァー賞作家が明かす ノンフィクションの技法』


自分磨き・・・。
ああ、そうか。そうなのですね。
執筆は、筋トレなのですね!
苦しくて当然、しかし、やればやっただけ自分は磨かれると!

やばい。
もしこの方が壺とかお札とか売ってたら、私買ってしまうわ・・・。

この方、とにかく話がうまい。
書いてある内容がおもしろいのはもちろん、話の持って行き方、語り方が絶妙なのだ。ウィットに富んでいて、描写もリアル。
なので、ついつい惹きこまれてしまう。
こういう人が宗教活動を始めたら、とんでもない数の信者がつきそうだ。

文章を書く上でメンター本が欲しいという方には、ピッタリの一冊かもしれない。








最後までお付き合いいただきありがとうございます。 新しい本との出会いのきっかけになれればいいな。