この街の向こうのその向こう【10の話】欠けているなにか
傷痕が消えていく前に
またその傷をなぞる。
いつしか同級生の間では
あいつはキモいが
あいつはヤバいに変わっていった。
身体が成長していくあたしに
母親はモノを投げつけるようになった。
刃物をチラつかせて
いつの間にか自分と身長の
変わらなくなった娘に、力まかせで何かするのは
難しくなってきたのだろう。
だからといって、
母の何かが変わったわけではない。
母はずっと
どこかが欠けていた。
それはあたしも同じだった。
※この物語はフィクションです。
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