『ふたりはともだち』 アーノルド・ローベル
がまくんとかえるくんシリーズの中でも多分一番よく知られている一冊なのではないかと思います。なぜなら、『おてがみ』が一番最後にあるから。これは小学校の教科書にもあるおはなしだし、有名ですね。
ただ、思うのは、4日間しれっと何も知らせずに、おてがみくるんじゃないかなくらいなことを傍で言いながら、ずーっと待っていればよかったのではないかなと。なんですぐ言ってしまうかな。少し言いよどんだりすらしないっていうのはどうかな。まぁがまくんがおてがみ待つのやめたからとかそういう理由かもしれないけれど、それにしたって、ネタばらしするの早くないかいかえるくん。ほんっと、どうなの。もっとおはなしとしてはこうすればあぁすればと大人の都合目線がついつい働いてしまいますが、ふたりはピュア。あくまでピュア。ううううーん。
よくあるお話、特に子ども向けのよくあるおはなしというものは、大体において教育上都合よくできていて、あーやっぱりそうくるか、ふーんだろうと思ったよくらいのことを言いたくなるんですよ。でも、アーノルド・ローベルの本は違う。そもそもこれを子供向けの本だと言っていいのだろうか、と思う。つくづく、思う。これは子ども向けの本なの?この人たち結構けんかするよ?仲直りしないでおはなしおわることすらあるよ?でも大好きなんです、がまくんとかえるくんシリーズ。そんなところすら大好きなんです。このシリーズの絵は、渋いというかそういう雰囲気なのだけれど、にっこり笑ったり、怒って泣いたりわめいたりとにかく表現豊か。その中でも、ショボーンとしている口元が大好きです。
で、ですよ。私がこの本の中での一押し、『はるが きた』。この話、どこがそんなにと思うかもしれません。それやっちゃいかんだろってことを子ども向けの本でしれっとやっているところが大好きなんです。大好きな大事な友達に嘘はついちゃいけないと思うんです。が、しれっとうそをつきます。なんてことないです、くらいに嘘をつきます。多分、だってさびしいんだよ、というところなのでしょうが、さびしければ嘘ついていいんかい。
そして、『おはなし』。びょうきのかえるくんをお見舞いするがまくん。あたまからかえるなんだからあおいなんてやり取りの時点で笑いが止まりませんが、物語は淡々と進みます。この、淡々と進む笑わずにはいられない感じが、がまくんとかえるくんシリーズには常にありますよね。かえるくんが調子悪くてベットで寝ているところから始まり……最後には、うん?びょうきなのはかえるくんだよね。がまくんが結構いい性格しているというかなんというか。でも相思相愛だしね。いいのかな。相思相愛。うん、相思相愛。うん?あ、扉が開けた。まぁ黙っておきましょう。
て、夫の一番のお気に入り、『すいえい』。これはもう、とにかくやっちゃだめなことを真正面から、読んでいるこちらがドキドキハラハラ、もうだめだって、やめなさいって、と思って口に出してしまうくらいに、貫きます。そして案の定アンハッピーな終わりになります。根本的に二人が素直に生きて仲が良くて信頼があるからここまでできるのかもしれないけれど、うーん。それともあれかな、これはやっちゃいけないこと、というわけではないのかな?人が気にしていることを指さして笑うなんて絶対ダメ、と教わって育った気がするんだけどなぁ。とはいえ、心で笑っているときに誰かが素直に笑っているとついつい声出して笑ってしまうという気持ちも分かる。まぁ、すいえいに関しては、読んでみてくださいな。夫一押しです。どれも好きだけれど、これ読むと、夫が大爆笑します。ひぃひぃ笑います。もともと笑いの沸点どうかしてるけれど、がまくんとかえるくんシリーズが大好きなのは見てて分かります。
最後に。『なくした ボタン』。すいえい読んだ後に、これ読んで、ほっこりした気持ちになって、終わるとベストです。実際の順番は、これのあとが『すいえい』で、次が『おてがみ』。うん。いいよ、『すいえい』で終わりになってがっつり突き放されて置いて行かれて、で、どう考えればいいの、この気持ちはどう持っていけばいいの、もう完全に迷子だよって気持ちにならないからひとまずいいや。このおはなしは、その無茶ぶりや怒り方どうよって思うけれど、最後きちんとおちがあるので、安心。ほんっと、『すいえい』読んでいると心もとないんですよ。どうすればいいか分からなくなる。怖くなるくらい。
おすすめです。
明るい声で、淡々と、多少しれっと、音読すると、自分でも笑えるのでおすすめです。
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