精神分析学会(2018)覚書①:精神分析の視点
日本精神分析学会第64回大会@京都国際会館に参加しました。
精神分析学会は初めての参加で、
普段参加している心理臨床学会とは色々と異なる点があり、
とても楽しく、刺激的な時間でした。
精神分析自体は本当にここ最近勉強し始めたばかりで、
素養も何もないのですが、
とりあえず勉強の第一歩を踏み出してみようと。
日本各地で、精神分析的理論を基盤として臨床が行われ、
その成果がこの学会で語られる、
しかもそれが長年の伝統的な形式で行われているという点に、
圧倒的な歴史性を感じました。
その肉厚な理論の展開は、やはり独特の凄みがあります。
まとめ始めるときりがないほどのボリュームで、
また発表者の個性も色濃く出ていて面白かったのですが、
今回、基本的には精神分析的に事例を見る姿勢のどこに特徴があるのかに
注意を向けてみました。
その中で、初日の松木邦裕先生のケースセミナーにおける発言が
とても特徴的(というか分かりやすくしてくださっていたのだと思うが)
なように感じたので、それを以下にまとめてみます。
1.内的につなげる
2.これからどう展開するかを予想する
3.自分ならどうするかを考える。転移の視点を持つこと
1.内的につなげる
事例においてセラピーが展開しますが、その内容の中に
あるパターンを見出し、精神分析理論から説明されていました
その論理が見えた時、「なるほど」と思わず言ってしまいそうな、
急に視界が開けるような体験がありました。
つまり、「この人がこのようにあるのはなぜかを考える」作業が行われます。
この説明可能性は精神分析独特なように思います。
2.これからどう展開するかを予想する
クライエントが失敗を繰り返したり、同じような壁にぶつかったりと、
“このままいけばこうなるだろう”という反復性が見えてきます。
そこで、「その人生の反復にならないようにいかに抜け出すか」、
に焦点が当てられます。
3.自分ならどうするかを考える。転移の視点を持つこと
ケースを検討する上で、おそらく最も重要な視点の一つになるのが
『転移』を考えることだと感じました。
学会中、どの発表でも転移について明示・暗示含めて
常に語られていたように思います。
これまで精神分析にほとんど触れてこなかったのですが、
この転移の視点を常に斜め後ろに持ち、
いつでもその見解を取り出せるようにしておく。
その視点を育むことを常に問われていたように思うのです。
まだ僕は転移を体験的に感じ、理解しているわけではないので、
現時点では「主語の入れ替わり」として捉えています。
例えば
「母親が話を聞いてくれない」という話は、
「セラピストが話を聞いてくれない」ことを暗に伝えている、
と考える。
つまり、いつかどこかの話を今ここで起きている話に置き換えて考える。
もちろん、あまりに簡単に言い過ぎているので、
決して本質ではありません。
しかし、不思議なことに、転移の視点からケースを考えることが、
その後の展開を考えるための有用な材料になるというのは、
今回の学会で感じた最も大きなことでした。