中国の海洋進出と欠点
■海洋進出
中国は海洋進出のために海軍増強を続けている。アメリカはフィリピンに基地を置いていたが撤退。アメリカ軍と入れ替わるように中国の覇権が拡大し、中国が南シナ海に人工島を基地化する原因を作り出した。中国は長年の努力が実り、南シナ海とインド洋に覇権を拡大することに成功した。
アメリカは驚いて南シナ海に戻ろうとするが、容易には中国から覇権を取り戻すことはできない。見た目は中国が優勢だが人民解放軍には致命的な欠点を抱えている。
■人民解放軍は党の私兵
中国の人民解放軍は国家の軍隊ではなく党の私兵。中国共産党のための武装組織であり、国家を守る軍隊ではない。国家の軍隊は基本的に地方分権型。それに対して人民解放軍は北京を拠点とした私兵だから、中央から各地に人民解放軍を展開させる中央集権方式を採用している。これは治安機関である警察が行う方式で、人民解放軍は治安維持には向いているが、外国との戦争には向かない構造になっている。
紀元前のギリシャ世界でアレキサンダー大王がペルシャのダリウス三世と交戦。イッソスの戦い(332BC)でダリウス三世はアレキサンダー大王に敗北し講話を求める。するとアレキサンダー大王は講和を拒否して返答した。
「ペルシャを解放する」
この時から「解放とは征服するための口実用語」となり、今の欧米でも使われる意味になった。欧米の価値観だが、人民解放軍の真の意味は人民征服軍になる。党の私兵であり中央集権方式の人民解放軍は、正に人民を征服するための人民征服軍に適した組織と言える。
■主要な基地は北京に限定されている
人民解放軍は中国全土に展開し国外でも活動している。だが人民解放軍は中央集権方式だから、主要な基地は北京周辺に限定されている。これは人民解放軍が外国と戦争する時に致命的な欠点になる。
人民解放軍の主要な基地は北京周辺に限定され、中国の国境付近には主要な基地が存在しない。これは地方の省に基地を置けば、その省に奪われる危険性が有るからだ。中国の省は国であり、いつ反乱を起こすか判らない仮想敵国。中国共産党は常に他の省の反乱を警戒している。だから中国共産党は他の省に主要な基地を置かない。
■黄海に限定された人民解放軍
中国は常に地方の反乱を警戒しているので、製造と大規模整備が可能な基地は北京周辺だけ。南シナ海に進出しても、中国南部には製造と大規模整備可能な基地は置かれていない。
これは人民解放軍の作戦行動に致命的な欠点を与えている。人民解放軍海軍は常に黄海を使い、出撃と帰還を行う必要が有る。仮に南シナ海で損害を受けると、人民解放軍海軍は香港付近で整備できない。必ず黄海を使い北京周辺まで帰還しなければならない。これは致命的で、必ず北京周辺まで戻るなら戦力回復は難しい。
仮に台湾軍が妨害活動を行えば、人民解放軍の北京・黄海・南シナ海ルートは遮断される可能性が有る。それだけ人民解放軍の南シナ海・インド洋進出は一本の線に限定され、致命的な弱点を外国軍に提供している。
■台湾は要
台湾は容易に人民解放軍海軍の後方連絡線遮断できる位置に存在する。しかも台湾海峡は地対艦ミサイルを用いるだけで遮断可能。バシー海峡も台湾空軍と台湾海軍により遮断できる位置にある。
中国は台湾を占領する前に南シナ海とインド洋に進出。これは覇権拡大を急いだことで戦略的な弱点を残してしまった。中国は台湾を占領してから南シナ海とインド洋に進出すれば問題は無かったのだが、今となっては台湾が生殺与奪権を持つ事になった。
■問題解決に苦しむ中国
中国はこの問題を理解しており解決を模索している。台湾を占領する試みはあったが成功していない。そこで政治的な圧力と選挙を用いた間接的な台湾獲得路線を進めている。だがアメリカが時折干渉するので中国の思惑は成功しない。
アメリカとしても台湾は重要なので中国に渡すことを拒否している。だからアメリカは台湾軍の軍事力強化を行うのだが、アメリカによる軍事支援は強力とは言えない。アメリカとしてはアジアの軍事バランスと政治的な対立を回避している様で、台湾の軍事強化は中国を刺激しない程度に収まっている。