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2019.3.6「新刊書店経営の現実」

「福井で小さな本屋はじめました。~JR福井駅前に小さな新刊書店「わおん書房」ができるまでとそれからの記録~」

こんにちは、わおん書房です。

ここ何年か、ちょっとした本屋ブームが続いています。
個性的な本屋さんが次々に誕生し、本好きとしてはうれしい限りです。
その一方で、街から新刊書店が消えていくという話をお聞きになったことがある方も多いと思います。

正直、新刊書店の経営は厳しさを増しています。
海外の大手Web通販サイトの拡大や電子書籍が大きな脅威となっているのは間違いありませんが、それだけではありません。

まず挙げられるのが粗利率の低さです。
俗に飲食50%、アパレル60%などと言われていますが、新刊書店の粗利率は20%程度です。1,000円の本を売っても儲けは200円。
粗利が低くなる要因としては、業態や流通の複雑さがあります。
新刊書店は通常、取次と呼ばれる卸(おろし)を通して本を仕入れます。この際、仕入れた本が売れ残ったら返品が可能な委託販売制という形が取られます。

委託販売制とは以下のとおり。
「小売店がメーカーの生産した商品を,買切りではなく,返品可能な委託という形で仕入れることのできる制度。出版界では一般に,出版社が発行した新刊書は書籍取次を経由して書店へと配本されるが,委託販売制により,一定期限内であれば,書店は仕入れた商品を再び取次を通して出版社に返品できる。」

そうなんです。本って売れ残ったら返品できるんです!(私、書店で働くまで知りませんでした。)書店は在庫リスクを負うことはなくなりますが、その分、粗利は低くなるというわけです。

新刊書店では日々新しい本がどんどん入ってくる一方で、店に並べきれなくなった本を箱に詰めてどんどん返していきます。年間7万点とも言われる新刊がどんどん入荷してくるのですから、返品作業が1日の業務に占める時間はばかにならないばかりか、返品には送料がかかります。

「この作業って、本当に必要なの?…」

返品の本を箱に詰めながら思わずにはいられませんでした。
ノーリスクという安心感が 書店の創意工夫(営業努力)を奪っている面があるのは否めないと思います。

粗利率以外にも、著作物の再販制度(再販売価格維持制度)の問題もあります。一般社団法人日本書籍出版協会によれば、
「著作物の再販制度(再販売価格維持制度)とは、出版社が書籍・雑誌の定価を決定し、小売書店等で定価販売ができる制度です。独占禁止法は、再販売価格の拘束を禁止していますが、1953年の独占禁止法の改正により著作物再販制度が認められています。」

この制度により書店は定価以外での書籍の販売をすることはできないことになっています。 出版文化の保護が図られる一方で、価格競争のない業界は停滞する面もあるのではないでしょうか。

こんな厳しい状況の中で、新しい本屋は挑戦を始めています。
取次を通さず買い切りで本を仕入れる新刊書店が増えているのは、粗利率を少しでも改善したいためです。そのかわりリスクを負うことになりますから、どんな本を仕入れるか見極めが重要になります。
様々なイベントを企画するのも、少しでもお客様に足を運んでいただき本と出会っていただきたいから。
本屋を続けるために2足のわらじ(本屋以外の収入の道を持つ)で頑張るなど、なりふりかまっていられません。

なんだか熱く語ってしまってすいません…(汗)。
小さな新刊書店、みんな頑張ってますので、足を運んでいただければうれしいです。

写真は今朝の福井市足羽川堤防の桜。
まだ蕾は固いですね。
この蕾がふくらんで、花が開いて、散って、葉桜になる頃、わおん書房オープンです。


♪ 心機一転!2019.4.19に「わおん書房」がオープンするまでとその後の日々をつづった過去のブログをnoteに引っ越しました!!♫

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