【ぶんぶくちゃいな】「双十一」ECカーニバル近づく 今年の注目ポイントは?
11月を目前にして、中国のニュースサイトでは「淘宝 Taobao」(タオバオ)が仕掛ける「双十一 w(ダブル)11」(以下、w11)関連と思われる話題が増えてきた。今年で11年目を迎える11月11日の狂乱的ショッピングデーは、今ではタオバオだけではなく、すっかりすべてのEC(電子商取引、つまりネット販売)サイトを巻き込んだカーニバル化している。
ご存知の通り、中国では最初は「眼の付けどころがなかなか」と思えるようなおもしろい出来事も、ブーム化して過剰に熱狂化すると本末転倒化してしまう。
w11でもタオバオに集う個人やブランドショップがこの日のためにこぞって安売りをした結果、この日以降の宅配サービスが大混乱したり、その後1カ月ショップでは閑古鳥が鳴くはめになったり…というのは当初から指摘されていた弊害。そのうちに、事前からこの日のために買物かごに商品を溜め込む人たちを狙って、ショップがちょっと早い時期から商品の価格を釣り上げてw11当日の「安値」で通常価格に戻すという手段が取られたり、クーポンをばら撒いて客を集めたのはいいが、実はクーポンの使用条件には限りなく制限があったりと、「この日」に「この日だからこそ」と集中する狂信的な買い物客を狙った詐欺まがい(+詐欺)の行為も横行するようになった。
都会暮らしのわたしの知り合いは、わずか5年ほど前は11月に入るとワクワクと毎晩のようにタオバオを開いて、11日にポチッと「購入する」ボタンを押すためにせっせと買い物かごに商品を詰め込んでいる様子をSNSでつぶやいていたが、ここ数年はとんと関心を見せなくなった。
このあたりの変化は、先月読んだ『幸福な監視国家・中国』で紹介されていた「モノ軸」から「ヒト軸」へと軸足が変わってきた経過といえるのかもしれない。
同書全体についてはすでに書評を書いたので詳しくはそちらを参照していただきたいが、中国のECサイトの代表者であるタオバオと日本人がよく使う楽天やアマゾンとの違いをうまく言い表している。つまり、わたしたちはまず「欲しいモノ」をネットで検索して、楽天のショップやアマゾンに行き着くが、中国のEC利用では利用者は「欲しいモノ」ではなくお気に入りの「ショップ」で買い物をすることが多い、というのである。そしてタオバオの場合、そのショップは個人ショップが多いので、つまるところ利用者は「ヒト」を中心に買い物をするのだと同書は説明する。
考えてみると、「モノ」より「ヒト」を軸にしたつながりは、中国っぽい。中国社会は手にしたものよりも、人脈や人間関係を重視するからだ。そういう意味で、タオバオやECサイトの、「モノ」より「ヒト」に軸足を置いた買い物スタイルは、近所の商店街にでかけて「どの店で買うか」を決めているのと同じなのだ。
もちろん、複数店舗で価格合戦が起こればその関係は壊滅するだろうが、その陰で商品の質が落ち始めたり、チート(騙り)が発生することになれば、人々は次第にその価格戦から身を引くようになる。そして、最終的には自分が納得できる商品と価格の店へと戻っていく。そして「この店なら安心だ」と、やはりそこで買い物をするのである。
前述したような、w11に対する友人たちのスタンスの変化もそんな過程を経てきた感じだ。買い物に夢中になり、価格戦をゲームのように楽しみ、痛い思いをして、平常心へと戻っていく……もちろん、彼らが相応に年齢を増したことも大きく影響しているだろうけれど。
●原体験が違う、中国人と日本人のEC
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