【ぶんぶくちゃいな】 「故宮」に蹴散らされた香港市民
https://youtu.be/lbpBLNK4Xuc (撮影:SocREC/社会記録協会 )
場所は、香港の中心街セントラル(中環)にある地下鉄セントラル駅と、セントラルと空港や香港ディズニーランドを結ぶ空港鉄道の香港駅を直接結ぶ地下道である。「世界四大金融センター」があるセントラル駅と香港駅の間は約500メートルほど離れており、撮影地点はその一部の、幅20メートルほどある通路の両側に「歩く歩道」が設置された約150メートルほどの区間だ。このビデオの冒頭を見れば、出退勤時の人の流れは大変なものであることがお分かりいただけるだろう。
そのおかげで歩く歩道すぐ横の、高さ5メートルほどで約150メートル続く巨大な壁は、地下鉄運営会社に莫大な収入が転がり込む広告枠として利用されており、かつては中国の華為や韓国のサムスンなどのハイエンド電子機器製品の巨大広告が並んでいた。
その「広告枠」に中国北京にある故宮をかたどった絵が描かれているのをわたしが目にしたのは、12月31日、そう2017年をあと1時間ほどで迎えようとしている大晦日の夜だった。両側にどどーんと続く「中華文化」に、わたしは口をあんぐりと開けて見入っただけで、写真やビデオを残さなかったことを今、ただひたすら後悔している。
正直に言えば、後に「故宮壁」と呼ばれるようになるこの広告枠の使い方に、ある意味わたしはほっとしていた。というのも、いつもならそこに描かれた巨大な電子機器はあまりにも不自然にそこを通る人たちを押しつぶさんばかrに覆いかぶさっていたからだ。「故宮壁」はそんな広告に比べて清々しかった、巨大な故宮が横にそのまま続いているだけなのだから。だが、だからこそ、年が明けると、この「故宮壁」は大騒ぎを引き起こした。
ここで最初にご紹介したビデオをもう一度見ていただきたい。通行人に混じって、黄色い傘を持った人がいたり、「黒箱作業」というプラカードや戦車をかたどったプラカードに「覇権」と書かれ、写真を大伸ばしにしたものを掲げたりと、なにやら騒々しいだろう。日頃は広々とした通路が進行方向で半分に区切られ、緊張した面持ちの地下鉄職員や警備員が警戒にあたっているのも見える。
香港人たちは突如香港のど真ん中に出現した「故宮」を、北京の故宮とその前に広がる天安門広場に見立てて、中国政府がいまだに「反革命運動」とみなしている天安門事件の残虐な処理方法に抗議を始めたのである。抗議者たちはそこを通って日常生活を続ける人たちを遮ることはしないよう申し合わせた上で、各々、当時の天安門広場に突っ込んだ戦車をかたどったプラカードや写真を手にシュプレヒコールを叫び出した。
「香港を出ずして故宮に行けた」、そこには中国政府への厳しい批判を繰り返したために、香港人が中国入りするためのパスポート「回郷証」の発行を拒絶された人もいた。彼らにとっては念願の「故宮前での抗議活動」の場となった。
付け加えておくが、ビデオの中で帽子に戦車を貼りつけて歩く歩道を往復している人物は、社会活動家「阿牛」曾健成だ。彼は2012年夏、香港から出向した漁船で尖閣諸島に上陸した活動家の一人である。日本の浅はかな一部メディアは彼を「中国共産党のスパイ」と決めつけたが、ご覧の通り彼は香港では知らぬ者はいない「反中国政府活動家」の一人である。
●香港に故宮?!
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