毎日新聞社取締役 小川一さんへ:(追記あります)
この記事についてのNewsPicksのページに、「毎日新聞社取締役」の肩書とNewsPicksによる「プロ」のバッジをつけた小川一さんがこんなコメントをしておられました。
このコメントは、今香港の市民が抱えている警察の対応に対する不正義、不公正さへの不満を全くご存知ない、クーラーの効いた日本のどこかで「警察と対立する者は悪い奴ら」という伝統的な体制側の立場からのものであり、褒められたものではありません。それについてはわたしも自分のコメントで説明していますが、気になったのはここにある「雨傘運動も過激になることで失速しました」という断言です。
雨傘運動も過激になることで失速…はて?
(追記)この件、新しい進展がありました。どうやら、毎日新聞の誤報が根本にあるようです。これについては現在、ツイッター上で記事担当デスクとやりとりしていますが、改めて新ポストでお知らせします。→「『雨傘運動は過激に』は毎日新聞の誤報でした。」に書きました。
●「雨傘運動が過激になった」という話は聞いたことがありません。
雨傘運動がどこで過激になったのか? あの時、ほぼ毎日のように香港からの情報にかじりついて状況を把握しておりましたが、「雨傘運動が過激になった」という事態はとんとして思い出せません。なので、ツイッターで小川さん向けに以下、連投しました。
●小川さん、自分の言葉を信用するユーザーに責任転嫁
すると、お返事がありました。
でも、これでは全然答えになっていないので、再び連投。
ここでやっと、こういうお返事がありました。
そして、NewsPicksのコメント欄にはこんな追記がなされていました。
(このコメントは、NewsPicksの当該ページで確認できます。)
その後、小川さんからはなんのお返事もアクションもないままです。
●「日本インターネットメディア協会」理事も務める小川さん
これより、ツイッターを離れます。
付け加えておきますが、小川さんは先日設立されたばかりの「インターネットメディア協会」(JIMA)の理事を務めておられます。そんな立場の方が、「プロ」の肩書のままで、あやふやな記憶によって書いたコメントを、指摘を受けて精査もせずに、そのままにしているのです。
それを読んだ人が「ああ、雨傘運動は過激になって失速したのか」と受け取ることに対する責任感も、危機感もなにもないというのは、ジャーナリストとしていかがなものなのでしょうか?
もちろん、人間は間違いもあります。勘違いもするでしょう。うっかりプロの人でもそれを書き込んでしまうかもしれない。それは小川さんにも、わたしにもあるでしょう。公開の場に書くまでに精査しろよ、と指摘されても仕方ありませんが、恥ずかしながらわたしもときどきやります。未熟です。
しかし、重大な間違いであると指摘を受け、そして自社のニュース記事をアーカイブで自在に確認できる立場にありながら、それをやろうとせずに「私の認識は雨傘運動で警官隊との衝突をめぐる記事の中のいくつかの指摘から生まれたものですが、認識として誤っていた可能性があります。その点を付記します。留意いただければと思います。」と、自分が書き残したコメントを読んで信じる側の責任にしてしまっている。
これが本当に、読む人に情報を提供するプロのジャーナリストが取る態度なんでしょうか? 加えて、NewsPicksでは「プロ」の称号までいただいて、インフルエンサーとしての役割を担っている人が、ですよ?
もし、本当にプロフェッショナルなジャーナリストの意識があるのであれば、そして「誤っていた可能性がある」というのであれば、まず自分から資料に当たるべきです。そして、まず本当に自分は正しかったのかどうかを確認し、間違っていればその記憶を正すべきではないでしょうか? そして正しい情報を再度発表し、間違っていたことを「可能性」などではなく、はっきりと認めることで、正しい情報を世に送り出せるのです。もし、ジャーナリストとして社会的責任を負っているとお思いなら、それをやってこそ初めてジャーナリストである、といえるのではないですか?
前述の小川さんが理事を務めておられるJIMAはフェイクニュース問題にも取り組んでいくとして、堂々とシンポジウムまで主催しています。ですが、日本の「ジャーナリスト」を名乗る人たちは、その矛先を「意図を持って情報や社会撹乱を狙う人」に宛てるばかりで、自分や自分のプロフェッショナル同業者がこうやってフェイクニュースを流していることに対しては、大変寛容な態度なのも現実です。
新聞社の取締役を務める人物ですらこの態度なのですから、日本のメディアの責任感、そして「読者(視聴者)の目になる」という意識は、残念ながら推して知るべしのレベル、というしかないでしょう。
●7月9日:日本インターネットメディア協会に説明を求めました。
7月9日午前、フェイスブック経由でJIMAの理事複数に対してこのページのURLを送り、対応を求めました。
https://www.facebook.com/wanzee/posts/10157519599907059
責任ある回答を期待しています。
●7月10日:小川さん「あれはニューズピックスの投稿 まるで他人事
日本インターネット協会からはなんの態度表明もありません。もちろん、小川さんも知らん顔を続けています。
ただ、ツイッター上であるユーザーさんから、「問題の一文には全く根拠がないように思える」という、わたしと小川さん宛のリプライがありました。2016年2月のモンコックで起きた騒乱(念のためですが、雨傘運動は2014年9月から12月にかけての路上占拠のことです)を混同しているのではないか、という指摘でした。
これに対してやっと小川さんがリプライを寄越しています。
これだけです。つまり、わたしが連日投稿していた記事はご覧になっておられるようですが、だんまりを決め込んでいて、第三者に対してはNewsPicks内での付記で終わりであるとのこと。
大変不思議な物言いに呆れるばかりです。
ジャーナリストだけではなく、社会に多少なりとも責任を持って発言する人であれば、媒体ごとに、あるいは場所ごとに物言いが変化するわけがありません。「小川一」という人物がどういう見解を持ち、どういう立場に立ち、どういうことを根拠に話をするかは、どこにおいても一貫しているのではないでしょうか?
「ニューズピックス内のコメントだから」というのは、自身が影響力を持つ「ジャーナリスト」であることを完全に放棄した発言です。ならば、NewsPicksでは「毎日新聞社取締役」の看板を掲げずに「小川一」個人として発言すればよろしいわけで、ときに「毎日新聞社」、ときにNewsPicks内の別人格でコメントしているとしたら、その肩書を信じるユーザーに対する詐欺行為といえませんか?
外と内で言葉を使い分ける。世界ではそんな人物をジャーナリストとは呼びません。この方にとっては、ジャーナリストというお立場も他人事なのかもしれません。
●7月13日:日本インターネットメディア協会代表理事の瀬尾傑氏からリプライありました。
「設立当初から表明しているように、個別の記事や表現の正確性を判断したり、それを前提にした行動をすることを目的とした団体ではありません」とおっしゃるんですが、公式ウェブサイト見てもそういう文言はなく…。どこで表明しておられるのやら。
マジ、マスメディアの人たちが言っていることって、常人の常識を超えていて、よくわからなくなりつつあります。
(追記)この件、新しい進展がありました。どうやら、毎日新聞の誤報が根本にあるようです。これについては現在、ツイッター上で記事担当デスクとやりとりしていますが、改めて新ポストでお知らせします。→「『雨傘運動は過激に』は毎日新聞の誤報でした。」に書きました。
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