休職中の夫【うつ病2人#9】
うつ病と診断され、即仕事を休むことになった圭介。
彼は休み中、本当によく眠った。
1日の大半、食べるときとトイレ以外は寝て過ごしていた、といっても過言ではないくらいだ。
家事の担当は圭介から私に代わった。このころには私もだいぶ病状が落ち着き、家事を引き受けられるくらいにはなっていた。
圭介がうつ病になったことは、圭介の実家にはすぐに話した。
同じ県内に住んでいて、会う機会も多かったから、あらかじめ話しておきたいと思ったからだ。
一方で、遠方に住んでいる私の両親には最初、話していなかった。
なんとなく、ただ心配をかけるだけなのではないかと思っていたからだ。
圭介はよく眠り、よく食べ、少しずつ回復していった。
少なくとも私の目にはそう見えた。
私が5年かけても出られないトンネルを、圭介は着実に進んで出口へ向かっているようだった。
それは良いことでもあると同時に、私にとってはとてもとてもうらやましいことでもあった。
早く適切な手を打てば、こんなに目に見えるくらい回復するんだ。
じゃあ自分は…ということはあまり考えないようにしていた。
うつ病という泥沼でもがく私と、浮き上がれそうな圭介。
私はまず、圭介だけでも助けたいと思うようになった。
無理をすると大体よくないことが起こる。
圭介が休職してから1カ月も経たないうちに、私は限界になってきていた。
自分でも変だとわかるくらいに食欲は止まらず、心もいっぱいいっぱいになっていた。
純粋に家事と仕事を両立するだけでも大変だし、そこに圭介のメンタルケア、心配していろんなことをしてくれる義実家への対応などが重なり、自分の心がないがしろになってしまった。
苦しさを何とかしたいと思い、私は妹に連絡を取った。
今の状況や私の思いなどを全部打ち明けた。
「実家には言うつもりないの?」
妹に聞かれた。
「うん。お母さんに説教されそうで嫌。」
私と母の間には、溝というほどではないがちょっとした緊張感のようなものがあり、私はあまり相談したくなかったのだ。
しかし、妹はすかさずこう言った。
「流石にお母さん説教はしないと思うよ。正直に言うと、もう2人だけの問題ではなくなってると思う。どうしても言えないなら私が言ってもいいくらい。」
今、冷静になって振り返ると妹の言っていることが正しくて、私は最善なことはどれか判断できないくらい参っていたのだとわかる。
うつ病は一人では立ち向かえない。自分が一番感じていたはずなのに、そして圭介も一人で頑張って疲れ果ててしまったのに、私は一人で頑張ってつぶれる道に進みそうになっていたのだ。
妹に説得される形で私は実家の父に連絡を取り(ここでも母を意図的に避けてしまった)、私たち2人の現状を話した。
父は冷静に話を聞き、母にもこのことを話しておくと言った。
結果として、母に説教されることはなく、むしろ優しく心配してくれた。
その後も圭介の休職は続いた。
私はなるべく一人で抱えないように、妹をはじめ、信頼できる職場の先輩や義母、時には母にも相談しながら圭介のサポートを続けていった。