夫の様子がおかしい【うつ病2人#8】
まだまだ寒いけれど、冬がそろそろ終わろうという頃。
圭介に最初に現れた予兆は、朝起きられないということだった。
元々寝起きが悪い圭介。しかし、このときの起きられなさは尋常ではなかった。
朝起きられないがために仕事に遅刻していくことが増えた。ベッドに張り付いてしまったみたいに体が持ち上がらず、つらそうだった。
そんな様子を見て、私には思い当たることがあった。
私のうつ病なりたてのときも、こんな様子だったな。
「最近、圭介が起きられないのが気になるんだけれど。」
ある日、私は圭介に切り出した。
「私がうつ病になったときもそんな感じだったの。何もなければそれでいいから、精神科の予約取ってみてもいい?」
精神科の予約はすぐに取れることは稀だ。
圭介の了承を得て、私は自分の主治医の予約を取った。
元々私の診察に圭介がついてきてくれることが多々あった。
そのために圭介と主治医も面識があり、主治医はうちの事情もよく知ってくれているので、あえて私の主治医を選んだのだ。
そして迎えた診察の日。
「うん、ちょっと仕事休みましょう。」
一通りの話を聞いた主治医は笑顔でそう言った。
このときに「うつ病」と診断がついたのか、別の名前だったのか記憶は定かではないが、とにかく圭介の心が疲れていて、そのために仕事を休むことになる、というのは確かなことだった。
主な原因は約2年に及ぶ私の看病。
弱音を吐かず、いつも優しい圭介に私は甘え過ぎていたんだと、ここで初めて気づいた。
心から申し訳なく思った。
私と結婚しなかったら、圭介はうつ病にならなかったかもしれないのに。
「私のせいで、ごめんなさい。私と結婚しなければよかったかな。」
うつむく私に、圭介は
「まちこちゃんと結婚しなければよかったなんて、そんなことは絶対にないから。」
と力強く言った。
こんなときでも私を励ましてくれる圭介に、私は嬉しさ2割、申し訳なさ8割だった。
今まで圭介がやってくれていた分、今度は私が頑張ろう。
少しずつ体調も良くなってきているし。
そう心に決めた。
こうして、うつ病2人の同居生活が始まった。