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はじめての土地、はじめての暮らし【うつ病2人#5】

2022年4月9日。
新居で私と圭介の新しい生活が始まった。

突然だが、公務員の異動というのは忙しい。
私も異動の経験はないが公務員の端くれだったのでよくわかる。
次の赴任先が正式に発表されるのは3月の半ば(ひどいと3月20日を過ぎてからだったりする)。
転居が必要な場合はそこから家を探し、引っ越しの準備をして実行し、4月1日には涼しい顔をして新しい赴任先へ出勤するのだ。

圭介は最初の転勤で、ほぼ確実に転居必須だとは聞いていたから覚悟していたつもりだったが、まあなんと慌ただしい日々だったか。
家を探していたエリアは当時人気が高かったようで、不動産屋さんから用意された選択肢はまさかの1軒。泣いても笑ってもここに住むしかない。
引っ越し業者もいくつか見積もりを取ったがそもそも私の実家から新居までの長距離移動を繁忙期にしてくれるところはほぼなく、これも唯一やってくれると言った業者に高いお金を払ってお願いした。
しかも、新居の前住人が退去するのが3月末ギリギリとのことで、入居は最速で4月9日。仕方がないのでその日を引っ越し日に決め、圭介は約1週間実家からかなりの距離を新しい勤務地まで通うことになった。


そんなこんなでバタバタと始まった新婚生活(そう、籍を入れてから1カ月半はお互い実家住まいの遠距離婚だった)。
圭介が仕事を頑張ってくれる分、私は家のことを頑張って、そしてうつ病もよくしていこうと思っていた。

朝起きて、朝ごはんとお弁当を作り、圭介を見送る。
洗濯や掃除はあまり好きではないから毎日はしなかったけれど、家事は私の仕事だと思って頑張った。
新しく通院することになった精神科の先生との相性もよく、慎ましくも平和な生活が送れていた。


生活に慣れてくると、ある思いが私の中に湧き上がってきた。
「友達が欲しい。社会に出たい。」
今住んでいるところで私のことを知っているのが圭介だけだというのが、とても寂しく感じられた。

自他共に認める行動力の塊である私は、なんとか自分の居場所を見つけようともがいた。
5月からは塾講師のアルバイトを始めた。
カルチャーセンターでやっているフラダンスのクラスに通い始めた。
当時の私はどうにかして社会と繋がろうと必死だった。

でも、塾講師は実質1人職場で、私よりも若い学生アルバイトが多く、仲の良い友達ができるほどではなかった。
フラダンスのクラスもコロナの影響でお休みが多く、別の曜日に移ったら移ったで発表会や何やらでとてもお金がかかることがわかり、結局やめてしまった。年齢層がかなり高く、こちらも友達ができそうな様子ではなかったというのもある。


圭介との生活は充実していてとても楽しかった。
でも、家以外に居場所がない状況が悲しかった。
もがきながら日々やることを淡々とこなしていく。それが私の新婚1年目の生活だった。

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